帰り道の女

20代の女性から聞いた話です。


数年前のある真冬のとても寒い日のことでした。

その日は夜に仕事を終えてから友人と食事に行きました。

21時過ぎに解散し、最寄りの駅に着いたのは22時頃だったと思います。

私の住むアパートは歩いて15分ほどの場所にあるため、いつも駅から徒歩で帰っていました。

10分くらい歩いたところで住宅街に入るのですが、街灯はちらほらある程度であまり明るくありません。

そこを行くのは時間的にも少し怖いなぁと思いながらもその道しかないので警戒しながら進んでいきました。

角を曲がった2,30メートル先の街灯の下に誰かがいるのが見えました。


俯きながら長い髪を前にダランと垂らして白い薄手のワンピースを着た、いかにもというような女性が立っていました。

有名な映画のあの登場人物のようなその姿に怖くて仕方ありませんでした。

ですがやはりその道を行くしかないので歩き続けました。

するとその女性もこちらに向かって歩いてきます。

どんどんと距離は近づいていきます。

襲われるかもしれない。そう警戒しながら歩き続けます。

ついに手の届くほどの距離まできて気づきました。


真冬の夜こんなに寒いのに薄手のワンピースっておかしい。

それに裸足で歩いてる…


ジロジロ見て絡まれたらたまらないので、こっそり横目で警戒しながらすれ違います。

すれ違うその瞬間に全身がブワーッと鳥肌がたちました。

その瞬間からもう恐ろしくて恐ろしくて一切その女性を見ることはできませんでした。


あの女性が生きているのかいないのかはわかりません。

でもあのおかしな状況が恐ろしかったことは間違いありません。


帰り道の女 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

実話怪談集 片早 進 @katahaya_susumu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ