緊張

『健介はいまどこにいるんだよ...』

颯太が自分に質問をするようにつぶやく。


沈黙が続く、きっと皆んな同じことを考えている。

誰かが「それ」を言い出すまでは永遠に沈黙が続いてしまいそう。


私は皆んなの表情を確認した。

同じ表情で、同じ角度で俯いていて、目に光がないように思える。


『・・・♪♪♪♪』

沈黙に襲いかかるように電話が鳴る。


颯太の電話だ。

「・・・健介から電話!」


全員の目に光が戻る。

人間はこんな表情になるんだと感心した。


私は口から心臓を吐き出しそうになった。

心拍数がこんなに上がったことはない。


颯太は手を振るわせながら電話にでる。



「みんなそこにいるだろ?」

健介が少し冷めた声で言う。


そんなことより今まで何してたのか。

颯太が怒りを込めて健介に言おうとしたのを

すぐさま健介が遮る。


「美咲、いたよ」


限界だった私の心臓がさらにギアを上げる。


颯太が怒り狂うように言う。

「どこにいるんだよ!!美咲は無事なのかよ!!??」


「・・・・・。」


健介からの返事はない。


「・・・健介?」


「・・・・。」


颯太は何度も健介に居場所と美咲のことを聞いた。

しかし美咲がいたことを伝えたのを最後に健介からの応答がなくなる。


30分程時間が過ぎただろうか。

少し冷静さを取り戻したみんなは警察へ連絡をした。


行方不明になっている美咲のことを伝えると警察はすぐに動き出した。


颯太は機転が利く。

健介からの電話を切らずにそのままにしていた。

警察に逆探知をしてもらうためだ。

これで健介と美咲の居場所がわかる。



私たちは家へと強制的に帰らされた。

私は家についてからも心臓が忙しい、落ち着くことができない。


みんなも同じようにソワソワして、連絡を取り合っていた。

しかし何もできない自分たちがいくら騒いでも何か変わることもなく

ただ、今日の日が終わった。


翌朝、1通の連絡が届いているのを確認した。

颯太からだ。


内容は残酷すぎるほどにシンプルだった。

「美咲と健介だけどさ、遺体で発見されたんだって」


私はみんながこのメッセージを見てどんな気持ちになっているのか

どんな表情になっているのか気になった。


不意に窓へと視線を移す、とても晴れていて雲一つない。

こんな大事件があったとは思えないほどに残酷な天気。

何事もなかったように世間は今日が始まっているのだと思うと、嫌な気持ちになる。

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邪魔をしないで、気づいて きたっくす @kitakita0130

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