エピローグ

写真撮ってもらってもいいですか?

 いささか古風で、今時やる人も少ないけど、僕達は、結納、結婚式、披露宴をすることにした。


 今日、僕とことちゃんが住んでる町の駅前のシティホテルで結納を交わした。


 父と鐘治さんが競って“鯛の鯛”を探したり、母がことちゃんを、江梨さんが僕を自慢し始めて式場スタッフが当惑してたり、まあほほえましいことが色々あった。


 結納が終わって、僕たちはそのホテルに宿泊、他の人は帰っていった。


 僕はスーツ、ことちゃんは振袖から普段着になって、駅のペデストリアンデッキから駅ビルを散歩した。


『すっかり夜になったね』

「うん」


 ペデストリアンデッキでコンビニで買った飲み物を飲んだ。


「いい風だな」

『みんな、いい顔をしてたね』

「ああ……ことちゃん、振袖はこれで卒業?」

『そうよ』

「そっか。見納めだったか」

『写真があるから』



『あの、写真撮ってもらってもいいですか?』


 カップルさんだ。

 え、女性はハタチぐらいだけど、男性は30台?


「はい、いいですよ」


『あ、指輪エンゲージリング!』


 すごい、女性は3秒でことちゃんがしてる指輪に気が付いた。


『婚約されてるんですね』

『はい、プロポーズはだいぶ前でしたが、今日そこのホテルで結納でした』

『『おめでとうございます』』

『「ありがとうございます」』


 写真を撮った。

 二人ともいい笑顔だな。


『俺、いくつに見えます?』

「30台ですか?」

『39歳なんです。その、バツイチで』


 よくある話だけど、男は男同士、女は女同士で話をしている。


『私19歳なんです』

『私と同い年ですよ。私たちは12歳差ですけど、あなたたちは20歳差ですか』


『僕達、――から来たんです』

「へー、――から。電車で1時間以上かかりますよね」

『そうです』


『(ヒソヒソ)彼と?』

『……はい』

『(ヒソヒソ)そうですか。それはおめでとうございます』

『(ヒソヒソ)でも、私たちのことをパパ活だとか言う人がいて』

『(ヒソヒソ)それは私達もですよ。そういうのに負けずに今の私たちがある、ということです』

『(ヒソヒソ)……勇気がでました。ありがとうございます』

『(ヒソヒソ)お役に立てて幸いです』


 …………


『『ありがとうございました』』


「気持ちのいい人たちだったね」

『もう、あっち方面の電車ないんじゃない』

「たぶん……あー、どこかに泊まるのかな、泊まるしかないよね」


 ことちゃん、ハッピーホテル街へ視線を送りながら、


『あの二人なら、どんなところに泊まっても大丈夫でしょ』



「女の子、いい顔をしてたな。すっごい幸せそうというか」

『よーくん!』

「いや、ごめん」


『冗談よ。あの二人、歳の差とかバツイチだとかいろいろあるけど、あの笑顔なら、またあの男性があの笑顔を信じている限り、乗り越えられるんじゃないかな』

「うん……そうだ、その通りだね」


『「あの二人に、僕(私)達に幸あれ」』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ねえ、これちょうだい 獅子2の16乗 @leo65536

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画