第7話 希望
「…返事書かないと」
目の前で起こっている事が現実だと理解し始めた頃、私の頭の中はそんな思考回路になっていた。
「でも…火星人の事を教えてってどうしたら良いんだろう」
私は火星人でも何でもない。
そもそも火星人がいるのかも知らない。
一体火星人って何なんだろう…。
もちろんだけど、考えても答えは出ない。
「私なりの答えを作るってことか…」
とにかく、嘘でも何でも良いから美月に火星人と信じ込ませれば良いのだ。
「未来の事を言うとか…?あ、でも言っちゃだめなんだっけ」
手紙を書くときに伝えられたルールを思い出す。
確か、現在の状況は言えない。
でも、
「でも…美月を信じ込ませるには、別に本当の事じゃなくていいのか。なら…」
ガコンッ。
手紙が底へと落ちる音が響いた。
「よし、これで美月に届くはず」
空になった手を握り締めて、誰かに言い聞かせるように口にした。
結局手紙には適当に、それっぽい十年後の未来の話を書いた。
そして、最後に
『地球の情報と言いましたが、人間が抱える悩みを知りたいのです。なので、あなたの抱えている悩みを私に教えて頂けませんか?』
と添えて。
これで美月の悩みを聞き出せるかもしれない。
そして分かるかもしれない。
美月がいなくなった、本当の訳が。
本と本の隙間から差し込む一筋の温かい光は、まるで私を照らすスポットライトのようだった。
星の手紙 日香莉 @Hikari_c
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。星の手紙の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます