第30話
*
「いいえ、オーウェン様。私がソファで寝ます」
「女性をそんなところで寝かせるわけにはいかない。君が使ってくれ」
フェルナンドの策略によって同室にされてしまったため、一つしかないベッドをどちらが使うか論争がかれこれ三十分ほど続いている。
お互い頑固な性格同士、まったく引こうとしないので決着がつかない。
「でしたら、くじ引きで決めましょう」
「断る。ベッドは君だ」
言うなりオーウェンはスタスタとソファに行ってしまう。服の裾を掴んで阻止しようとしたが、ルティはそのままズルズルと引っ張られるだけになった。
ソファに到着すると、オーウェンはルティの手を引き剥がし、腕組みしながら寝そべって目をつぶってしまう。
「ダメですってば! 疲れが取れませんよ。お願いだからオーウェン様、ベッドを使ってください」
諦めきれずに揺すっていると、オーウェンは目を開けるなり手を伸ばしてルティを近くに引き寄せた。かと思うと、次の瞬間にはルティは持ち上げられてベッドまで運ばれている。
「わっ……!」
「いいから、こっちを使ってくれ!」
ベッドに下ろされたとわかりルティは急いで半身を起こそうとしたが、オーウェンが上からのしかかってきた。ものすごく間近に空色の瞳が見える。
「……これ以上押し問答する気はない。ここで寝ないなら、君はわたしになにをされてもかまわないととらえるぞ……それとも一緒に寝るか?」
真剣な表情で聞かれて、ルティはぱああと表情を明るくした。
「それはいい案ですね! こんなにベッドも広いですし、ボーノを真ん中にして一緒に寝れば問題な――」
「バカか! 問題しかない!!」
オーウェンはベッドの上にいたボーノを掴むと、ルティの顔にぼふっと押し付けて、素早く掛け布団を上から被せる。
「いいか、ここから出たら明日の食事は全部抜きだからな。ボーノ、ベッドから主人が出ないように見張っておけ!」
『ぷぷん?』
「なにがダメなんですか? そこまで問題があるようには――」
「こっちに来たら承知しないからな! おやすみ!」
乱暴にランプを消されてしまい、ルティは結局なにがいけなかったのかわからないまま、「おやすみなさい」と呟きながらボーノの横腹に顔をうずめた。
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