第6話 冒険者ギルド

「ついたぞ!冒険者にとって始まりの街…、

“フィオネスト”に!」


一日半かけてやっと辿り着いた。


ここ、“フィオネスト”という街は。

冒険者になりたい人が最初に来る街だ。

どうしてかというと、ここの冒険者ギルドでしか冒険者になることができないという。

独占的な特権があるからだ。


他の街でも冒険者登録できるようにして欲しいのだが、この街は各方面に出入りするような土地柄であるため。

流通から何までこの街に集まってくるため、仕方ないのかもしれない。


でも冒険者になりたいならここに来れば武器や防具、ポーションなど一式揃う便利な街なのだ。


街もとても賑わっている。

この街は中立国の“セントラル”という管理下にあるため。

人族以外にも多くの多種族がいる。

いろんな種族がいて見ていて新鮮だ。


おっと、いけない。

寄り道ばかりしてると日が暮れそうだ。

早いとこ冒険者ギルドに行こう。


冒険者ギルドは街の目玉。

街の中央にあるデカい建物がギルドであると街の人に教えてもらい無事についた。


そこにはモンスターの“ミノタウロス”や、

“ベヒモス”、“ワイバーン”の頭蓋があちこちに並べられている。

そしててっぺんには“ドラゴン”の全身の骨がデカデカと見せしめのように飾られていた。


きっとこれだけの強敵を倒したんだという実績。いや力量を表しているのかもしれない。

骨になったモンスターたちはすべてAランク超えの危険モンスター。

ドラゴンに至ってはSランクだ。


これだけでもギルドにいる冒険者の自慢になるだろう。


だが、俺はそんなモンスターよりもはるかに強い敵と戦うんだ。


英雄は災厄のモンスターと戦い、打ち破っている。

俺もそれだけの強さを身につけるんだ。

フレアのためにも。


冒険者ギルドに入る。

室内は空気が暑苦しく、換気が追い付いていないようだ。

あたりには、勇ましい男、無骨な鎧を纏うもの、とんがり帽子が目立つ魔女、昼から酒を飲んで暴れているもの、パーティーで談笑しているもの。とにかく騒がしい。


一旦出直そうかと思ったが、入った以上引き下がるのは違うと考え直して受付を探す。


人混みがすごかったが、

なんとか受付に辿り着いた。


「ようこそ!冒険者ギルドへ!本日はどのようなご用件ですか?」


おぉー!綺麗なお姉さんだ。

整った顔にぱっちりした長いまつ毛と茶色い瞳。茶髪を束ねて髪を上げている。

派手すぎないけれど、要所ごとに女性らしさが強調された際どい服装。

薄化粧でも美人なので、大人の色気を感じてしまう。


いかんいかん!

フレアとの約束を反故しそうだった。

…まさか、こうなるとわかっていたのか!?


「…あの、どうかされましたか?」


下から覗き込むように上目づかいで心配してきた。

うわー!胸元がー!

フレアとは・・・ってちがーう!


落ち着け俺!やることがあるだろう!


「すみません。冒険者になりたいのですが」


「初めての方ですね。それでは冒険者登録にあたり契約手数料の金貨二枚が必要です」


「はい。どうぞ」


金はコツコツと幼いころから貯めてきた貯金と、ドラットの買取金がそこそこあるので懐はまだあったかい。


「はい。ありがとうございます。それでは冒険者になるための簡単な説明をさせていただきます」


お姉さんが言うには。

冒険者にはランクがある。

それぞれ上から、S、A、B、C、D、E。

六段階に分けられている。


初めての冒険者はEランクから始まる。

クエスト達成数とモンスターの討伐数、そして冒険者の実力でランクが決まる。


モンスターやアイテムにもランクがあり。


モンスターは、

上から、S、A、B、C、D、E、F。の七段階。


アイテムは、

上級、中級、下級の三段階。


さらに冒険者カードというのを渡された。

これは自分のランクや身分を証明したり、街を行き来するときの通行手数料を免除にできるかなり便利なカードだ。


ちなみに俺がこの街に来た時の通行手数料は銀貨二枚、手痛い出費だ。


他には、冒険者としての注意事項や事務的な説明をしてくれた。


ここまできちんと説明してくれるのは非常に助かる。俺としてもこれで冒険者として活動ができるのだから嬉しい。


「・・・以上で説明は終わりですが、なにか質問などございますか?」


「いえ、丁寧で分かりやすい説明だったので助かりました。ありがとうございます」


美人で説明上手。

さすがはギルドの受付嬢。

手慣れている。


「いいえ、ここまできちんと説明を聞いてくださる方は珍しいですから。つい張り切っちゃいましたよ」


「そうなんですか?聞かないとわからないことの方が多いはずですけど」


かなり重要なことも言っていた。

例えば、冒険者が討伐したモンスターを解体してきて持ってきた場合と丸ごと持ってきた場合の手数料で買取額が倍以上変わるとか。

揉め事になりかねない説明が多く見受けられた。


「冒険者になるのを急ぐあまり、あまりこのような話を聞きたいと思う人っていないんですよ。寝たり、流したり、怒って出ていったり…いろんな方がいます。でも真剣に聞いてくれたのはあなたが初めてかもしれません」


うっとりした優しい微笑み。

この人はきっと女神の生まれ変わりなのかもしれない。


「では、説明はこれで以上です!ぜひ、Aランク冒険者を目指して頑張ってくださいね」


「あれ、Sではなく。Aなんですか?」


俺はつい気になって質問した。


お姉さんによると。

どうやら、Sランクというのは。

ほぼ例外なランクらしい。


圧倒的な実力、異常なクエスト達成数、

Sランクモンスターとタイマンで渡り合う猛者でなければならないとのこと。

だが、そんな人は両手の指で数えるほどしかいないみたいだ。


あまりにも情報がないため、SランクはAランクの人が目指すためだけの飾りであるとか、神話級の存在を指すとか、幻の称号とか、さまざまな噂が飛び交っているみたいだ。


代わりにAランクなら、実績を積めば必ずなれるランクなので。SではなくAを目指すように話しているらしい。


「お姉さん、いろいろとありがとうございました!大変勉強になりました」


冒険者ギルドに行く楽しみが増えたな。


「私は、『アミルナーサ』よ。アミって呼んでね。ロイくん!」


「はい!アミさん!さっそくですがクエストを受けたいのですが」


「わかったわ。ロイくんにぴったりなものを見繕ってくるから、空いてるテーブルに座ってて!」


ウィンクをして奥の部屋に行ってしまった。

さてと、どうしたものかな。

座ってるだけだと退屈だから、少し見て回ろう。


冒険者ギルドは街一番の施設であってかなり広い。

受付、食堂、クエストの掲示板、訓練所、パーティ募集の掲示板、買取屋、解体屋、馬車便に相談所、治療室が併設されている。


ギルドの外ではあるが、

武器屋、防具屋、市場、魔道具店、宿など、

ないものは無いくらい充実している。

村とは大違いだ!


しばらく見て回っていると。

アミさんから呼び出された。


「お待たせしました。ロイくんにぴったりなクエストがあったから選んでね!」


アミさんが持ってきてくれたクエストは全部で三つ。


一つは薬草採取。ポーションの材料を取ってくるもの。数は20本。やることは単純だが、見つけるのに時間がかかりそうだ。


二つは“ドラット”の討伐。近くの村を襲っているらしい。俺の村とは反対みたいだ。

討伐数は10体。以前に倒しているため、問題はない。


三つは“ゴブリン”の討伐。ゴブリンは女、子どもや家畜を襲い、自分たちの同族と住処を増やすツノの生えた緑色のモンスター。討伐数は5体。まだ数も多くないため倒せると判断されたのだろう。


「どれにしますか?」


アミさんはなにやら楽しそうに見てくる。

これは試されてるのか…?


俺は少し考え込んで。


「あの、薬草採取とドラットの討伐って両方受けることできますか?」


「えっ!はい可能ですが、大丈夫ですか?」


予想とは違う回答だったみたいで驚かれた。

この二つにした理由は、一つは経験があること。もう一つは二つの場所が近いこと。


全部違うなら考えたが、クエストが近くにあるなら両方受けた方が効率がいいし、ランク上げも進められる。


「面白ですね、ロイくんは!

それではクエスト受理しましたから、気をつけて行ってきてくださいね!」


アミさんにお礼を伝え。

はじめてのクエストに向かうため、ギルドを後にするのだった。

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