The Symptom
彼は胸の痛みを訴えていた。
約一月前から続く胸の痛みは、彼の生活を学校やアルバイトに支配されなくするほどの深刻さを持っていた。
苦痛の端緒に当たる初めは、彼は他の医師による内科検査を受けたが、器質的な異常は発見されなかったという。当初、それは実習からのストレスの影響であると断定され、一過性かつ精神的な要因であるとの判断が下された。
それゆえ、彼は一時的な鎮静を求めて頓服薬を望んだ。抗不安薬が処方されたものの、その効力は十分でなく、近頃では薬を摂取しても、胸の痛みが収まることはなく、日常の営みに大きな障害をもたらしていた。
さらに、理由もなく涙がこぼれることがある。
そのときは、「何もしたくない」「他人が怖い」と考えてしまう。
何もしたくないとは、多くの課題に焦燥し、結局好きなことも嫌いなこともできなくなることから生じるものであった。
この焦燥を胸の痛みが過度に増幅し、何もできないという事象が起こっている。
他人が怖いということに関しては、特に人前に立ったり電話をしたりなどには支障はないが、強烈な緊張を感じ、突如として他人と話したくないと思ったと告白した。
胸の痛みは特に朝になると一層強烈であり、そのためになかなか床を踏み出せない。酷い場合には、起床自体が叶わないことすらあった。この苦痛は一日中続き、授業やアルバイト中にも襲ってきた。授業や勉強の時間帯には、痛みが一段と強まり、彼は座っていることすら困難になることもあった。
その上、彼は希死念慮に囚われていた。
彼の心には、自らの命を断つという念が離れることはなかった。具体的には、首を吊って終わりを迎えるイメージが頭に浮かび続け、時には高所から身を投げることまで考えてしまうことがあった。「死にたい」という思念が彼を時折襲ったが、同時に彼は「大切な人を悲しませたくないから死ぬわけにはいけない」という意志も見せた。
それにもかかわらず、彼は最後に言葉を発した。
「もう、どうしようもないんです。このままだと、正気を保つことができなくなるのではないかと思います。助けてください」と。
The Pain 津島 結武 @doutoku0428
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます