転生

イグリアとリムリアに連れられた場所で、転生する先の種族を決めた後、また別の場所に向かっている。

イグリアが目の前に、リムリアが後ろについて、また薄暗い廊下を歩いていく。

またあの長い廊下を通るのかと正直うんざりとすらしていたが予想と反し、途中で先程歩いた場所とは別の方向を通って別の部屋に出た。


その部屋は先程いた場所と同じような石材の壁と、レンガ状の模様が彫られただけのシンプルな部屋だった。

ただ、これまでと違うのは、真正面に大きな黒い扉が見える事だ。

扉の隣にはア・イデアルがいて、扉に触れたり近くの壁を触ったりしているが、一体何をしているのか分からない。

扉の手前にはライリアが立っていて、ライリアは俺たちを見つけると深く一礼した。


「イデアル、後は任せる話だったな?」

「そうだ、もう下がっていい」

ア・イデアルとライリアが言葉を交わすと、イグリアとリムリアはそのまま立ち去ってしまった。

そしてライリアが俺に向かって話し始める。

「では…早速、転生を行いたいと思います」

…こう聞くと、なんだかドキドキしてきたな…

「とは言っても特に手順があるわけではなく…後ろの扉をくぐるだけなのですが」


そう言って、ライリアはア・イデアルの隣に移動すると扉の意匠が目に入る。

「くぐる前に言わなければならないことがありますので。良く聞いてください」

「言わなければならないこと?」

「はい。まずは…そうですね。この世界が実験で成り立っている事はご承知かと思います。私たちはこの世界をより良くするためにこうしたことを行っているわけですが」

確かに言われた。

「恐らくないかとは思いますが…一応…念の為に言っておくと。地形が大きくゆがんだり、一発で国が滅びる程度の行為は控えていただきたいのです。実験が全部ご破算になるので…」

「は?…え、そんなことできるんです?」

「…一応ですよ!念のためです。転生先が普通の一般家庭なので、私たちもないとは思ってますが…念のために」

「は、はあ…」

とんでもなく念押しされてる…一応、頭の片隅に入れておこう…


「次は、知識の提供の報酬の話ですが…」

「…私が話そう」

ア・イデアルが、扉の側から俺の目の前にまで歩いてきた。

「お待ちかねの報酬だが、さて…」

彼女の手が、俺の頬に触れた瞬間。久しぶりにぞわりとした感覚がして、何かのイメージが飛び込んできた。

それは、俺が”解析”と唱える瞬間と何かが消費された感覚だった。

「さあ、イメージ通りに。まずは自分自身にやってみろ」

…マジか…


言われたとおりに、イメージに沿って自分自身に向かって唱えた。

「解析」

すると、頭の中に情報が流れ込んでくる。


~~~~~~~~~~~~

解析結果

名前:(名前なし)

状態:霊体

使用可能魔術:解析魔術

~~~~~~~~~~~~


「私謹製の…解析魔術だ。お前の知識の中にあったラノベと呼ばれる小説群によく登場するスキルを再現してみた。この世界にはスキルはおろか、ステータスの概念すらないからな」

「…おお、なるほど。す、すごい」

「実験も兼ねている。この世界に相手をつまびらかに調べ上げる魔術があるのなら、どうなるのかと。実験というよりも報酬の方が理由としては大きいが」

「実験多いですね」

「…仕事は増えるが、いずれ減らせるなら誤差だと思ってやってるがね」

ア・イデアルとか神々にやったらどうなるのか非常に気になったが…何だか取り返しのつかない事になりそうな気配がするからやめておこう…


「これにはいくつか注意点がある。これは魔術だから魔力を用いるので、使い過ぎれば魔力不足に陥るだろう」

「それは…納得できるけど…魔術を習った事が無いのになぜ使えるんだ?」

「…それはお前がこれを使っていけばいずれ分かるだろう。考えつくものをすべて解析して…な」

…俺が、これを使っていって理解していくしかないってことか。


「あと、魔力を使うからこれを使った時に何かしている事はバレることがある。そして、これが一番大事だが…お前が知っている事とその発展しか解析できない」

「俺が知ってることと発展だけ!?」

「そうだ。面倒だが解析したければ知識を増やす事だ。というかそんなホイホイ知識を与えては後が面倒だろうが」

うう、まぁしょうがない。


「私からもう一つある。転生後、此処での知識を自身で判断できるまでここまでの記憶はほとんど封印される…そうだな、期限は12歳としよう。参考までに、この世界の青年年齢は16歳が主だが…それでいいかね?」

「問題ないです」

「では、そのようにしよう」

丁度元の世界で…中学生1年生ぐらいか、おそらく大丈夫だろう。


一連のやり取りを追えて、ライリアが口を開く。

「さて、以上で連絡事項は終わりますね。そろそろ扉をくぐる時間です」

そう声をかけた時、黒い扉が開く。

その扉の中は暗く、照明があっても外から光が差し込むこともなく、異質な雰囲気を醸し出していた。

「入ったら後ろを気にせずに、ずっと進んでください」

「わかりました」


そして俺が、扉の中に踏み入ると後ろから2人分の声が聞こえる。

「いってらっしゃい」

「良き人生を」

俺はチラッとそちらの方を見て、手を振り返しながらそのまま奥に歩いて行った。

そして、意識が遠くなっていった。

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実験奇想世界への異世界転生 ルーフェ @rufe-anpersand

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