第8話 vsオーク
森の中腹に来た頃合いだろうか。
ちらほらとゴブリンを発見した。
もしかしたら『スタンピート』の可能性があるかもしれない。
『スタンピート』とは、モンスターが群れで動き。住処を求めて他のモンスターの縄張りや人間の村を襲う前兆のこと。
スタンピートの条件は、群れの長を中心に50体以上いる場合に起こると一般的に言われているが。強力なモンスターが徒党を組んで襲うケースもあるらしく。一概にはいえない。
今回もゴブリンをまとめる強力なモンスターがいる可能性が高い。
俺は偵察とパーティーの無事を確認するため。ゴブリンの後を追う。
着いたのは森の中を流れる川辺。
ゴブリンたちが何やら群がっている。
様子を見るとあのパーティーが袋叩きにあっていた。
そして、それを痛ぶっているのは…。
「あれは、『オーク』か!?なぜこんなところにいる?」
『オーク』。
知能が低く、力の強いモンスター。
体長は三メートルあり、大木の幹を武器にしているDランクのモンスター。
それにあのオークは、彼らを食べずに弄んでいるように見える。
もしかしたら知能があるのかもしれない。
明らかな格上。
幸いにもまだ見つかっていない。
彼らには悪いがこのまま帰ってギルドへ報告して、ランクの高い冒険者に任せるのが得策だろう。
しかし・・・。
「いやだーーー!!!死にたくない死にたくない!!!!!」
「たすけてくれーーー!!!俺には娘がいるんだ!!!やめてくれ!!!」
「殺さないでくれ!!!命だけは命だけはーーー!!!」
彼らの必死な叫びを聞き入れるわけもなく。
オークとゴブリンたちは彼らを見下し、気色の悪い声で高らかに笑っている。
・・・逃げるのか?
・・・助けを求めてる人がいるのにか?
相手は格上。
さらにはゴブリンもさっきの倍はいる。
行けば自殺するのと変わらない。
行くのはバカがやることだ。
死にたくはない・・・。
でも、俺がこれから相手にしようとするのはあのモンスターよりも遥かに強い敵。
ここで彼らを救えなければフレアを守るだなんて無理に決まっている!
俺の憧れた英雄は絶対逃げない!
英雄ならこの状況をみて静観しているわけがない!
迷いを断ち切れ!ロイセーレン!
彼らを・・・救うんだ!
奴らの群れに向かって手元の石で牽制する。
すると、気付いたゴブリンが数匹ずつ離れていく。
地味だがこれで数を少しでも減らしていく。
まだ20匹近いゴブリンとオークが残っているが、バンダナリーダーのパーティーがやられたら元も子もない。
あとは、攻めるしかない。
うおおおおおっ!!!!!
一呼吸おいて、俺は決死の覚悟で突撃した。
ゴブリンたちが気付き戦闘態勢に入る。
バンダナリーダーが異変に気付き。
「バカやろう!なんでここへきたんだ!?早く逃げろ!」
俺を逃げるようにはからう。
「お前ら残して逃げられるか!俺は助けを求めてる人を見捨てられるほど非情にはなれないんだよ!」
「おまえ…」
バンダナリーダーたちは丸腰のまま、縄で縛られている。
あの程度の縄ならナイフで切るか、スキルで触れれば解除も容易だろう。
あとは無事に逃げられるかどうかだ。
なんとかして活路を見出さないと。
ゴブリンがゾロゾロと近寄ってくる。
だが、オークがそれを静止して自ら前に出てきた。
ゴブリンたちは邪魔にならないようにオークから離れつつも、俺の周囲を囲み出した。
くそっ!このままやられてなるものか!
一番近いゴブリンから短剣で切り裂き、襲ってきたゴブリンも倒す。
グオオオオオ!!!!!
オークは突然吠え、全速力で向かってきた。
正直一番相手にしたくないのだが、
やるしかない!
オークのもつ大木をかろうじて回避し、
短剣の鋭さを最大になるよう干渉してオークの足元へ切り込む。
・・・ウソ、だろ?!
刃が通らない。
それもわずかなかすり傷を与えた程度。
一瞬の驚いていた隙をつかれオークの渾身の攻撃をくらって体が吹っ飛ぶ。
ゴホッゴホッ!!!
川辺の壁づたいまで飛ばされた。
ギリギリで防具の硬さを高めたが、想像以上の力だ。
吐血がひどい。
内臓のどこかは潰れているかもしれない。
骨も二、三本もってかれたか。
クソ!このままでは全員死ぬ。
なんとかしないと…。
この間にもゴブリンが攻めてきては撃退しているが、一向に数が減らない。
・・・一か八かだが…やってやる。
おそらくオークを倒せばゴブリンたちも逃げる可能性がある。
だったらオークを相手にする以外はない。
体力もあまりないため、短期決戦だ…。
全力でオークに立ち向かう!
オークはそのパワーで叩き潰そうと大木を振り回しては叩き続ける。
数回見た程度だが、オークの攻撃も比較的わかりやすい単純なゴリ押しだけ。
読めてしまえばこちらのものだ!
振り回す大木を掻い潜り。
オークの左足に手を触れてスキルを使う。
グガアアアアア!!!!!
オークの足がストンと折れた。
スキルで足を腐食させて自分の重さを耐えられないように干渉した。
痛がるオークの隙を逃さず。
右足も腐食させる。
オークは前のめりに倒れ込んだ。
暴れるオークをかわし、首に触れる。
グアアアアアッ!!!!!
声を荒げたオークはそのまま倒れて動かなくなった。
「やりやがったな!おい!」
バンダナリーダーが歓喜の声をあげ仲間たちも泣いて喜んでいる。
様子を見たゴブリンたちは、ざわめき出して一目散に逃げていった。
・・・これは勝ったのか?
まだオークには息があるかもしれない…。
トドメを…刺さないと…。
俺は全身から何かが飛び散っていくのを感じた。どうやら血を吹き出したようだ。
・・・そうか。格上相手にスキルを使うと、肉体が耐えきれないらしい。
彼らが何か言ってる気がするが、まったく聞こえない。ふらふらするし、視界と意識も朦朧としている。
そうだ、紐を解かないと…。
スキルは、ゴホッ、無理だから…せめ、て…ナイフで…。
彼らのところへ歩いていくが、その場で力尽きてしまった。
暗い暗い闇の中に意識が吸い込まれていくようだった。
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