第4話 フェルマー

 日直:フェルマー


 感想:本日もまた、素数ゼミならぬ素数キノコ採取に出掛けて、戻って来ない人が居りました。

 まこと、リーマン予想は恐ろしいですね。

 さて、私、真に驚くべき発見を致しましたが、余白が足りないので、この辺で…。


 ガウスは、日誌を閉じて、ぶん投げた。

「また、このネタかよ!!」

「彼女の鉄板ネタじゃない。そんなにカリカリしなくても…」

 首だけで、ぐるんと振り返る。

「だって、くにちゃん先輩!! あいつ、金持ちのくせに、本に余白がないから証明できないとか、ふざけたことを後世に遺しているんですよ!? 紙、たくさん、買えただろうが!!」

 そこで、邦ちゃん先輩が、ふっと笑う。

「第一、証明されていなかったのに、『フェルマーの最終』ってなんだよとは思いますね。自分で言っていた訳ではないにしろ…。『最終』ですよね、本来ならば…」

「まあ、今は証明済みだから、良いですけどね…」

 廊下から、足音が聞こえてくる。

「二人ともー、きよちゃん先輩がお茶にしましょうって!! スコーン食べましょう!! スコーン!! 焼きたてですよお」

 にっこにこである。邦ちゃん先輩と向き合い、苦笑する。

 ラマヌジャンは、「何かよく解らないけど、こうなるよ」で済まそうとするのである。天然の天才である。

「私、先に戻って、お手伝いしますね」

「不思議だ…。ラマちゃんなら、『可愛い』の一言なのに、あいつはなあ…」

「まあ、いろいろありましたからねえ。例の証明は」

 お茶の席にて。

「フェルマーの最終定理ですか? あの本…。サイモン・シンさんの。あれ、皆さん、同姓同名の数学者が二人出てきて、『うん?』ってなりませんでした?」

 潔ちゃん先輩の言である。

「ですよね。世界史なら、ピピンと小ピピンとかにしますものね。普通、解りませんよね」

 邦ちゃん先輩が憤慨している。

「いや、まあ、親子ではないでしょうからね…?」

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数学あれこれ、特に「X」について。 神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ) @kamiwosakamariho

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