宇宙内戦 ~生き残りを求めて~
kamui
第1話 はじまりの宇宙(はじまりのそら)
宇宙内戦〜生き残りを求めて〜
すこし遠い未来、地球から2万光年以上離れた天の川銀河のある星系群にて…
天の川銀河に属する、銀河連邦ゴールド・ダスト自治星系の首都星アウシュの首都ダマ郊外で生活している青年がいた。
この青年の名はレスター・フリード。今年で19歳になるフリードは、来年で大学を卒業し、彼の夢である宇宙船のパイロットになる予定だ。
彼の住むゴールド・ダスト星系は、5年前の銀河世紀暦136年に銀河連邦に併合された星系であり、恒星サンライズを中心として首都星である惑星アウシュや、惑星ハイス、惑星ソラリス、惑星ダストなどの様々な惑星がある。
その中で、人が住んでいるのは首都星アウシュ、惑星ハイス、惑星ソラリスの3星が有名である。一方、惑星ダストなどの人が宇宙服などの設備無しには生活出来ない星では、資源採掘や宇宙船ドックなどの産業で利用している星などもある。
今日からレスターは、大学の行事で惑星ソラリス衛星軌道上にある民間用宇宙船ドックに見学に行く事になっていた。
今回の行事で行く宇宙船ドックでは、自由時間に本物さながらの宇宙船操縦シュミレーターを好きなだけ出来る事から、レスターはこの行事をとても楽しみにしていた。
夜が明ける前に目が覚め、まだかまだかとしおりやインターネットで行くところのことを何度も調べて、ようやく朝になった。
朝6時に家を出て地下鉄に乗り、首都ダマの中心部から8キロ程離れた、ダマ航空宇宙空港の第4ターミナルに向かった。
第4ターミナルに着くと、後ろから声をかけられた。
「相変わらずすごい荷物だな」
振り返ると、友達のカーターとレイがいた。
「仕方ないだろ、カメラとかで幅取るんだから」と言いながら彼らの元に向かった。
レスターは「他の奴らはどこに居るんだ?」と聞くと、カーターが「まだ来てないから、とりあえず今のうちに保安検査行こうぜ。保安検査混むとかなり時間食うからな」と言って、3人で保安検査場に行って保安検査を済ませる事になった。
時間が少しかかり、集合時間ギリギリで荷物の保安検査を終えて集合場所に行くと、大学の人がほとんど集まっていた。
集団の中央部分で大学の教授が出欠を取っていたので、そこに行って出席表に自分の名前を書いて、集団の端っこに移動した。
集合時間を過ぎて、教授の挨拶と説明が始まった。
レスターは、周囲を見渡すと友達のユウタとレイアの姿がなかったので、レイに彼らはどうしたのか聞くと、体調を崩して寝込んでいるという。
せっかくの行事なのにもったいないなぁと思いながら、レスターは教授の話を聞き流すのであった。
登場時間になって、レスター達はエアスペース122型宇宙船に乗って、しばらくすると、宇宙に向けて飛び上がった。
アウシュからソラリスまでは、民間の宇宙船で片道2日の工程である。
大気圏を出ると、無重力状態になり、レスター達の体が軽くなって浮き始めた。
宇宙船のフライトは、はじめ宇宙空間まで行くために、マッハ23の速度を出して地表から45度の角度で打ち上げ発射場から飛び立つ。次に、大気圏から脱すると、目的の星までの距離を考慮して加速フェイズに移行する。加速が終わると、乗客は4点式のシートベルトを外して船内を自由に回る事ができる。
船は加速フェイズを終え、レスター達はシートベルトを外して、船にある広場に向かった。船内は、事故に備えて部屋や通路を小さくしてあり、事故が起きた際には隔壁として閉鎖しやすいようにしてあるが、船の中心部にはリフレッシュ出来るように30メートル程の広場が設けられている。
広場に着いたレスター達は、その広場で上や下に横にと動き回り、無重力空間を楽しんでいた。
ダマを飛び立ってから1時間程が経った頃、船が急に激しく揺れ出した。
「皆様落ち着いてください。この船付近で大型の物体が通ったものと思われます。もう直ぐ安定航行に戻れると思いますが、安全の為お座席のお客様はシートベルトを、広場のお近くのセーフティーゾーンにお入りください。」と機長からアナウンスが入った。
レスター達は目の前にあったセーフティーゾーンに入った。
しばらくすると揺れがおさまった。
一体何だったんだろうか、そう思いながらセーフティーゾーンからレスターは出た。
それから少し時間が経った首都星アウシュでは、ダマ上空に黒い巨大な宇宙船が40隻以上現れた。
ダマの人々は困惑しながら、上空に現れた宇宙船を見上げていた。
そうしていると、上空から何か粒の様なものが落ちてきた。人々がそれに気付いてから5秒程経った瞬間、上空が突然ピカっと巨大なLED電球が光った様に眩しい光につつまれた。そして光に包まれてから1秒ぐらいたつと、爆音と共にダマの地上にある全ての物が吹き飛ばされた。
ダマの大地は爆心地付近が更地となり、爆心地から離れたあたりには、瓦礫と燃え殻が散乱しているだけであった。
その日、首都星アウシュでは80回の強烈な発光が確認された。発光が観測されて瞬間から、アウシュのすべての地域からの連絡が途絶えた。
「レイアと全然電話が繋がらないんだけど」
とレイがあたふたしていたので、「ここはソラリスなんだから、繋がるまで時間がかかるのは当たり前だよ。惑星間通信はプラズマ加速通信機が開発されて、今までの数億分の1しか時間がかからなくなったとは言え、ダイレクト通信チャンネルを構築するのに5分はかかるんだよ。」とレスターがレイにうんちくを語ってレイを落ち着かせていた。
そんな事をしていると、宇宙船ターミナルの画面全てが一斉に緊急ニュースに切り替わり、「ダスター放送局ソラリス支部より、緊急ニュースをお伝えします。」とニュースキャスターが喋り出した。
画面が急に変わった事で、宇宙船ターミナルにいた人々が、なんだなんだとニュースを見に各所の画面の前に集まった。
「緊急ニュースをお伝えします。グリニッジ標準時11時に、ゴールドダスト星系首都星アウシュとの通信が途絶しました。現在見ていただいている映像は、グリニッジ標準時10時50分ごろに、首都星アウシュ付近を偶然航行していたダスター放送局の宇宙船から撮影された映像です。」とアナウンサーが解説している。その映像をよく見ると、小さな灰色の形をした何かが、無数に映像に映り込んでいた。レスター達が映像に飲まれる様に映像を集中して見ている中、アナウンサーの解説が続く。「こちらの映像に映っているのは、灰色をした無数の小さな物体は、銀河連邦軍宇宙艦隊とみられ、10分程経った時には、首都星アウシュで無数の閃光とキノコ雲が確認出来、銀河連邦軍の超磁力プラズマ兵器による攻撃ではないかと思われます。」とアナウンサーが喋り切った所で、アナウンサーの背景が一瞬光ったと思った次の瞬間、映像が途絶えた。
映像が途絶え、画面の前にいた人々は唖然としていた。その中で、ニュースを見ていた1人が、持っていたコーラを落とすと、その音で映像を見ていた全ての人が、急に現実に引き戻された様にハッと我に帰り、そこからは悲鳴や出口などへと逃げ惑う人々などで、ソラリスの宇宙船ターミナルは大混乱に陥った。
「みんな、とりあえずターミナルの出口に向かうぞ。出口から格納庫の方に向かえば、逃げるために乗れる宇宙船があるはずだからな。」と言いながら、カーターはレスターとレイの腕を掴み、出口に向かって走り出した。
揉みくちゃになりながら、なんとかターミナルの外にたどり着くと、レスター達の頭上を戦闘機が何機も飛んで行った。
それを見ていた誰かが、「ソラリス防衛軍だ‼︎」と叫んだ。
各惑星には、自分達の星を守るための防衛軍があり、普段は主に宇宙海賊や不審船への対処を行っており、それなりの軍備を持ってる。
戦闘機が通り過ぎたかと思ったら、次は目の前の道路に、軍事用のジープやトラックが走ってきた。
レスター達の目の前に止まると、防衛軍が何人もトラックから何人も降りてきて、ターミナルの中に侵入していった。
ジープの中から、階級が高そうな士官が降りてきた。
「これより、この宇宙船ターミナルはソラリス防衛軍の統治下に入った。よって、これより何人もこのターミナルを使用することは出来ない。」とその士官が言うと、周りにいた兵士達が、ターミナルの中にいた人々を次々と追い出していく。
追い出された人々が、ターミナルの入り口を封鎖する兵士達につかみかかって中に入ろうとしている中、レスター達は、宇宙船が置いてある格納庫の中に侵入していた。
そこには2隻の武装輸送船が置かれていた。
左に置いてあった船はカバーが取り外されていて整備中だったが、右側にある船は整備が済んでいる様だった。レスター達は、右側にあった船に乗り込み、1週間前に習った宇宙船の操縦方法で、レスターは船を起動させ、滑走路まで進んで行った。そして、滑走路に防衛軍の車両が突入してきたのを横目に、離陸し宇宙へと飛び立った。
大気圏を抜けた時に、目の前に灰色の巨大な船が現れた。
「銀河連邦軍の軍艦だ‼︎」とカーターが叫んだ。すぐに回避軌道を取るために操縦桿を引くレスターだったが、1週間前に操縦技術を習ったばかりだったため、船が思う様に動かすことが出来なかった。
レスターは必死に操縦桿を引いて機首を上げ、銀河連邦軍の軍艦とギリギリ当たらない程度に避けることが出来た。
回避してすぐに、コックピットの計器から警報が鳴り、直ぐ船体の後方に取り付けられた後方カメラの映像を確認すると、銀河連邦軍の戦闘機が背後に着いてきていた。
そして、直ぐに赤い光が背後から飛んできた。
「攻撃されてる‼︎何か武器はないの‼︎」とレイが叫んだ。
「船体の上下部と左右部にそれぞれレーザー機関銃があるって書いてある」とレスターが計器の横に貼ってあった船内図を見て答えた。
「よし、レイ。上下部にあるレーザー機関銃の所に行って戦闘機を追い払うぞ‼︎」とカーターがレイに言って、急いでレーザー機関銃のある所に向かおうとするが、レイは恐怖で体が固まっていた。そんなレイにカーターは「やらないと俺らがやられるんだぞ。やるしかないんだ‼︎」と怒鳴りつけ、そのまま上部のレーザー機関銃のある部分に上がっていった。レイは恐怖で固まっていた体をなんとか動かし、「やるしか…ないの…」と言葉をもらしながら、下部のレーザー機関銃の元に向かった。
2人が銃座に向かっている中、レスターはコクピットの索敵レーダーを起動し、周囲の敵戦闘機の位置を確認した。「10時の方向から4機、5時の方角から2機来てるぞ‼︎」と2人に艦内電話で知らせ、ミサイル防御用のジャミング装置を起動させた。
「レスター、位置についた。どれからやればいい?」と銃座に上がったカーターから連絡が来た。
「1時の方向にいるやつを先に倒してくれ、8時の方向にいるやつはあとでいい。」レスターはカーターに伝え、下部銃座にいるレイに「レイ、大丈夫か?8時方向にいる戦闘機を撃墜してくれないか。俺達が生き残るために」と伝え、慣れない舵を動かして回避起動を取り続けた。
カーターが銃座で射撃を始めた。
だが全くと言っていいほどに当たらない。カーターは「くそ‼︎当たらない‼︎」と焦りでイラつきを隠せない。
急にガン‼︎と衝撃が来た。
「クッソ、メインエンジンに被弾した‼︎」とレスターが叫んだ。艦内放送装置をオンにしたままだったので艦内中にレスターの声が響いた。
船下部の銃座に上がったレイは銃座の中で震えていた。
「なんでこんなことになってるのよ…」銃座に座りながら頭を抱えてうつむいていた。
そんなレイの目の前を灰色の銀河連邦軍の戦闘機が横切った。
その瞬間衝撃が飛んできた。
レスターの叫ぶ声が聞こえた。
その時、レイは、自分の中で何かが砕け、爆発して込み上げてくるのを感じた。
「そうだ…殺らなければ殺られるんだ…」。
精神的にも追い詰められたレイは、気付けば機銃を撃って戦闘機を1機撃墜していた。
「殺ってやる‼︎」と叫び、レイはさっきとは別人になった様になり、近くにいた5機の戦闘機を一瞬のうちに全て撃墜してしまった。
「まじかよ…すげぇ…」とカーターは驚きを隠せず言葉をもらした。
その頃、銀河連邦軍の宇宙空母の艦橋では…
「何⁉︎、不審船を攻撃していたS2インターセプター6機が全滅しただと⁉︎」と怒号が飛んでいた。
艦橋には、艦隊司令官、艦長、航空参謀、その他士官4人、航海士4人がいる。
「航空参謀‼︎、これは笑えんぞ。6対1で負けるなどと。恥を知れ‼︎」と艦隊司令官が怒鳴っている。
航空参謀はただただ「申し訳ありません。」というだけであった。
艦隊司令官は、ただただ謝る事しかしない航空参謀に腹を立て、「航空参謀‼︎、貴様は航空整備管理官に降格だ‼︎。ヒューズ少佐‼︎、貴様を航空参謀に抜擢する。しくじるなよ。」
と航空参謀を変えてしまった。
そして、艦隊司令官は、「航空参謀、この事態にどう対処する?」とヒューズ少佐に尋ねた。
「はっ。ここは艦対宙特殊ミサイルを本船から発射次第、S5ファイターを8機出撃させて遠距離から宙対宙ミサイルで迎撃させるのが有効であると考えます。」とヒューズ少佐は答えた。
ヒューズ少佐の答えを聞いて、少し考えたあと、「よし。艦長、艦対宙特殊ミサイルを不審船に4発射‼︎ 航空参謀、ミサイル発射後S5ファイターを8機出撃させ、遠距離から宙対宙ミサイルで迎撃させろ。」と命令を出した。「はっ」、艦長とヒューズ少佐は艦隊司令官に敬礼した。
その後、宇宙空母から、4発のミサイルが発射された。その10秒後にS5ファイター8機が飛び立った。
戦闘機が飛び立ったあと、ヒューズ少佐が手持ちの望遠鏡を覗いている艦隊司令官に「艦隊司令官。私は航空参謀として航空司令機に乗って、航空機の指揮を取りたいと思います。」と進言した。
「分かった。行ってこい」と艦隊司令官に許可をもらったヒューズ少佐は、FC140に搭乗し、宇宙空母から飛びたった。
レスターは、宇宙空母から発射された4機のミサイルをレーダーで見つけていた。
「ミサイルが来てやがる。この船にはciwsはついてないのか⁉︎。クソ‼︎、このままだと撃墜されちまう。」と焦りながらレスターは計器類を操作していると、レーダー上からミサイルが3つしか表示されていなかった。そして、いつのまにか1つにまで減っていた。
「どうなってんだこりゃ…」と思わずレスターは口に出していた。
その頃、船体下部の銃座では、錯乱状態になっているレイが機銃を乱射していた。
レイが乱射している内にレーザーがミサイルにあたり撃墜していた。
連続で乱射していた為に、機銃からレーザーが出なくなってしまった。
「なんでレーザーが出なくなってるのよ⁉︎」とレイは叫んだ。
そうこうしている内に、レイが撃ち漏らしたミサイルが、レスター達の乗る宇宙船の左横2メートル付近で爆発した。
爆発した衝撃で衝撃波が生まれ、その衝撃波で宇宙船が激しく揺れた。激しい揺れで、彼らは思わず「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」と声を上げた。
揺れが収まり、レスターが計器類を確認すると、宇宙船の電子機器が異常をきたしていた。「くっそ‼︎計器がイカれやがった‼︎ さっきのは電磁パルスミサイルか‼︎」。
レスターは、なんとか宇宙船を制御しようと、計器のスイッチをいじる。
そうしている中、S5ファイターから発射された10発のミサイルが、レスター達の宇宙船に向かってきていた。
レスターはジャミング装置を起動させようとしたが、電子機器のほとんどが機能しなくなっており、ジャミング装置も機能しなくなっていた。
舵もほとんど利かない、ジャミング装置も動かない、フレアなどの防御システムも動かない宇宙船では、もうミサイルに対してレスターが取れる手段はなかった。
銃座も動かなくなっていた。
上部銃座では、カーターが「くっそ、動かねぇ…」と言いながら、なんとか機銃を動かそうと銃座のハンドルを左右に動かしていた。
下部銃座では、パニックになっていたレイが、「なんで動かないのよ‼︎動け‼︎動け‼︎動けってんだよ‼︎」と錯乱状態にまで陥りながら、銃座のハンドルを左右に思い切り動かしたり、叩いたりしていた。
そして、飛んでくるミサイルがレイの目に入ったその瞬間、目の前が真っ白になった。
S5から発射されたミサイルが、船体下部に2発、船体左舷に1発、船体後部に5発命中し、レスター達の宇宙船のあちこちが火に包まれた。ミサイルが着弾した衝撃で、コクピットにいたレスターは、座席から弾き飛ばされて、コクピットの全面ガラスに叩きつけられていた。「ゲホッゲホッゲホッ…いたたたた…ゲホッ…」と顔から血が滴り落ち、叩きつけられた衝撃で咳が止まらないなか、なんとかレスターはコクピットの座席に戻り、緊急用の船内電話で2人の無事を確かめようとした。船内電話の受話器を取ろうとしたが、受話器のコードが切れていて、受話器本体が飛んでいっていた。
レスターは座席にもたれ、「もう…おわりか…」とあきらめの言葉を漏らした。
目の前から何か飛んできているのが見えた。
「あぁ…これで死ぬのか…」そうレスターが呟いた瞬間、無線機からノイズに混じった人の声が聞こえてきた。
「ザーーーー、こ…は、…リス防衛…宇宙軍。お……せよ……。ザーー、こちら…ソラリス防衛航空…軍。ザー応答せよ……」。
その無線が聞こえた直後、目の前を戦闘機が通り過ぎていった。ソラリス防衛航空宇宙軍の戦闘機だった。
レスターは、無線を聴きき、戦闘機を見て、なんとか背もたれからから起き上がり、無線機を握って通信を試みた。
「こちらは…ソラリスから脱出した民間船。救援を求む…」と無線を送った。
「ザザーーザー、了解。銀河……の戦…と空母沈め……救援に行く。ザザ…そ……持ち……てくれ…」と無線が帰ってきたので、レスターは胸を下ろして背もたれに寄りかかった。
そして、後ろの方から、ガタ…ガタ…っと音がしてきたので、レスターは振り返ると、カーターが銃座から降りてきていた。
「ゴホッ…カーター、無事だったんだな…ゴホッ…」とレスターは声をかけた。
「あぁ…なんとかな…」とカーターは答え、血まみれの体をなんとか動かしながら、レスターの側まで移動した。
「ソラリスの戦闘機が来てくれた。助かったぞ…」とカーターに伝え、レスターは気絶した。カーターは「そうか…」と答え、そのまま前に倒れ込んだ。
「こちらウィザード05。これよりファイターを撃墜し、空母を鎮める。ウィザード隊は戦闘機を撃墜する。インフェルノ隊は空母を撃沈しに向え。以上。」
「ウィザード02了解。」
「インフェルノ04了解。」
「ウィザード07、了解。」
「ウィザード06了解。」
「インフェルノ10了解。」
「ウィザード09、了解。」
「インフェルノ08了解。」
「インフェルノ21了解。」
無線のやりとりをおえると、ソラリス航空宇宙軍の戦闘機は、2隊に分かれ、それぞれの目標に向かった。
一方、銀河連邦軍のS5ファイターは、ソラリスの戦闘機をレーダーで発見し、レーダーでソラリスの戦闘機をロックオンすると、ミサイルを発射した。
ミサイルを捕捉したウィザード隊は、回避軌道を取った。
「ウィザード02、ミサイルに食い付かれてるぞ‼︎ フレアを炊け‼︎」とウィザード09が無線を入れた。
「くっそ‼︎ ミサイルが離れない。助けてくれ‼︎ うぁぁぁぁ‼︎」。光が1つ瞬いた。ソラリスの戦闘機が1機撃墜された。
「くっそ‼︎ウィザード02がやられた‼︎」とウィザード隊のウィザード07が無線をいれた。
「ウィザード06、07、09。こちらウィザード05。ウィザード02の仇を取れ‼︎」
「ウィザード06了解。」
「ウィザード07了解‼︎」
「ウィザード09、了解」
3機のソラリスの戦闘機から、ミサイルが6発発射された。
そして、そのミサイルはS5ファイターに直撃し、5機を撃墜した。
S5ファイターの部隊は、すかさずミサイル3発を発射して反撃した。
光が2つ瞬いた。「くっそ、07と09がやられた‼︎」とウィザード05が無線で叫んだ。
戦闘機が空戦を行っているエリアから少し離れた場所では、ヒューズ少佐がFC140に搭乗し、航空部隊の指揮をとっていた。ヒューズ少佐は、S5ファイターの被害を鑑みて「604飛行隊は、直ちに補給の為リースに帰投せよ。405飛行隊は、直ちに発進し、エリアA20に急行せよ。」と指示を出した。
ヒューズ少佐から指示を受けた宇宙空母リースでは、急いで戦闘機の発進準備が行われていた。
電磁カタパルトに繋がれたS5ファイターが今にも飛び立とうとしていた時、艦橋ではソラリス航空宇宙軍のインフェルノ隊をレーダーで捉えていた。
「艦長、対空戦闘用意、直掩機も向かわせろ。また、発進準備中の飛行隊を直ちに発進させろ‼︎」と艦隊司令官が艦長に命令を出していた。
艦内に警報音が鳴り、「対空戦闘用意‼︎」という艦内電話の艦長の声が鳴り響いた。
艦内では、乗組員が慌ただしく銃座に向かった。
警報音が鳴り始めてから約30秒後、インフェルノ隊から発射された24発の対艦ミサイルが、リースの左舷部に直撃した。
リースの発進デッキが破損して戦闘機の発進が出来なくなり、発進デッキのカタパルトに繋がれていた数機のS5ファイターが火に包まれ、燃料タンクとミサイルに火が回り爆発した。また、被弾した左舷側の対空銃座が全滅し、艦内ではそこら中から火の手が上がった。
その頃、インフェルノ隊では、隊長機のインフェルノ10がインフェルノ隊全機に指示を出していた。「インフェルノ10から各機へ。初弾全弾命中。撃沈を確実にする為、敵空母中央部に集中攻撃を行う。全機残っているミサイルを発射せよ。ミサイル全弾発射後、補給の為ソラリスに帰投する。全機ミサイル発射‼︎」。
インフェルノ隊から、ミサイルが24発発射され、真っ直ぐにリースに向かっていく。
ミサイルを打ち尽くしたインフェルノ隊は、機首を180度回頭してソラリスに帰還して行った。そして、インフェルノ隊が放ったミサイルが、リースの船体中央部の宇宙船の格納庫と弾薬庫に命中し、リースは轟沈した。
リースの轟沈を見た銀河連邦軍の戦闘機達は、数隻の宇宙駆逐艦と共に退却を始めた。
銀河連邦軍の退却によって戦闘は終了し、ソラリス防衛軍が勝利した。
また、ぼろぼろの宇宙船にいたレスターとカーターはソラリス航空宇宙軍の救難艦によって救助され、一命を取り留めたが、まだ意識は戻らなかった。
レイのいた宇宙船の船体下部の銃座は、ミサイルの被弾で銃座が消失し、その付近にバラバラになったレイの焼死体が発見されたことで、レイの死亡が確認された。
この戦いで、ソラリス防衛軍は42.3%、銀河連邦軍は76.9%の被害を出した。また、ソラリス防衛軍は戦闘機45機と攻撃機19機、駆逐艦2隻を失い、銀河連邦軍は、戦闘機97機、攻撃機48機、空母1隻を失った。戦死者は、ソラリス防衛軍では374人、銀河連邦軍では781人が戦死した。
だが、これは始まりに過ぎなかった。
この戦い後、銀河連邦軍は、この戦いは銀河連邦の首都星シャントリアの銀河連邦議事堂で発生したテロは、ゴールド・ダスト自治星系が仕組んだものとして、宣戦布告を行い、攻撃を開始したと発表した。一方、ソラリス防衛軍は事実無根な理由で、一方的な虐殺を行ったと銀河連邦軍を激しく非難し、銀河連邦からの独立と銀河連邦への宣戦布告を宣言した。両者共に主張が対立し、戦争状態に陥ることとなり、レスター達はソラリス防衛軍に徴兵され、今日を生きる為に迫り来る銀河連邦軍と戦わねばならなくなった。だが、そんな運命が突き付けられた事は、まだレスターとカーターは病室のベットで、目覚めるまで知る由もなかった。
銀河世紀暦141年、宇宙内戦が勃発した。
宇宙内戦 ~生き残りを求めて~ kamui @kamui1025
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます