最終回の続き&番外編

第56話 天音は生死をさまよっていた(作品番外編&続き)

*終わり方がよくないという意見をいただいたので、追加でその後を書きます。半年以上も空いたので、内容に矛盾が生じているかもしれません。


 天音は二年の時を経て、自宅に戻ってくる。


「二年も眠ってごめんね・・・・・・」


 生存率は10パーセントと聞いていた。生きて帰ってだけで、奇跡に等しいレベルだ。


 二年ぶりに顔を合わせた妻を、思いっきり抱きしめる。


「帰ってきてくれてありがとう。いつかは戻ってくると信じていたよ」


 二つの体はゆっくりと離れる。


 天音の出産した赤ん坊は、必死に守り抜く。仕事、育児でパンクしそうになることもあったけど、いろいろな人の支えによって乗り越えることができた。感謝という言葉をまざまざと感じたのは、これまでの人生の記憶になかった。


「清彦、子育てを頑張るね」


「天音は自分の体を大切にしろ。奇跡的に生還できたものの、今後は無事でいられる保証はないんだから」


 4人そろってこそ、一つの健全な家族として機能する。誰か一人でも欠けてしまったら、一直線に崩れ落ちていくだけだ。


「私は燃え尽きて、あの世に逝きたいの。消化不良のままでは、死んでも死にきれないよ」


 芯の強さは、入院前と同じ。2年ぽっちでは、何も変化しなかった。


「清彦の作ったおにぎりを食べたいな」


「わかった。これから作るよ」


 炊飯器の中を確認すると、米はあまり残されていなかった。おにぎり一個作れるのかも怪しいレベルといえる。

 

 おにぎりを丁寧に握ると、天音に手渡しする。


「清彦、ありがとう」


 天音はおにぎりを食べる。退院後から何も食べておらず、二年ぶりの食事となる。


「あんまりおいしくないね・・・・・・」


「天音は辛口だな」


「塩分はきついし、ご飯の柔らかさも感じない。失敗作を食べているみたいだよ」


 天音は炊飯器の中を覗いた。


「体調が戻ったら、おにぎりを作ってあげるね」


「ああ、そのときを楽しみにしているよ」


 二人で会話をしていると、赤ん坊たちが目を覚ました。天音が命を懸けて誕生させた、命はすくすくと育っている。


「音夢、天希、おかあさんが戻ってきたよ」


 二人の名前は、天音から一文字ずつを取った。妻が死んだとしても、生きた証とするため。彼女の尊さは、何物にもかえがたい。


※ 続きが思い浮かんだら、執筆していこうと思います。

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