激安霊感商法!(13)
確かに、だ。彼等が作ってきた作品はこの腐った目から見ても、素人が趣味で焼きましたと言えるようなものではない。完全に骨董として使えるもの、芸術として扱えるものだ。
ただ彼としては運が悪かった、だけなのかもしれない。悲しいことに、それだけだった。彼が認められていれば、犯罪に手を染めることもないのかもしれない。
彼の話は続いていく。
「そして、もしチャンスがあるのであれば……と。気付いたらお互いが出した答えが窃盗だった。資産家なら別に少し盗られても問題ないと考えて……それで……」
近くにいた刑事が話をまとめていく。
「話からして、それで偽物だとも気付かず、手に入れて。処分方法に困った挙句、霊感商法にして……それでまた儲かりはしなかったものの、客の笑顔に見とれて、調達がやめられなくなった、と」
女は「その通りです」と口にして、お縄になった。
彼等の客によって、パトカーに乗せられていく。穏やかな様子で見守られていた。
きっと彼等ならやり直せる。信じている。人生、遅いなんてことはない。相当人を傷付けたり、殺したりしていないのであれば、取返しがつく。彼等は間違いなく罪を償える人間だと僕は感じていた。
警察、刑務所は反省させるプロだ。後はその人達にお任せするとしよう。
去っていた人達をじっと見ていると、突如しおらが頬を引っ張ってきた。
「ちょっとちょっとー! 他の人に見とれてない」
「ちょっ、頬がもげる! ちょっ、やめてやめて!」
そんな雰囲気に一人、寂しく笑っている人が残っていた。朝子さん、だ。しおらは朝子さんの何だかおかしな様子が気になって、その手が止まっていた。しおらの声は辺りに響いていく。
「……ま、まぁ……今回は……」
「笑っちゃうよね。またまた騙されちゃったみたい……ああん……」
「そこは朝子さんが優しいからってことで」
「ありがとね。ああん、でも迷惑掛けちゃったなぁ。結局、事件を何とかしようって思ってたのに、逆に事件に巻き込ませちゃって……前代未聞の大馬鹿ものよね……」
「仕方ないですって……それ悔やむより早く新しいバイト先とか就職先決めましょうって……手伝ってあげますから」
「あ……ありがとう」
二人がまた職探しをしていくとのことで励ましは終わっていく。
僕はその場で立ち止まって考える。やはりやっていることが善行だとしても、犯罪はダメだと思う。いつか悪いことをやっていたら罪悪感が自身を責め立てて、後で後悔してしまう。最後になって「自分はなんてことをやってたんだ」といい人であったら、悩んでしまう。
それを止めるために僕はもう一度、探偵になるしかないのか。
自画自賛する訳ではないが、僕はそれを見極める目を持っているような気がする。本当にいい人なのか、悪い人なのか。疑って、それで真偽を明らかにできそうな気がする。
走って、元気に家へと帰っていく。
その間に石につまづいて、またもスッ転んだ。視界がまたまた暗転して……。
「おおい、大丈夫?」
そのせいでまたメアとユーカリさんに出会うことができた。二人がベッドの上でこちらを覗き込んでいる。
今回はもう謎も残っていないはず。どうやって戻るべきなのか。いや、今は考えずに二人との話を楽しむのも良い気がした。
色々邪魔されたティータイムの再開だ。今回は三人で盛り上がっていく。
「あ、ユーカリさん、取り敢えず行くとこなきゃ、わたしの家にいてよ。やっぱ一人は怖いし!」
「いいの? 私、幽霊だけど」
「いいっていいって! 話し相手がいてくれれば、不安がないし!」
「分かったわ」
その中で僕の方にも話題が向いてくる。
「そうだ! さっき私が説明してる間に消えちゃったよね」
「ご、ごめん」
「しょうがないよ。現実世界に戻っちゃったのかな……? 何か悩んでいることは無くなったみたいで良かったけど」
「うん、一応事件は解決したし」
「良かったぁ」
そんな僕のことを考慮して、彼女は語り出した。
「で、何で罪を見逃しちゃいけないのかってことだよね」
「そうそう」
「だって、やっぱ正しいことをして全てをクリアしている人がいるってのに、やっぱ悪いことしてクリアしているのって取り締まらなきゃ、ダメじゃないかって思うんだよね」
「だな」
やっぱ、悪人に対して反省してもらう形かな、と思ったのだが。少し違った。
「後はその悪いことってやっぱ、悪いことに利用されちゃう気もするんだよね。悪いことをしてると、悪い仲間が集まってきちゃう。そして、その悪い仲間がその人を利用しようとするんじゃないかな……って。悪いことをしてでも世の中を正そうってしている人を守るためにも早いとこ、悪いことをやめさせた方がいいと思う……そうでないと、最後に後悔する形になっちゃうから……そんな人の姿、見たくないからさ」
「……ありがとう」
更なる考えを貰ったところで意思は強固になる。
やはり、あの特殊捜査部を壊滅させるべき。あの人達がいい人ならば、後で後悔する形になるかもしれないし。悪い人達であれば、とんでもないことが起きてしまう予感しかしない。
実際に何が起こるか分かる程、想像力はないのだけれども。
何が起こるか、と言えば不安なことがあった。
それを知るためにまた呼び出されたのかもしれない、と。
「あっ、そうだ。メア、結局あの女の子のことはどうなったの?」
「ああ……調べてみたって言うか、話によると偉いとこの娘さんみたいね。こっからちょっと遠いところに裁判所があるんだけど、そこに近いところ……」
「裁判所?」
「魔物狩り専用の裁判所。魔物か人間か。見極めるための裁判所があるんだよ……人型の魔物もいるから……そこで判断するんだ」
「へぇ……でも、その子が何で」
ハッとして、嫌な未来を想像してしまった。しかし、そうとは限らないと想像を吹き飛ばす。
ユーカリさんは何も考えていないようで悩んだまま。
「何でそんな偉いとこの御嬢様がこんなふざけたことを……ね」
「さぁ? でも大丈夫!」
「ん?」
何だか少し寒くなってきた。冷房か氷魔法の使い過ぎかと思って、きょろきょろ辺りを見回してみると、メアの足元に何かが置いてあった。
彼女の手はそちらへと向かっていく。
「さっきユーカリさんがいない時に、訪問販売があったんだけどさ! この壺で幽霊やイタズラっ子はいなくなるってさ! そういう封印が施されてるみたいだから!」
ユーカリさんはそれをじっと見て、疑っている。
「それって本当に意味があるの? 魔法があるとか分かんないけど」
「わたしにも分かんないけど、何か凄いの感じるよ! そうだ! サインくん! これ、ちゃんと効果があるか、確かめてくれ……あれ?」
僕は一心不乱に逃げ出していた。もう霊感商法とかの面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。
「待ってぇえええええ!」
「ちょっとちょっと何処に行くの!?」
取り敢えず、幽霊と魔法使いに追われるという何とも情けない探偵の姿を近隣住民にお見せすることになったのであった。
「もう! もう! 霊感商法には首を突っ込まんぞ!」
推理クイズと虚構世界の大ヒント 夜野 舞斗 @okoshino
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