⑥サーシャのつがい ~いっしょにポーション調合/夜空を見上げて甘々くっつき/夏の終わり、二人が見つけた“大切なもの”

//演技依頼 幸せを嚙みしめるように


//SE コポコポと鍋が煮える


「ほら……恥ずかしがらないで……見せてごらん……」//ポーションに語りかける


//SE 鍋を匙で混ぜる


「……」匂いを嗅いで出来を確認


「ううん……ユリーカの花びら、もう少し足した方がいい、かも」


「そこの戸棚から、緑のラベルの瓶、取って……」


//SE 棚を探る


「そう、それ……」


//SE 手を滑らせ、瓶を落としそうになる


「わっ……」


//SE 間一髪でキャッチ


「とと……」


//SE 手の触れる音

同じく瓶を取ろうとした主人公と、手が触れ合う


「……」//目が合う


「エヒ……」


「ふふ……んふふ……」//互いに微笑む


「じゃ、じゃあ……鍋に、入れて……?」


//SE 瓶の栓を抜く


「そう……一枚摘まんで……」


//SE 花弁が煮え立つ鍋に落とされ、ジュッと音を立てる


「そう……そのままゆっくりかき混ぜて……」


//SE 鍋を混ぜる音


「もっと、ゆっくり……」


//SE 手が触れる音

主人公の手を取って、一緒に混ぜる


//SE 鍋を混ぜる音。ゆっくり


「そう……ゆっくり……」//耳元で


「まぜ……まぜ……」


「うん……上手、上手……」//小さい子供を褒めるように優しい声で


「……」//息遣い。ポーションの変化を見守る


「わっ……」//感嘆


「きれいな青色……」//見とれる


//SE 本のページをめくる音


「お母さんのレシピ帳の通り……」


「これで、透明になるまで煮込めば、完成……だよ……」


「できるまでしばらくかかる、から……」


「つ、続き……しよ……?」






//環境音 森

屋内から聞こえる音


//SE 羽ペンで字を書く音


「あのね……この浮遊の呪文の、ルーンの式がわからなくて……」


//SE ページをめくる


「あっ……ルーンを逆転させるんだ……」


「マーリンの魔方陣の応用で……」


//SE 羽ペンで字を書く音


「いつもごめんね……宿題、手伝ってもらっちゃって……」


「ずっと授業、休んでたから、全然ついていけなくて……」


「ううん……私が手伝えるの、ポーション術くらいだから……」


「来学期はポーション術で満点取れそう?……エヒ……」


「へ……?」


「次の学期は、一緒に……授業受けるの……?」


「わ、私……大丈夫、かな……」


「……」


「あ、あのね。私、本当は……ずっと授業、受けたかったの……」


「入学する前は、いろんな魔法、いっぱい勉強するんだって……楽しみに、してて」


「でも……」


「い、いつも教室の前まで行くのに……勇気が出なくって……」


「上手く出来なかったらどうしようって……」


「授業……出られたことない、から……」


「でも……君が一緒に来てくれるなら……」


「わ、私、頑張れる……かも……」


「……」


「あ、あのね……」//主人公が優しく聞いてくれるので、安心して続ける


「私、ちょっと前だったら……授業に出る、なんて、そんな勇気なかった……」


「でもね……君がいてくれる、から」


「こんな私でも……いいよって……受け入れてくれた、から」


「サーシャのこと……いっぱい褒めて、一緒にいてくれる、から」


「学校での生活は、不安だらけだった……けど……」


「今は、この学校に来て良かったって、思う、よ……」


「君に会えた、から」


「君といる時間が……サーシャにとって……」


「大切……なの……」//感情を込めた囁き


「だからね……」


「……」//どきどき


//SE 鍋が吹きこぼれる


//SE 椅子を引く音

突然立ち上がる


「ぽ、ぽぽぽ、ポーション……できたみたい……!」//半分照れ隠しのため、話題を変える






//SE フラスコを揺らす

中でポーションが揺れる


「わ……」//感嘆


「すごい……透き通った青色……」


「君が採ってくれたユリーカの花から作った、『真実のの霊薬』……」


「このポーションを飲めば、ね……その人が本当に求めているものが、輝いて見えるんだ……よ……」


「これで、君の探してる“大切なもの”が見つかるはず……」


「はい……」


//SE フラスコに手が触れる

ポーションを手渡す


「いいよ……」


「飲んでみて……」


「……」//どきどきしながら主人公を見守る


「どう……?」


「何か、見える……?」


「……」


「だ、大丈夫……?」


「も、もしかしてどこか調合間違え……」


//SE 服のすれる音

主人公、サーシャにハグ


「ハヒ……」//声近くなる


「ど、どうしたの……?」//驚きながらも、嬉しい


「ぎゅって……したくなっちゃった……?」


「エヒ……んふふ……」


「どうだった……?ポーションの効果、あった?」


「秘密なの……?」


「後で……?後で話してくれるの……?」


「うん……」






//環境音 夜の森

涼し気な虫の声


//SE 身動ぎ

木の屋根の上に腰かけている


「すごい……綺麗な星空……」


「小屋の屋根に上って星を見よう、なんて、私じゃ思いつかなかった……よ……」


「……」


「お星様のお告げのおかげで、君と会えたもん……ね……」


「……」


「夏休み、もうすぐ終わっちゃう、ね……」


「……」


「このままずっと、夏休みが続けばいいのに……」//ぽつりと呟くように


「……な、なんて……」


「き、君も……?」


//SE 体を寄せ、手を握る


「エヒ……」//距離が縮まり、声も近くなる


「ど、どうしたの……?」


「今日の君は、甘えたい気分……なの、かな?」//距離が近くてどきどきしながらも嬉しい


「ずっとくっついてくる……し、手も、握ってくれる、し……」


「……」


「ううん、嬉しい、よ……」


「……」//リラックスした息遣い


「……」


「あ……」


「流れ星……」


「願い事……した……?」


「な、なんて……お願いした、の?」


「あ、当てるの……?」


「う~ん……」


「“大切なもの”が見つかりますように、かな?」


「え~……違った?」


「……」


「へ……」


「もう見つかってる、って……?」


「へ……ど、どこに……?」


//SE 手の触れる音

主人公、サーシャの手を取る


「……」//じっと見つめられる


「……」//背後を振り向くが、他には誰もいない


「さ、サーシャ……?」


「さっきポーション飲んだとき、見えたの……?」//驚きから喜びへ、徐々に気持ちが高まってゆく


「サーシャが……輝いて見えたの……?」


「っ……」//喜びの息遣い


「サーシャが君の、大切なもの……?」


「そ、それで……」


「サーシャとずっと一緒にいられますように……って……お願い、したの……?」


「……」//嬉し涙


「さ、サーシャもねっ……同じっ……」


「き、君とずっと一緒にいられますように……って……お願いした……よ……」


//SE 服のすれる音

ハグ 


「……」//驚きと喜び。声が近くなる


「うんっ……すき……!」


「サーシャも、君のこと、すきだよ……」


「夢っ……みたい……」


「私の好きな人が……私のこと、すき……なんて……」


//SE 服のすれる音

主人公の肩に顔をうずめる


「うう~~~……」//肩に鼻を押し付けて、ややくぐもった声


「すき……すきだよ~~~……」


「……」


「……」//徐々に呼吸が荒くなってゆく


//SE 服のすれる音

顔を離して目線を合わせる


「あの……」//勇気を出して切り出す


「あのね……」//もう心は決まっていて、迷いはない


「君と、友達になれて、すごく……嬉しい……」


「でも、でもね。君のこと知るたびに、君に近づくたびに……」


「もっと……もっと……」


「君が欲しいって……思うの……」


「だから……ね……」


「初めて会ったとき、みたいなの……じゃなくて……」


「ちゃんと、お願いしたい、の……」


「……」//頑張って言葉を絞り出そうとする


「……」//深呼吸


「サーシャの……つがいになって下さい……!」


「……」//どきどきして返事を待つ


「……」//喜びの溜息


「いいの……?」


「嬉しい……」//プロポーズ成立の喜び


//SE 服のすれる音

再び強く抱きしめる


「……」//幸せな息遣い


「それで……ね……」


「吸血鬼には……つがいの契りを結ぶ……」


「儀式、があるの……」


「その……」


「吸血鬼は、ね……つがいになる相手の……」


「首、から……血を吸うの……」


「……」


「……」


「……」


「いい……?」


「……」


「うん……」


//SE 服のすれる音

主人公の首元に顔を近づける


「……」//息遣い。愛しさに胸が締め付けられる


「……」//しばらく溜める


「ん……」//口を開く


「はぁ……ぷ……」//口づける


「ん……」


「んん……」


「……」


「ちゅ……」


「ちゅる……」


「……」


「ぷは……」//口を離す


「ん……」


//SE 服のすれる音

額を突き合わせる


「……」//ふぅ、ふぅ、と少し興奮した息遣い


「……」


「これで、私たち……」


「つがい、だよ……」//心が通じ合う


//SE 服のすれる音

ハグ


「ん……」


「すき……」//耳元で囁く


「すきだよ……すき……」


「すき……すー……き……」


「すき……」


「……」


「胸……すごく、どきどきしてる……」


「わかる……?」


「耳、当てて、聴いてみて……」


//SE 服のすれる音

耳を胸に


「ほら……」


//SE 心音~


「……」//息遣い


//SE 髪に触れる音

主人公の頭を撫でる


「あのね……」


「吸血鬼は、自分の体だけじゃ血を作れない……から……」


「分けてもらった血を元に、血を作るんだ……よ……」


「だからね……つがいは、血の繋がった家族も同然、なんだ……よ……」


「ほら……聞こえるでしょ……?」


「サーシャの心臓から……」


「君の血が流れる、音……」


「ん……」


//SE ~心音


//SE 服のすれる音

腕を回して主人公を抱き寄せる


「すき……」


「だいすき……」






//環境音 人のざわめき

学校の廊下。まばらに生徒が行き来している


「ね、ネクタイのつけ方……間違ってない、よね?」


「……」


「や……やっぱり無理だよ~~~」


「こ、今学期から急に授業に出るなんて……へへ、変に思われるかも……しれないし……」


「ほ、星占い術の授業、受けたかったけど……」


「ほ、ほら……占いの結果で才能がないなんて出たら私もう立ち直れないかもしれないし、そ、それに私みたいな陰気な魔女がいたら、教室が湿っぽくなっちゃうかも、

そしたら、教室を乾かすためには最上級の火の魔法じゃないと駄目で、それで教室が燃えちゃったら……やっぱり帰って消火のポーションを調合した方が……だ、だったらむしろ、私なんて小屋に籠ってた方が誰にも迷惑かけずに……」


「ハヒ……」


「あぅ……」


「……」


「うう……」


「言う……」


「言う、から……」


「……」


「さ、サーシャは……君の……大切なつがい、ですっ……」


「才能のある、自慢のつがい……です……」


「サーシャは君の……一番っ……」


//SE 服のすれる音

ハグ


「うぅ~……」//声近く


「ん……」


「その……」


「首の、噛み跡……」//恥ずかしそうに


「そ、そんなにくっきり……残ると思わなくって……」


「……」


「いいの……?隠さなくて……」


「恥ずかしく、ない……?」


「か、隠したくない、の……?」


「つがいの、印……だから……?」


「エヒ……」


//SE 手の触れる音

手を握る


「……」//深呼吸


「うん……大丈夫……」


「独りじゃないもん……ね……」


「君がいる、から……」


「わ、私たち」


「つがい、だもんね……」


//SE 足音

ぱたぱたと教室に駆けこむ二人


//SE 鐘の音

始業の鐘

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サーシャのつがい 〜陰キャ吸血鬼ポーション術師と過ごす夏休み〜 新谷四季 @araya_shiki

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