My true self

@fukumi1666

第1話

 「どうして?」やっと見つけることができたのに。地面に倒れている僕を彼女は安堵したように見つめている。彼女は倒れた僕の側から離れ、僕を撃ったであろう男の元へ向かった。そんな彼女を見ながら段々と意識が遠のいていった。


 「ーーき。ー樹。友樹!」  ハッと僕は目を覚ました。

 「なんだ里香か」

 「なんだじゃないでしょ。もう朝だし、さっきからずっと起こしてるのに全然起きないんだもん」

 「ごめんって。起こしてくれてありがと」

 僕は里香を見た。肩よりも少し長い艶のある黒髪で、身長は極々平均的だ。里香とは幼い頃からの仲で世間一般で言う幼馴染のような存在だ。 

 そういえばさっき夢の中に出てきた女性は里香だった気がする。

 「ねぇ友樹」 里香が僕の顔を覗き込む様にして言った。

 「え、何?」

 「何?じゃない!なんかずっとボーッとしてるし、大丈夫?」

 「大丈夫だよ。寝起きだし寝ぼけてんのかも」

 「本当に…、しっかりしてよね」

 そんな会話をしているとドアの方で声がした。

 「おい、No.20、21。もう朝食の時間だ、急いで移動しろ」 

 『はい』

  僕達はそう返事をしてから部屋を出た。僕たちの住むセラン研究所では個人の名前以外に番号がある。No.20が僕で21が里香だ。この施設には上からアース、セルト、サルタという3段階の階級に分けられている研究者と、施設を警備するアレンという人達がいる。基本はその人達が番号で僕達を呼んでいる。

 食堂に着くとこっちに声を掛けている3人が居た。

 「おーい友樹〜」 彼は蓮。茶髪で高身長でチャらく見えるが友達思いのいい奴だ。

 「遅かったな」 こっちは直人。蓮と比べたら小柄に見えるがとても責任感のある奴だ。

 「友樹は分かるけど里香も遅れるのは珍しいね」 彼女は沙耶香。長い髪を一つにまとめていて、蓮同様仲間思いの優しい子だ。

 僕と里香はすぐに3人の元に行って食事を始めた。 

 「てか友樹、なんで今日遅かったんだ?」

 「もしかして昨日原さんが言った話が怖くて寝れなかった?」

 「そんなわけあるか」 僕はそんな事を言いながら施設の最年長の原さんから聞いた話を思い出した。

 2036年。今から14年前に平和な日常が消えた。地球を取り囲み大気が突如として破壊され、そこから地球外生命体や地球外から持ち込まれたウイルスによって次々と人が殺されていった。そこから人間は奴らに支配される状態になった。そして奪われた地球を奪還する為にこのセラン研究所ができ、僕達は奴らに対抗する為の実験体として生活している。

 「俺達が今17って事は4歳の時にあったんだろ。覚えてないな」

 「衝撃的な事だったから尚更な、てかそろそろ時間だし行くか」

 蓮がそう言って立ち上がると僕達もそれに続いた。

 ここでは必ず守らなければならない。

1: 研究者と警備員の人達に逆らってはいけない

2: 施設側が決めた流れで過ごす

3: 夜間時の外出は禁止

 この3つが主だが他にも沢山規則がある。これに逆らうと他よりも実験関係が増えたり、労働関係が増えたりする。過去に逃げ出そうとして死んだ者もいるくらいだ。だからそれ以降逆らおうとする人はいない。けど、どんなに辛くても皆といれるなら幸せだった。

 あの日までは…


 「そっちの研究はどうだ」

 「No.21に異変が、その他は問題ありません」

 「どうした」

 「No.21の細胞に変化が。恐らく●●●か▲▲に変化しているのかと」

 「ならば早急にNo.21を◾️◾️せよ」

 

 「それにしても今日は疲れたな」

 「本当にな」

 今日の実験が終わり直斗と部屋に戻る時だった。

 「今日はいつもより実験関係でする事が多かったな」

 「人数も多かったしね。俺達は後半に終わったから3人はもう戻ってるかもな」

 そう話しているうちに部屋に着いた。部屋に入ると蓮と沙耶香が居た。

 「あ、お帰り」

 蓮が僕達に言った。しかし僕達はある事に気づいた。

 「あれ、里香は?」

 「実はまだ帰ってきてないの。私と蓮より先に終わったのに居なくて」

 沙耶香の表情が少し暗かった。2人の行動が落ち着きがない。

 「大丈夫だって。何かあったら流石に上の人達が教えてくれるだろ」

 僕はそう言って2人を宥め、皆んなで里香を待った。

 だが、どれだけ待っても里香が帰ってくる事はなかった。

 「ねぇやっぱりおかしいよ」

 夕食が終わり就寝までの時間に沙耶香が言った。

 「里香がいなくなってもう2週間以上はたつんだよ。なのに研究者の人達は何も教えてくれないし、聞いても答えてくれないんだよ」

 全員が黙った。様子がおかしいのは明らかだったからだ。里香が居なくなった次の日、僕達は警備がとても厳しい部屋に移動させられた。

 「僕達も色んな人に聞き込みとかしたけど、なんの情報もないんだ」

 何も出来ないこの状況に皆がイラつき始め、4人の間に不穏な雰囲気が流れる。そんな中直斗が口を開いた。

 「じゃあ今夜里香を探しに行くか?」  『は?』

 「だってさ、実際に里香は帰ってきてないし、それについて情報も無し。だったら直接探すしかないだろ」

 「だとしても明らかな規則違反だし危ないだろ」

 直斗もそうだが蓮の言う事も正しい。それに探しに行く方法はあるのか。そんな事を考えてる僕を直斗は読み取ったかの様に言った。

 「方法はある。けどどちらにしろ危険な事だ。それでも俺はやる。お前らは?」

 「私もやる」

 すぐに沙耶香が答えた。

 「私は里香に会いたい」

 「そうだよな。なら俺もやる」

 沙耶香に続いて蓮も答えた。

 「僕もやるよ。里香は僕の幼馴染だ。探さないなんて事ないよ」

 早速僕達は準備に取り掛かった。


 「それにしても相変わらず直斗の行動力には驚かされるな」 『だね』

 「直斗は見た目とのギャップが凄いよね」 

 「お前ら一言余計だわ」

 直斗はこう言ってるが方法の内容は本当に凄かった。僕はそんな事を思いながら方法について思い出していた。

 『最初はこの部屋の監視カメラだ。このかめらは真下が死角になってるし、カメラは沢山あるがカメラ同士は映ってないから大丈夫だ。その時違和感を持たれない様に布団に入った様な形を作っていこう。それで俺がこの日の為にここから遠い位置に爆弾を仕掛けてる。それが起動したら外の警備員が移動するだろうからその間にこの鍵でドアを開けて探しに行く』

 『もう何も突っ込まねぇけど凄いわ、お前』

 ドンッ!! 遠くで大きい爆発音が鳴った。

 「何の音だ。急げ。」 一気に騒がしくなったが静かになった。

 「よし行くぞ」

 直斗がが鍵を開け僕達は急いで外に出た。

 事前に里香の居場所を予測していた。里香が居なくなったとしたら大きく関わっているのは研究者の人達だ。だから僕達は彼らが住む塔に向かい探し始めた。

 「何かあったか」

 「いやないな。この階はこの部屋で終わりだ。次に進もう」

 ガタッ 僕達が次に進もうとした時すぐ近くから音が鳴った。全員に緊張が走る中、僕は静かに部屋の外に出て辺りを見渡した。

 「何もない。けど隠れてるかもだから慎重に行こう」

 そう言って進もうとした時部屋から出てきた沙耶香が目を開いた。

 「里香!」 

 視線の先に里香がいた。すぐに全員が里香に駆け寄った。何処に居たのか、怪我はないか、聞きたい事が山程ある。

 「里香、無事だったんだな。よかった、今までど「やめて来ないで!」

 里香を見るとどうしてか僕達を怖がっている。すると里香は走って逃げてしまった。僕達は里香を追いかけた。

 追いかけていると施設内の広いグラウンドに出た。そこには沢山の警備員の人達が居た。

 「助けてください!」里香が彼らに助けを求めた。ドンッ その時後ろに居た3人が倒れていた。すぐに僕も倒れた。何の事か分からなかったが僕達は彼らに銃で撃たれた。倒れた僕達を横目に里香は彼らに感謝していた。

 「どうして」 

 微かに息のある蓮が言った。だがその問いに答える事もなく彼らは蓮をもう一度銃で撃って殺した。薄れていく意識の中、彼らと里香の会話が聞こえた。

 「大丈夫でしたか?」

 「はい。化け物の様な恐ろしいものから助けてくださってありがとうございました」

 化け物?僕は、僕達は人間ではないのかそんな思考を巡らせながら僕は意識を失った。


 ーニュースです。昨晩セラン研究所で四体のビデルが脱走をしようとしましたが、無事に防ぎました。また、一体のビデルが人間に戻るという研究が成功しました。ビデルはウイルスの感染によってとても危険な生物となりますが、研究に成功した事から更なる進歩が得られるとの事です。ー



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