第32話 約束
静寂の気配の中で目を覚ます。
だが目を見開いても、いまだそこは暗闇の中。
確かな明かりを求めて遥か天へと手を伸ばす。
閉じた天蓋をこじ開けると、待っていたのは見知らぬ天井。
周囲を見渡せば、石造りの閉じた四角の部屋であることがわかる。
壁に立て掛けてあるのは槍や鎧兜。
自身が今いるのは、机の上に乱雑に置かれた袋の中である。
「ん~む」
まさか、とは思うが、
これではまるで、
夢、そう夢だと思いたい。
辺りを見回すと、同じ机の上には残念なことに見慣れてしまった銀晶の聖剣が、
「って何で捕まってんだーい」
だーい
だーい
だーい
無人の衛兵室にアゼルのノリ突っ込みがこだまする。
「あ、やっと起きたのね。まったく、魔王のクセに寝つき良すぎでしょ」
誰もいないはずの空間に応える声がある。
机の上に無造作に置かれた聖剣、アミスアテナの声は心なしか、いや確実に不機嫌そうである。
「おい、あいつは、イリアはどうしたんだよ。てかここはどこだ?」
「あんたいつもそんなこと言ってるわね。イリアは……さあね、どこかに連れていかれたわ。取り調べは終わったみたいだったから留置牢にでも入ってるんじゃないかしら。ああ、あとここはアスキルドの衛兵たちの詰め所みたいよ」
「何でまたそんな面倒なことになってんだよ?」
「それもお決まりのセリフみたいになってるわよ。あんたもこんな事態を避けたいんだったらあの子のピンチにはちゃんと立ち合いなさいよね。…………まあ、私も人のことは言えないけど」
「あの子が無鉄砲で生真面目で考えなしなことは分かってたはずなんだけどな。私が目を覚ました時には既に手遅れだったわ」
悔しさの滲むアミスアテナの声。
「おいおい、そこまで言ってやるなよ。で? 手遅れって、何があったんだ?」
「あの子ね。約束も忘れて、よりにもよってこの国で、…………魔法使いの子供を助けようとしちゃったの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます