21話 訓練の成果

「あのなぁ、リオン、仲間になるかどうかわかってない相手に改造の話をしないでくれ」

「えぇ〜、こんなに凄い技術、もといシルバー君たちのことを話さないなんてもったいないですよ。」


 今回は仲間になってくれるというからいいけど普通は嫌がられて当然なんだぞこんなことしてるの。


「とりあえず、仲間になるのはいいけどしばらくは雑用メインになるぞ」

「わかってます。でもすぐに強くなって見せます!」

「それじゃ、私が鍛えてあげるから訓練室行くよ」

「「はい!」」


 アベルが三人を相手してくれている間に三人のことをギルドに報告しに行くか。

 仲間になると言っても、冒険者じゃない奴を連れて歩くとなるのいろいろと面倒な事になる。

 それならランクは低くても冒険者登録だけさせてサポートとして連れていると言った方がやりやすいだろう。


「なるほどぉ、わかりました。ではその御三方の血をこの紙に垂らしてください」

「「はい」」

 ギルドについて三人には早速冒険者登録をしてもらった。


「はい、登録が終わりましたよ。こちらが御三方の冒険者カードになります」

「ありがとうございます!」

「これでやれることが増える」

「うん!頑張ろうね!」


 アベルからの報告と今見た感じ三人は見事に性格が別れているようだ。

 こまたはそこそこ活発な様子で二人の姉として頑張っている様子。

 トロスは逆にアベルに近い面倒くさがり屋だが、いざと言う時にすごく動けるタイプ。

 コルキスは末っ子らしく二人にくっついているが物怖じせずに前に出るタイプ。


 あれ?こうやってあげてみるとみんな前に出すぎじゃね?

 まぁ、獣人の身体能力ならば特攻か遊撃が一番いいからいいんだけど……。

 よし、ちょうど三人いることだし風炎狼達に任せよう!


 あいつらならオールラウンドに動けるし、魔法での補助もできる。

 何より獣人の身体能力についていける可能性が高い。


 とりあえず三人は俺たちのパーティのサポーターとして登録されてるから登録が外されることはないし、そこそこ動きやすくなったと言っていいだろう。


「ということで、新しい仲間が増えたぞ!」

「おー」

「ちょっと!ケルちゃん達と組ませるってどういうことですかボクも組みたい!」

「ちょっと黙ってくれる?」


 ステータスを見てもまだまだ強いとは言えない三人は優先的に強くなってもらわないと行けない。

 魔人界は複雑だし、この先行くかもしれないダンジョンはとても広いところもあるだろう。

 そうなれば必然的に別れて行動することも多くなるだろう。

 そんな時に助けてくださいと言ってるだけでは何も解決しない。


 幸い、こっちは剣鬼アベルに行雲流水を使える俺、それにたくさんの訓練相手もいるんだ、すぐに追いつくだろう。


 というわけで研究所全体を巻き込んだ戦闘訓練が始まった。

「剣の基本は間合い、そしてそれを維持するためのフットワーク。ほらそこ足を下ろす時に重力に任せ切りにしない。」

 はい、何故か巻き込まれましたブランクです。

 確かに剣を教えてくれとは言ったけど今だとは思わなかった。

 案の定アベルの中では決定していたことらしく拒否権はなかった。


「行雲流水はどこまでいっても魔力回路に流れる力の操作でしかない、そこを忘れずに」

「ほい」

「あぶね!ってアベルお前もう遠隔操作ワイヤレス掴んだのかよ!」

「うん、前から使ってた氷剣鬼こおりおにと近い感覚だしそこまで難しくなかった」

「この天才め」


「やぁぁぁぁぁぁ!」

「グギャ!」

 ここ二ヶ月で基礎は大方叩き込んだため普通のゴブリン程度なら負ける事はないと言えるまでになった。

 数値的に言えば三人とも50前後だが、アベル仕込みの剣と間合い管理と、行雲流水による魔力操作でかなりの強さを見せてくれている。


 そしてもうひとつ

「なかなかやるねアダプト」

 そうアダプトもアベルとやり合えるまでに成長したのだ。

 

 ずっと魔法が使えない事に悩んでいたアダプトの相談を受けて色々調べてみたところアダプトは魔法が使えないことがわかった。

 魔力回路もあるし、普通のスライムは魔法が使えるからいけると思って訓練させていたからかなり驚いた。


 魔法が使えないことにショックを受けていたアダプトだったがすぐに持ち直して別の訓練を始めた。

 それは体の硬化と変形だ。

 前からできたこれらを極めて自分の体を武器にして戦う道を選んだらしい。


 そしてそのまま訓練を続けたアダプトは今や剣や弓、ハンマーまでなんでもござれの万能生物になっていた。


「それじゃ、みんな準備はいいな」

「ん」

「頑張りますよ!」

「訓練の成果を見せる」

「やってやるー!」


 最終試練、と俺たちの訓練の成果を見るために今日あいつを呼び出す。

 俺たちの目の前に現れたのは黒い巨大馬に間違ったゴブリンナイト。

 そう、俺たちがギリギリで倒したあいつだ。


 今ここにいるのは前に戦った奴以外にもアベルと獣人達、アダプトがいる。

 そう簡単に負けることはない。


 初めに動いたのはシルバー。

 足にためた魔力を使い正面から突っ込む。

 それにより馬は倒せたが当たり前のように飛んで回避したゴブリンナイトがシルバーのアタマに向けて剣を振るう。


 しかし、金属同士がぶつかり合って音を出して弾かれた剣とシルバーが口に溜めていた火炎弾を放ったことでゴブリンナイトは後方へ吹き飛んだ。

 そのに待機していたのは銀子。

 得意の火炎砲でゴブリンナイトの手を貫くとそのまま剣を吹き飛ばす。


 すぐさま剣を拾おうとするゴブリンナイトに斬りかかったのがアベルだ。

 さすがのゴブリンナイトも剣がない上体で剣鬼の相手は厳しいらしく俺たちとの戦いで見せなかった魔法を使う。

 ゴブリンナイトの左手から黒い渦のようなものが出たと思ったらアベルが体勢を崩してしまいゴブリンナイトに殴られ吹き飛ばされてしまう。


 魔法!

 前見た時には発動しなかったそれを使ったってことは……。

 ゴブリンナイトの腰が低くなり訓練室に広がる空気が重くなっていく。

 本気ってことか。


 大砲式火炎弾を目くらましにしながら俺が突っ込むと拳でぶち破ったゴブリンナイトがそのままの勢いで突っ込んでくる。

 ゴブリンナイトが持っていた剣同士をぶつけ合いながら時間を稼ぐと前ゴブリンナイトを打ち倒した必殺技の準備が終わる。


 前以上の威力とスピードをもったシルバーがゴブリンナイトに噛み付こうとするが当たり前のように避けられてしまい俺にぶつかり吹き飛んでしまう。


 しかし、体が中に浮いている状態のゴブリンナイトに対して炎斬撃が放たれる。

 さすがに数が多かったらしく避けきれなかったゴブリンナイトが鬱陶しいそうにしながら地面に落ちる。


 すぐさま斬りかかったアベルに気を取られ足元に近ずいていた銀子に火炎砲を食らってしまいゴブリンナイトがバランスを崩す。


 しかし、黒い玉を爆発させアベルと銀子を吹き飛ばす。

 爆発が広がり切ると同時に切り込んだ獣人三人による同時に攻撃を交わしながら俺の方に突っ込んできたゴブリンナイトを何とかやり過ごす。


 何とか切りあっていると俺の服に隠れていたアダプトがゴブリンナイトにまとわりつき首を絞めていく。

 しかし、すぐさま黒い渦で吸い込まれ吹き飛ばされてしまう。


 なるほど、あの黒い魔法は空間魔法に近いタイプのものっぽいな。

 渦の吸い込みと爆発による吹き飛ばしかなり厄介だけど付け入る隙もあるはずだ。


 さすがのゴブリンナイトも疲れてきたようで方で息をするようになってきている。

 そのすきに俺とアベルが二人で突っ込み動きを止める。


 アベルの氷で足を凍らされ俺のツタで腕を縛られたゴブリンナイトに獣人三人による剣が振るわれる。

 ゴブリンナイトがいくら固くとも必ず生身の部分はある。

 さらにここまで攻撃を食らわせ続ければ多少かけた部分も出てくるというもの。


 がら空きになった首元に吸い込まれた三本の剣によってゴブリンナイトの首がとび訓練は終了した。 

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

原作なんてぶっ壊せ!原作最悪の男ブランクに転生したけど諦めずに原作ブレイクを目指す。 カラーコンタクト @K2331058

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ