種族と説明

神々と顔合わせして質問をした後だが…俺がやるべき事を簡単に話した後、神々はすぐに解散してそれぞれの色付きの扉に入っていった。

次に俺がやるべき事は、”転生する先の種族などを決める”らしい。それが終われば、転生に取り掛かれるとか。

そして改めて、俺の目の前に出てきたのはイグリアとリムリア、両方揃った時、最初に口を開いたのはイグリアだった。

「では、行こうか。青年」

俺はイグリアの後ろについて、リムリアは俺の後ろについて歩き出した。


――――――――—


先程から、神域だとは聞いているが、全体的に薄暗い印象が拭えない廊下をひたすらに歩いていると、時折イグリアが話しかけてくる。

例えば、「そちらの世界では、どういった生活をしていたのか?」など。

知識と経験の本はどこ行った?と思ったが、そういえば文字列をなぞらないと記憶は入ってこないだったなと、面倒と思いつつ色々話した。


特に病気の話をしたときには、後のリムリアが息をのんだような音を聞いた。

会話に入ってこない彼女が入ってきて心配されたので、今は痛くないので問題ないと返すと晴れない表情を浮かべていた。

心の底から心配されているのだろうという事が分かって、少しうれしかった。


一つ不満点を挙げるとすれば、イグリアの質問が何度も続くほど、この廊下がひたすらに長いこと。

一体、俺は何処へ向かっているんだ??


――――――――—


やっとの思いで着いた部屋はこれまでとは趣が異なり、建材は石材なのは変わらないが、ろくに装飾されているのがレンガ状に彫られている壁のみなので無機質感が増している。

「ここは…?」

「実験室の入り口といったところだ。とりあえずそこのテーブルにある椅子に掛けてくれ」

イグリアの言うとおりに座ると、テーブルの向かい側にイグリアとリムリアが座った。


「さて、先程も言った通りに転生先の種族を決めてもらおう…とはいっても基準が無いから選びづらいだろう。しかし私の方から知識を与えようにも…種族の知識は、刺激が強くてな。お前に教えられないのが残念でならない」

…あの本で教えてくれるわけじゃないんだ…というか刺激が強いって何?まぁ多分ゴネても教えてくれなさそうだし…いいか。


「ここに、簡単に外見と何に長けているかをまとめたリストがあるわ。これを見て、気になるのがあったら教えてね?」

そう言ってリムリアが差し出してきたのは、羊皮紙一枚に書かれた文章。

そこには種族名やどういった種族なのかが書いてある。

しかし、この”人物型”、”動物型”、”魂魄型”…とは何だろうか?

「あの、この分類はなんですか?」

「…そうだな、少し長くなるが…色々説明しようか」


――――――――—


イグリア曰く。

・その分類は、生物やニンゲンの派生種である魔族の分類などに使われる「生物三分論」と言われる理論。

・ニンゲンにしては素晴らしい理論なので神々も使っている。

・大まかに分けて3つの型があり、この世界のほぼ全ての生物はこの型ですべて分類できる。

・この型は2つ兼ねることがあるが、3つすべてを兼ねる事は無い。

・ニンゲンを要素に含むものは人物型、動物を要素に含むものは動物型、魂魄型は無機物や魂魄、神秘的な何かなどを要素に含むもので、魂魄型に関してはその他とほぼ同義らしい。

・魔族というのはニンゲンから派生した、新たなニンゲンに過ぎない。魔族は必ず人型であり、二つの型を持つ。

 例えば、普通のニンゲンは人物型のみである。獣人たちは人物型と動物型を兼ねる魔族で、エルフは人物型と魂魄型を兼ねる魔族であるらしい。


ついでに教えてくれたのだが、

・魔物は体内に魔石を作る動物の一種であり、瘴気に侵された動物が変異する。

・瘴気に侵されて魔物に変異する現象を魔物化という。

・型としては、ほぼ全ての魔物は動物型か魂魄型のどちらかか、もしくは両方である。

ということを教えてくれた。


――――――――—


長い。すごく長い。

「…理解したか?」

「頭がこんがらがってます」

「イグリアの説明長いのよね、わかるわよ」

リムリアが茶化すとイグリアはむっとして言い返す。

「なんだその言い方は…」

「うふふ、共感しただけよ。あら、時間がこんなに経っちゃってるわね」

「あー…ごほん、ついつい興が乗って、魔物の知識まで教えてしまった…そうだな、この知識はただ生きるなら必要ないかもしれん。ただ、冒険者や教授とかになるなら必要になるかもな」

「…うーん」

「とはいえ、生まれてすらいないのに人生の進路を決めてもどうせ崩れるだろうがね。さて、説明したからな。改めて、リストを見てみるといい」

「…分かった」


改めてみると、ラノベでよく見る種族ばかりだ。

例えば、”ニンゲンは人物型で器用貧乏だが、才能あふれる種族”と書かれていたりする。

ラノベでよく見るエルフは”エルフは人物型と魂魄型の魔族。木々と共に育ち繁栄を約束された、魔力を操るのに長ける種族”、恐らく猫型獣人なのであろう種族の説明は、”キャットは人物型と動物型の魔族。俊敏さなどの身体能力に長ける猫の血を持つ獣人種族”と説明されている。

そのほかにもドワーフ、マーメイド、ウルフ…など、沢山の種族名は俺の目を引いた。


俺は、俺は、特に別の所属ではなくニンゲンであり続けたいと思ったので、別の種族にはなる気はない。

ないが…とりあえずエルフだけは見てみたいと思った。

…エルフが綺麗とかよく聞くけど本当なのかなって思っただけの好奇心だ。

「俺は…ニンゲンが良いんですけど、一応…エルフ見ていいですか?」

「あら、わかったわ。一応ニンゲンのイメージも、エルフのイメージも両方出してみますわね。これが…人形なのだけれど」

そうしてリムリアが何処かからともなく、手を広げた程度の大きさの人形を二つ取り出した。


「こっちがニンゲンで、こっちがエルフ。もちろん見てわかると思うのだけれど、両方とも男ね」

先に取り出した方が、ニンゲンらしいが…正直自分たちとは似ても似つかないほど容姿が近い。

そのまま地球から転移してきても、容姿だけなら溶け込める。

後に取り出した方は、予想通り耳が長いエルフだった。それ以外は…俺のイメージだと金髪だったんだが、そうではなく緑髪だった。というか全体的に細くて凄い綺麗だ。

「やっぱりエルフって綺麗なんですね」

「あら~…嬉しいですわね。私の自慢の子供なのですわよ…うふふ」

嬉しそうで何より。

「でも、俺はニンゲンの方がいいです」

「あら、そうなの?残念ね…そうだ。ところで、なのだけれど」

「…なんでしょうか」


「性別…どうましょうか?変えたほうが良いのかしら?」

「え?…あ、いやいや!!男でいいです!!!」

「そうよねぇ…まぁ種族はこんなものでいいでしょうね」

「…さて、そろそろ出発の時間か。今頃準備が進むだろう」


そして俺たちは席を立った。

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