⑤デート ~森の中をのんびりピクニック/雨に濡れて暖炉の前でじっとりくっつき

//環境音 池の畔

小鳥や蛙の鳴き声、草と水の音


//SE 草がすれる

座る体勢を変える


「……」


「森の中に、こんな素敵な所、あったんだ……」


「う、うん……風、気持ちいいね……」


「疲れた……?」


「私も……」//微笑


「こんなに歩いたの、久しぶり」


「……もうお弁当に、する?」


「……うん」


//SE 物を探る

リュックから弁当箱を取り出す


//SE 弁当箱を開ける


「お、お庭で育てた野菜で作ったサンドイッチ……だよ」


「うん……早起きして、作ったんだ……」


「き、気に入ってくれると、嬉しい……な……」


//SE サンドイッチを手に取る音


「……」//食べる姿を見守る


「お、美味しい……?」


「……」//喜びの溜息


「エ……エヒ……」


「そ、そうだ。ハーブティー、淹れてきたんだ……」


//SE 水筒の蓋を開ける音


//SE 暖かいお茶を注ぐ音


「……はい」//コップを手渡し


「……」//飲んでる姿を見ているだけでときめく


「き、君の大切なもの、見つからない……ね……」//残念だが落ち込んではいない。自然な調子で


「も、もう一度占ってみたの……?お星様は、なんて言ってた……?」


「……」


「す、すぐ近くにある……?」


「すぐ近くって……?」


「どこのことだろ……」


「……」


「う、ううん。私は、気にしてない……よ」


「森の中歩くの、好き……だし……」


「わ、私だけだったら、こんなに遠くまで、これなかったから……」


「楽しい……よ……」


「わ、私もポーションの材料集め……手伝ってもらってる、し……」


「さっきだって……お花、採ってくれた、から……」


//SE 荷物を探る音

瓶に詰めた花を取り出す


「う、うん。ユリーカの花……夏至の森でしか咲かない、とっても珍しい花……」


「稀少なポーションの材料、だよ……」


「さ、さっきはびっくりした……よ。あんなに高いところまで登って……お花、採ってくれるなんて……」


「き、君はすごい……ね……。きっと、私一人だったら、諦めてた……」


「ありがとう……」






//環境音 雨音

小雨から土砂降りに


//SE 二人の足音

雨の中を早足で駆ける


「……」//荒い息遣い


//SE 木の扉を開閉する音


//環境音 雨音

室内から聞こえる音に替わる


「ハーッ……ハーッ……」//息切れ


「も……もう駄目かと思ったぁ……」


//SE 魔法を使う


//SE ごうっと炎が燃え上がる音

暖炉に火をつける


//SE 環境音 パチパチと燃え立つ暖炉の音


「あ、ありがとう……私、火の呪文苦手だから……」


「……へっ?」//少し高いトーンで


「う、うん。このままじゃ風邪ひいちゃうもん……ね……」//恥ずかしい


「わ、私も……洗濯物外に干してたから……みんな濡れちゃって……」


「か……乾かさなきゃ……だね……」


「ん……」


//SE 服のすれる音

サーシャ、濡れた上着を脱ぐ


「……」息遣い


//SE 服のすれる音

主人公、服を脱ごうとするが引っかかって脱げない


「……」//主人公が服を脱ぐところを見守っている


「……」//心なしか鼻息が荒くなる


「ふ、服が張り付いて……脱げない、の……?びしょぬれになったから……?」


「へ……」


「て、手伝う?サーシャが脱がすの、手伝う……の……?」//どきどき


「う、うん……」


「じゃあ……こっち、持つ……ね……」


「んしょ……」


//SE 濡れた服を脱ごうとする音


「んん……」//頭まで脱げかかる。濡れた服越しに声がくぐもって聞こえる


「……」//荒い息遣いが聞こえる気がする


//SE 濡れた服を脱ぐ

全部脱ぎきる


「……」//どきどき


「ぐしょぐしょだ……ね……」


//SE 布ずれ音

タオルを引き抜く


「風邪ひいちゃう……から……」


「頭……拭いてあげる……ね……」//声近づく


//SE 頭の後ろから軽くタオルを被せられる


//SE 頭を拭く音

「ごし……ごし……」と同時に


「ごし……ごし……」


「ごし……ごし……」


「お耳の裏も……ふき取ってあげる……ね……」


//SE 耳の裏を拭く音

「ごし……ごし……」と同時に


「ごし……ごし……」


「ごし……ごし……」


「ん……」


「くすぐったい……?」//微笑


「気持ちいいの……?」


「ふふ……」


「ごし……ごし……」


「ごし……ごし……」


「……」//どさくさに紛れてうなじの匂いを吸う


「エヒ……」






//環境音 燃え立つ暖炉の音


//SE 布ずれ音

大きなタオルに包まる主人公


「へ……わ、私……?」


「ほ、ほら……タオル、一枚しかないから……」


「いい、よ……君が使って……」


「さ、サーシャは平気……だから……」


「……」


「へ……」


「い、一緒に入る……の……?」


「そ、そそそ、それは……その……」


「か、風邪引いちゃう……から……?」//恥ずかしさより、期待が徐々に勝ってゆく


「……」


「うん……」


//SE 床が軽く軋む

サーシャ、隣に座る


//SE 布を被せる音

サーシャにタオルをかける


「ん……」//声が近くに


「へ……?」


「は、はみ出てる……?」


「だ、だって……」


「や、やっぱり……恥ずかしい……よ……」//顔が真っ赤に


「ここ、こんな、恰好、だし……」


「お、お母さんの他の人と、こんなに近くでくっつくこと、なかった……から……」


「……」


「ハヒッ……」


「は、ははは、ハグしたのに……?」


「あ、あれはその……あの時は……」


「うう……」//何も言えなくなってしまう


「……」


「で、でもね……サーシャ、嬉しかった……よ……」


「き、君がね。いいよ、って……大丈夫だよ、って……」


「ぎゅって……して、くれて……すごく、安心した……よ……」


「い、いつも怖かった……嫌われるんじゃないかって……誰にも頼れなくて……」


「わ、私なんかいたら、皆嫌なんじゃないかって……」


「でも……君がサーシャのこと、受け止めてくれて」


「すごく……すごく……嬉しかった、よ……」


「ここにいていいんだ、って言ってくれてるみたいで……」


「……」//緊張が解け、徐々にリラックスしていく


「へ……?」


「つ、次は歯ブラシ持ってくる……の……?お泊り、するから……?」


「そ、そうだね……私、ずっと一人で暮らしてたから……ベッドも、他の家具も、一人分しかなくって……」


「おっきいタオルも、一枚しかないし……ね……」


「……」


「で、でもこうしていられるなら……」


「一つのままでも……いい……かも……」//恥ずかしそうに小声で


「……」//恥ずかしくて目逸らし


「へ……も、もっと近く……?」


「うん……」


「……」//主人公の肩に体重を預ける


しばらくの間無言。暖炉の火の音が響く


「……」


「へ……?」


「ど、どこ見てるの……って……?」//ちょっと焦り


「なな、なんでもない……よ……?」


「う、腕……?見てた……?」


「うう……」


「う、ううん。だ、大丈夫、今は、飲まなくても……」


「血が欲しかったんじゃなくて……その……」


「うう~……」//恥ずかしいけれど、自分の気持ちを伝えたい


「そ……その……」


「き、君の腕の……ね……。か、噛み跡を、見てたの……」


「き、吸血鬼の本能、なのかな……」


「噛み跡を……見てると……ね……」//恥じらいに声が上ずる


「さ、サーシャがここ、噛んだんだって……」


「口つけて、吸ったんだ……って……」


「思い出して……」


「す、すごく……どきどき、しちゃうの……」


「そ、それにね……」


「き、君から血を貰ったのは……私だけなんだって……」


「い、いけないことなのに……」


「さ、サーシャの……なんだって……」


「ご、ごめんね……!変なこと言っちゃって……」


「へ……」


「嫌じゃないん……だ……」


「エ、エヒ……」


「へ……」


「思ってたのと違った……って……?」


「血を吸う、所……?」


「く、首から血を吸うのかと、思ってた……?」//復唱しながら段々恥ずかしくなる


「くくく、首から……????」//あせあせ


「そそそそ、その、首から血を吸うのは……」


「い、意味?意味があるの……って……?」


「そそそ、それは……その……」


「き、吸血鬼が首から血を吸うのは……その……」


「……」//ためらい


「い、言えないよ~~~……」






//環境音 雨音

弱まってきている


//環境音 暖炉の火


「……」


「あ、あのね……」


「サーシャね……」


「こうして、君と一緒に過ごすの……好き……だよ……」


「お部屋でのんびりお茶するのも、今日みたいにお出かけするのも、雨に降られても……」


「全部楽しい、って……思う……よ……」


「友達ができるって……こんな風なんだって……」


「だ、だから……」


「もし、君の“大切なもの”が見つかっても……」


「サーシャ……君と一緒にいて、いい……かな……」


「……」//緊張


「……」//喜びの溜息


「いいの……?」


「うん……」


「ありがとう……」


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