「ねぇ、私と恋しない?」

花園眠莉

「ねぇ、私と恋しない?」

 高校生活2年目が始まった頃、私の恋も始まった。相手は同じクラスの黒瀬。出席番号順の席が近くて仲良くなった。普通に会話もするしDMだってする。けれど彼の好きな人は別に居た。同じクラスの姫川佳奈ちゃん。少女漫画のヒロインみたいな子。話し方も雰囲気も顔も全部勝ち組。佳奈ちゃんとは共通の趣味があるから話したりする。女子が集まれば恋話が始まるのは必然で佳奈ちゃんの恋愛の話も聞く。どうやら好きな人はいないらしい。黒瀬、チャンスじゃない?なんて好きな人を応援するようなことを考える。付き合いたいとは思うけどそれよりも幸せになってほしいから貴方の恋を応援する。


 学校祭のステージ発表で歌っていた時は3年生の先輩から「遥斗ー!」って呼ばれてたよね。

その時のへにゃっと笑う顔がたまらなく好き。

そんな顔をいつも見れている私は幸せだと思う。


 学校祭が終わってお菓子を買いにコンビニに向かった。あ、佳奈ちゃんだ。隣りにいるのは…同じクラスの町田君だ。その2人の雰囲気を見て付き合ったんだろうなと察した。後日、聞いてみたら告白されて付き合うことになったらしい。私は「おめでとう!」と1言残した。黒瀬は絶望したみたいに朝からうなだれている。

それもそうだ。

あんなに好きなんだから。

彼氏がいても尚好きなんだから、かなわないよ。


 ねぇ、黒瀬。私、黒瀬のへにゃって笑う顔が好きなんだ。佳奈ちゃん一途な所も好きだよ。透き通るような歌声と少しふざけたような話し方が好きだよ。テンポが良くて程々に適当な会話が好きだよ。たまに投稿している陸上部で走っている姿が好きだよ。部員の皆と仲良さそうな写真に写る黒瀬も好き。モノマネのクオリティが高い所もギャップで可愛くて好きだよ。可愛いって言ったらめちゃめちゃ否定する所もどうしようもなく愛おしい。私がふざけたらちゃんとツッコんでくれるノリの良いところが好き。黒瀬のワードセンスはキレがあって好き。時々情緒が崩れているけれどそれさえ愛せる。挙げ出したらキリがないけど、このぐらい黒瀬のことを一途で好きな人がここにいるから。だからさ貴方に言うよ。報われる恋じゃないのは知ってるけれど。

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