山奥

身ノ程知ラズ

山奥

とあるレストランがあった

決して儲かっているわけではない、むしろ赤字経営だが

一人で店を切り盛りする店主が趣味としてやっているもので

本人は利益を大して望まず、自分が満足できればそれでいいらしい

人里離れた山奥に店を構えているため、客足は遠のくばかりだったが

たまに登山をしていて遭難した人がこのレストランに入ってくることがある

年に一度来るか来ないかの大切なお客には誠心誠意接客をする

どれほどのクレーマーが来たとしても大人の対応を見せ

満足度も高いはずなのに何故かリピーターがつかない

が、それもそのはずだった

店主はなかなかの頑固者であり、そのレストランのマナーが

とても厳しいのである

店に入る前にコートや上着を脱ぐのは当たり前だが

髪を溶かしたり泥を落としたりなど

とにかく厳しいマナーのせいか常連客は全く出来なかった

店主が今後の経営について頭を抱えていると

二人の青年が店に入ってきた

実に一年ぶりのお客だ、いつものように心を込めて接客する

例の如く厳しいマナーでも彼らはすんなり受け入れてくれた

さぁいよいよ料理を提供することができるぞ、と

胸を躍らせていると不意に猟犬が2匹、店主に襲い掛かってきた

彼は必死に抵抗するがなかなか離れない

店主はやむを得ず2匹の猟犬を殺してしまう

2匹と格闘している間に2人の青年は逃げ出してしまったようだった

チッ、また逃げられたか

店主は客に料理を提供出来なかった、いや

客に料理を提供してもらえなかったことを嘆く

次はいつ料理が提供されるのか

そう思い猟犬が荒らした厨房を片付け始める店主であった

ちなみにそのレストランは「山猫軒」というらしい


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

山奥 身ノ程知ラズ @mizoken

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る