第12話 もちもち

 後日改めてお隣にジャガイモのお裾分けをしたら、ニョッキになって返ってきた。有難い。


 仔モフェアリーたちはみんな少しずつ成長している。

 身体が一回り大きくなってもちもち感を増してきた。ごはん粒のようだったしっぽも頭と同じほどの大きさに近づき、ふんわりとしてますます可愛く。


 お互いにじゃれ合うとき、ふわふわのしっぽの感触を楽しむ様子を見られることがより多くなった。

「ぴぁ♡」

 イモコちゃんが茶色い頭をタラちゃんのしっぽに押し当てた。

「ぴぴゎ♡」

 タラちゃんは驚き、でも嬉しそうな声を出して飛び跳ねる。今度は赤い頭のタラちゃんがイモコちゃんのしっぽに顔をうずめた。 

「ぴゎぁ♡」


 基本的に2匹ずつ同じカゴに入れているが、1匹だけのセモリナちゃんは寂しくないよう、羊毛フェルトのマスコットをカゴに入れておき、ボクがしっぽを撫でてやる。


 モモちゃん、フジちゃんも産卵時に失ったしっぽを回復しつつあり、今のしっぽのサイズはウズラの卵くらい。

「本当にまた生えてくるんだなぁ」

と安心する反面、次にしっぽが成熟しないうちに「しっぽ切除」の正しい方法を学ぶ必要がある。また産卵したら里親探しが追いつかない。


 さて、里親探しを希瑠子の親戚家族に助けてもらえることになり、有り難いけれど頼りっきりではいけない。

 ボクはボクに出来ることをしなくては。


 SNSに投稿してみようと思う。

 それには仔モフェ紹介のための画像を新たに用意する必要がある。あのお宅で過ごした時とはいろいろと状況が変わっているから。


 まず迎えていただいて一匹減っている。

 アポーちゃんの頭はさらに赤みを増している。これ自体はべつに悪いことではなさそうだが、緑を主とした色合いを気に入ってこの子を欲しがる人が現れたら、トラブルになるかもしれない。


 チーちゃんとセモリナちゃんを区別しづらい件は、嬉しくない形で解消された。

 チーちゃんは他の子より小さく、それだけならいいが、何だか弱々しい。その差は徐々に開いて縮まらないのだ。


 一方、相方のいなくなったセモリナちゃんはエサを独占できる状態。そのぶんエサ入れの中身を減らし、一匹あたりのエサの量は均等になるよう気遣っているのに、何故?


 もしチーちゃんが病気だったら同じカゴのアポーちゃんにも移るかも……いや、もう移っているかもしれない。

 アポーちゃんをべつの箱に移す。

「ぴーぅー」

 アポーちゃんは離れがたそうに鳴く。

 チーちゃんは心配そうに見ている。


 この子たちにも、もふもふ欲を満たす物が必要だ。何かの素材にと保管していたフェルトマスコットの失敗作を思い出した。

 あれを二つにちぎろう。

 もふもふを破壊する飼い主を見せたくなくて、手芸スペースの隅でこっそり実行した。

ぶち、と微かな音を立てて、それはアポーちゃんとチーちゃんの玩具へと生まれ変わる。


 しばらくして体格差の原因が分かった。

 アポーちゃんは他の子より沢山食べる。それでチーちゃんの取り分が減りすぎていたのだ。

 必要な栄養素の量には個体差がある。アポーちゃんも決してわがままな悪い子ではないのだ。

 しかし沢山食べるアポーちゃんもとくに大きくなく、むしろ小さめなのが不思議だった。


 このごろモフェアリーの飼い方について配信を観て参考にすることが増えた。

 ありがたいことに、「もふ江」さんという人がとても参考になる情報を発信していた。

 「観察!! モフェアリーズR」にも出演したことがある。


 その中で、このような話があった。

 頭の色が変化する子やまだらの子は卵のなかにいたころ栄養不足ぎみと考えられ、ふつうの子と比べて死亡率が高い。生き残った子はすっかり新しい色に変わっている。

 

 アポーちゃんと同じだ!

 エサを惜しまず、注意深く環境を整えれば元気に生き延びる可能性は大いにあるそうだ。

 謎が解けて嬉しい反面、チーちゃんのみならずアポーちゃんも体が弱い状態なのが心配でもある。

 熟す途中の林檎のような、赤と淡い黄緑のまだら模様をただ個性として愛でることは出来ないと知ってしまい、寂しくもある。


 もふ江さん本人のサイトには、栄養豊かなエサの選び方や、しっぽ切除のやり方動画なども載っており、とても有意義だ。

 「しっぽ切除練習用モフェアリードール」を注文した。


 モモちゃんとフジちゃんは一生、子供たちは無事に里親に引き渡すまで、必ず守る。




(続く)

 




  

 

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モフェアリーVSタラモピザ 蘭野 裕 @yuu_caprice

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