パキラ
黒心
話
観葉植物が家に昔からある。幼いころの写真を手に取ってみると、生まれた時にはすでにあって、さらに昔の写真を見るとやはりある。
写真を並べると今に比べてとても小さかった。
ふと、思ったことがある。
この子は赤ん坊のころの私を知っていて、成長する私をずっと見守っていたの?
目はない。でもそう思って仕方がない。
家に帰れば青々とした葉っぱをチラつかせてお帰りと言ってくれてる気がしたし、枯れそうなときは胸が締め付けれれる思いだった。
ただの植物なのに、まるで家族のみたい。
私よりも年上で、触ればひんやり、語れば何でも受け入れてくれた。当たり前かもしれない。観葉植物はそこに居るだけで、言葉を持たないし、恒温でもない。水と栄養剤、太陽の光だけで生きて、それが全て。
パキラ、私のすべてを知っている唯一の生物。
悲しいことも、喜んだことも、嫉妬したことも、私の何もかも。涙を流した時もいて、はしゃいで飛び跳ねた時もそこに居て、手を握りしめたあの場に居た。
肉親すら知り得ないことをしっている、いつも私のそばにいた筈だから。
これからもよろしくね。
後で直接伝えるよ。いつまでも、いつまでも。枯れずに私のそばにいて欲しい。何度も悲しいことを伝えるし、楽しいことも見せびらかそう。
ただの植物でしょ。うん。パキラは何も思ってないだろうし、あっても言葉がないのもわかる。
私が赤ん坊のときから、毎日毎日、誇張抜きに家族以上に接している。
不思議でしょう?
私のすべてを知っているのが、植物なんて。
ひょっとしたら、私の最後を看取ってくれたりしないか。
パキラ 黒心 @seishei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます