第7話 クエスト

「確かこのあたりなはずだが...」


クエストのため街から少し離れた草原にいる。

街では罠や魔道具、ポーションなど念には念を入れて準備をしてきたので問題ない。


クエストの手順として、まずは薬草採取し、

それから“ドラット”を討伐。


薬草採取は手渡された絵を参考に探すが、一向に見当たらない。

何とか自力で見つけたかったが…。

クエスト達成が優先だからな。


俺はスキル、『鑑定』を使って探し回る。

すると、大量の薬草が見つかった。


「うおぉ!こんなにあったのか!初めから使っておくべきだったな」


俺は手当たり次第に薬草を摘んでいく。

どうやら“セラピソウ”という名前らしい。

ここに生えているのはすべて下級のもの。


あわよくば中級の薬草もあったらと期待したのだが、

そんなに甘くないようだ。


依頼された20本以上の薬草を回収し終え、

次はドラットの討伐場所に移動する。


ここは草原近くの森。

茂みが多く、視界も悪い。

それにこのあたりは土も掘りやすい、泥地。

どうやらここで間違いないみたいだ。


しばらく茂みをかきわけて警戒していると。


「おっと、おでましだな」


ドラットが10匹以上集まって泥遊びをしている。

まだ気づかれていない。


この距離ならいけるか?


俺は地面に触れる。

すると、ドラットの周りに沼地が広がりドラットたちが次々と沈み込んでいく。


スキルで泥沼が深くなるように干渉した。

ドラットたちは気づくことなくズブズブと沈み込んで顔も見えなくなった。


目標数の10匹以上は確認できたので。

俺はスキルを解除する。


さっきの沼に近づくと。

ドラットが茂みから現れた。


どうやらここは縄張りだったらしい。


俺は腰にぶら下げた短剣を構える…。


・・・今だ!


俺は駆け寄りドラットを狩る。


危険と察知したものは逃げ、他は戦闘態勢に入る。


数は七匹か。

倒せない相手ではない。


ドラットたちは飛びかかる。

短剣でいなしつつ、一匹を絶命させる。


土魔法で応戦してくるが、

なんとかかわしきれた。


次の魔法が来る前に二匹目を倒す。


しかし、一匹から放たれた魔法が直撃する。

運良く防具にあたったことで致命は逃れたがやはり数が多いと手こずる。


「さて、ここらでお開きとしようか」


地面に手を触れて奴らの足元を沼地に変えて、すぐに泥を固めた。


ドラットの4本足は身動き取れずにその場から動くこともできない。


奴らは魔法を放ってくるが、打ってくる場所がわかるので避けるのは容易い。


一匹ずつ、確実に仕留めた。


よし。クエスト完了だな、あとは…。


俺は沈み込んだドラットたちを回収するため、泥沼を浅めにしてひっぱりあげる。


傷もないから解体して持ってけばきっと高くつくだろうな。


俺は討伐した証明のためのドラットの尾てい骨を集め、解体を済ませた。


「さて、終わったし。ここらで休憩にしておくか」


木陰で休憩している間。

俺はスキルの副作用で苦しんだが、ことなきを得て、水を飲みながら涼んでいた。


ぼんやりとあたりを見渡すと。

金属音が響いてきた。


誰かが戦闘しているようだ。


悟られないように見に行くと、モンスターを討伐している人がいた。


数は三人。パーティーだろうか?

モンスターはよく見えないが、ドラットではないようだ。


様子を見ていると。

パーティーの一人がやられたみたいだ

二人が駆け寄っている。


モンスターの方は、お構いなしに突撃してパーティーに襲いかかってる。


これ、マズいのでは?


モンスターが強敵である可能性もある。

俺には関係ないと切り捨てるのは簡単だ。


でも、俺は強くならないといけない。


なら、やることは一つだろう。

憧れた英雄のように…助けるのだ!


俺は防具に触れ、軽量化する。

その場から全力で彼らの元に向かう。


距離も縮まり、鑑定できるところまで近づいた。


モンスターの名は、ゴブリン。

肌が緑色で頭にツノがある。Eランクのモンスター。

棍棒を持ってパーティーを襲っているようだ。


俺は防具干渉を解除して、短剣に干渉。

全力でゴブリンたちに短剣を投げた。


一匹の頭に貫通させると。

ゴブリンたちはウロウロとあたりを探っている。


俺は撹乱用の煙幕弾を投げて発動させる。

目眩しに成功。まずはパーティーの安全確保に動く。


「大丈夫か!?」


俺は声を荒げバンダナつけた男に安否を尋ねた。


「あぁ、致命傷じゃないが。平気だ。アンタは?」


「そんなことよりも!こいつらの相手は俺がする!お前たちは体勢を整えたら、加勢してくれ!」


「わかった!すまんが頼む!」


リーダーらしいバンダナ男と仲間の女魔術師は怪我をした仲間を連れてその場を離れる。


「さて、初戦闘だな。ゴブリン!」


ケケケケケケッ!


きみの悪い声を荒げて。

ゴブリンたちは警戒している。


数は15匹。群れなのだろうか?

とにかく囲まれたら厄介だ。

奴らは短剣を使おうとするが、

突き刺さったままなので抜けないようだ。


先手を打つため、俺は地面に手を触れ、

ゴブリンたちの足元を沼地に変え、すぐに固めた。


奴らは驚いて足元を叩き割り外に飛び出した。

クソ!固まっていても破られたら意味がない!


すかさず棍棒を持ったゴブリンに狙いを定め、持っていたサブのナイフで頭を突き刺し倒す。


倒したゴブリンの棍棒を手に倒しにいこうとしたが、


「重っ!」


思ったよりも重い。

あの小さな体のどこにそんな力あるんだと、気になったがまずは討伐優先。


棍棒をスキルで軽くし、振り回すたびに重量を戻す。

一匹、二匹・・・半分まで倒した。


スキルの副作用が始まったが止めるわけにはいかない!ここで全滅させる!


「待たせてすまない!加勢する!」


さっきのパーティーのリーダーが戻ってきた。どうやら無事に手当を済ませたようだ。


「奴らを散り散りにしたから、逃さないようにしてくれ!住処に戻られたら厄介だ!」


「わかった!いくぞお前ら!やられた仮は倍にして返すんだ!」


仲間の二人も覇気をあげてゴブリンに向かっていく。

 

逃げ惑うゴブリンを逃さないために、適切な距離で戦い。次々と倒している。

臨機応変にゴブリンたちの動きを捉えて、確実に仕留める。


これがパーティーの連携か。


俺も彼らのように連携ができる仲間をつくりたいものだ。


残り二匹のうち一匹を倒す。

残ったゴブリンは一目散に森の奥へ逃げる。


俺も全力で追おうとしたが連続でスキルを使いすぎたため。

反動で体が動かない。

酷い頭痛にめまい、動悸も激しい。


・・・しまった、使いすぎたか…。


「おいどうした!逃げちまうぞ!」


「悪い…、俺はしばらく動けない…。お前らで、仕留めてくれ」


「わかった、そこで休んでろ!必ず礼はさせてもらうからな!…いくぞ!」


彼らはゴブリンの後を追う。


一人その場に取り残された俺は、苦しさを必死にこらえる。

ここまできて、リタイアしてなるものか…!


無事に帰ってクエスト達成の報告をしないと…。

アミさんに合わせる顔がない。


しばらく寝転がり痛みが引くのを待っていたところだった。


ドカーーーン!!!


大きな地響きが聞こえた。

方角はあのパーティーが向かったところ。


何かあったのだろうか?


心配になった俺はなんとか立ち上がり、彼らの後を追う。



森に入ってからどれほど時間が経ったのだろうか?

一歩、一歩痛みが和らいでいくのを感じながら進む。


森が開けてきたと思い、木陰から状況を確認する。

そこは、大木が次々と薙ぎ倒されて真っ二つに割れていた。


(いったい何が起こっているんだ!?)


俺はあたりを警戒する。

モンスターが暴れた後なのか?

それとも突発的な災害か?


木の割れ方を見るにこれはモンスターによる被害で間違いはなさそうだ。


だが、この付近は初心者モンスターが多く生息しているだけで。

大木を倒すほどの強力なモンスターがいるとは思えない…。


だが例外はなにごとにも存在する。


ふと、木の枝に何かがぶら下がっているのが気になった。


あれは…、あのパーティーのリーダーのバンダナ!


どうやらモンスターに襲撃されたようだ。


(クソ!いったい何があったというんだ!)


バンダナを拾い上げてさらに森の奥へ進むことに決めた。

彼らが生きていることを願って歩き続けた。

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