第46話
結局意識を失ってしまった住職さんらしき女性を本堂の中央に寝かせた後、これ以上は遅くなってしまうため申し訳ないと思いながらもお暇させてもらった。特に火などは見当たらなかったので大丈夫だろう。
外へ出るともう日が傾いていた。
「うーん、なんだかんだで結構時間かかっちゃったな。大阪から遠かったし移動だけでもかかってるから仕方ないといえば仕方ないんだけど。
さあて、我が家へ帰りますか!一応置き手紙は残してきたけどさすがに今日中には帰らないとみんな心配するだろうしな」
後で配信するって約束したし車に着いたら短い時間だけでもやらないとなと考えながら一歩踏み出そうとしたとき、遠くの方で誰かがキョロキョロ辺りを見渡しながら何かを探しているのが見えた。
へぇ、この時間だと仕事帰りにお墓参りに来た感じかな?あの様子だと何か大事なものでも落としたんだろうか。
遅くなっちゃうけど折角だから探すの手伝おうと思い、声をかけようとしたところで何か嫌な予感が頭の中を駆け巡った俺は一旦物陰に隠れてしばらく様子を見てみることにした。
冷静に周りをよく見てみる。
すると、実は一人だけではなく同じように辺りを見渡している人影が複数あることに気づいた。幸いまだこちらには気づいていないようだが、だんだんと近づいてきている。
え…?ここってマジでそういうの出るの?
しかも、あれどんどん数増えてないか?
ほんの少しの間観察してただけなのに、4人ほどだった人影は今や10人に膨れ上がっていた。
「そっちいたー?」
「いなーい、もう帰っちゃったのかな?」
「でも、SNSの書き込みにはさっきまでいたって。ちゃんと画像も添付されてたし。そのお墓もさっき見つけたでしょ?」
「うん!このままだとオムツ履いて墓地に来たイタイ女になっちゃうし、もう少し探してみよう」
「あんたオムツ履いて来たの!?」
「もし会えたら漏らす自信しかないもん。
というか、ノーパンのあんたよりマシでしょ!」
はぁ…なんだ。ちゃんと人やん。
オムツとかノーパンとか会話の内容は意味不明だけどとりあえず悪霊とかじゃなくてほんと良かった〜。
……ん?ちょっと待って。墓?SNS?画像?
って、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??
もしかして、さっきの親子がSNSに場所を画像付きでアップしたんじゃ。それで近くに住んでる人が大勢探しに来てるってこと?
「私もう片岡様が来てるって考えるだけでぐしょ濡れで卵子おりてきてるもん。今なら声聞いただけで孕む気がする」
「あんた正気!?片岡様の前でそんなメス臭撒き散らす気なの!?
でも、声聞いて孕むってのはわかる〜。私なんか直接お声いただけたら耳が妊娠する自信あるわ」
耳が妊娠するってなに?
それ以外にもものすごいパワーワードのオンパレードなんだけど…
ちょっと待って。もしこのまま出て行ったとしたら…?
ヒント①…ここ庶民区
ヒント②…俺一人
その他諸々を考慮した上で、IQ53万(自称)の俺の脳内CPUが弾き出した答え。
見つかる→殺到する→SNSで拡散される→さらに増える→もみくちゃにされる→危険!ベリーデンジャラス!!
何とか見つからないようにそっとあそこの茂みまで行ってこの場を離れるしかない!
あの子が違う方向に目がいった隙に…
今だ!!
タイミングよく飛び出すことに成功する。
そして、あと少しで茂みに隠れられるというところで背後から声がした。
「お待ちになって〜♡私と悟りの境地へ旅立ちましょう?」
あの住職さんが目を覚ましたのだ。
彼女の言葉をキッカケにその首の速さどうなってんの!?と言いたいぐらいの速さで一斉に視線がこちらへと向く。と同時にドドドドッと俺めがけて猛進してきた。
ヤッベー!ここはとりあえず逃げよう!!
俺を先頭に茂みの中を突き進む大集団。
途中後ろを振り返ると、目の奥が怪しげに光って追いかけてくる女性たちが見える。
荷物を背負ってるせいか、徐々に差が縮まっている。
やむを得まい。ここはアレを出すしかない!
必死に走りながら頭の中でイメージを膨らませてゆく。
よしっ!いける!!
右手を高く掲げ飛び跳ねると同時に頭の中であのセリフを高々と宣言した。
『みんなの期待に力をもらって!駆け抜けます!頂点の道を!
Road to Glory!!いっけー!!』
ふ、これで突き放しただろうと思い、得意げに後ろを振り返る。
ぎゃああああああ!!もっと差が縮まってるー!!なぜー!?
悪いこととは重なるものだ。
街中に出たことによって追いかけてくる集団が更に膨れ上がってしまったのだ。
必死で逃げ続ける俺の耳におかしな音が聞こえ出したのは街中を3分ほど駆けたときだった。
カカカカカカカカカカカカッ!!
この頃にはもう後ろを振り返る余裕すらなくなっていたのだが、あまりに気になりすぎた俺はチラッとだけ見てみた。
なんと!集団の先頭がさっきまでの若い子から高速で杖をつきながら猛追するおばあちゃんに代わっていた。
おばあちゃんはえええええ!!
これが噂の高速ばばあか!?このままじゃいずれ追いつかれる。
勢いを落とさず角を曲がった直後、体にものすごい衝撃を感じた。
一瞬目に映ったのは脇腹に突き刺さる肘。
更に間髪入れずに暗い路地から伸びてきた手に口を塞がれそのまま引き摺り込まれてしまったのだった。
男女比の狂った未来へタイムリープしたら若返った〜16歳のパパと70歳の娘〜普通に生活してたらいつの間にか世の女性たちの希望の星になった件 いっちにぃ @t-xillia
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。男女比の狂った未来へタイムリープしたら若返った〜16歳のパパと70歳の娘〜普通に生活してたらいつの間にか世の女性たちの希望の星になった件の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます