第57話 天音は調子が良くない

 天音は退院こそできたものの、体調は良さそうには見えなかった。


「子育てはいいから、体をいたわるようにしてくれ。無理をすれば、次こそ助からなくなるぞ」


「わかってはいるけど、子供たちを放っておけなくて・・・・・・」


「天音に何かあったら、子供たちはいたたまれない。おまえのために生きるのではなく、子供たちのために生きてくれ」


「そうだね。しっかりと休むようにするよ」


 天音は横になると、すぐに眠りについた。こんなに早く眠れるのは、相当疲れている証拠である。


 ロキタンスキー症候群の女性に、子供を出産させるのは現実的ではなかった。子供が欲しいとストレートに伝えたことを、強烈に後悔する。


 天音のことを考えていると、玄関のベルが鳴らされた。


「清彦さん、こんにちは・・・・・・」


「蛍さん、こんにちは・・・・・・」

 

 蛍は聖の妹で、看護師として勤務している。聖の妹とあってか、どことなく似ているような気がする。


「天音さんはどうですか?」


「今は寝ています」


 蛍は顎に手を当てる。


「奇跡的に助かったとはいえ、調子は良くないみたいですね。体調によっては、再入院も考える必要があります」


 再入院、もっとも頭から遠ざけていた言葉である。


「子供の面倒はどんな感じですか。お仕事をしながらでは、大変ではないでしょうか」


「そうですけど、力を尽くしています」


「清彦さん、しっかりと休みましょう。子供たちのためにも、奥様のためにも・・・・・・・」


 天音に伝えたばかりの言葉を、そのままそっくりといわれた。他人の疲ればかりに意識を取られ、自分には目を向けていなかった。


「子供の面倒を見ますので、少しだけ眠っていてください」


「そこまでしていただかなくても・・・・・・」


「天音さんに負けないほど、清彦さんもお疲れです。息抜きをする時間を作ってください」


「蛍さんはどうして、そこまでやってくれるんですか?」


「力を合わせて、聖さんの命を救いました。清彦さんに死なれたら、すべてが台無しになってしまいます」


 看護師としての使命なのか。どんなに説明されても、腑に落ちることはなさそうだ。


 極度の疲労ゆえに、強烈な眠気に襲われる。睡魔にはあらがえず、目を完全に瞑ってしまった。

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交際二カ月の彼女に二股された男は、慰めてくれた二人の女性を好きになってしまいました のんびり @a0dogy69

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