第9話 暇つぶし

アーサーとマリーの決闘の行方は確認することなく俺はその場を離れることにした。


勝った方を仲間にすればいいだけだからな。

勝負が出るまでは俺は別のことをしていようと思う。


そうだな。


クルっ。


シャロの顔を見た。


「記憶が無いって覚えてるよな?」

「もちろんですわレイン様♡」


目をキラキラさせて手を組んで俺の事を見てくるシャロ。


「この世界のことについて少し話してくれないか?」

「はい!では図書室に向かいましょう!」


そうして図書室に移動して俺たちは隣合って座るとシャロが話始める。


「いいですか?この世界には魔帝と呼ばれる存在がいます。我々はその魔帝との次の戦争に備えて訓練しています」


そう口にしたシャロに聞いてみる。


「その魔帝が消えれば俺たちはどうなるんだろうな?」

「さ、さぁ?分かりません……」


そう言ってくるシャロの目を見てこう答えた。


「放課後、時間はあるか?」

「放課後……?もちろんありますが、ていうか開けます!レイン様の為なら予定の一つや二つ消し去って開けますよ!」


シャロの俺への思いは十分に伝わってくるようなそんな返事だった。


それから聞いてくるシャロ。


「でも何をなさるおつもりですか?舞踏会ですか?それともお食事会?それともそれとも?」


俺は口元を歪めてこう答えた。


「魔帝大陸を消滅させる」

「・・・」


パチクリとした目で俺を見てきて珍しく顔を引きつらせたシャロ。


「い、今なんと?」

「魔帝大陸を消滅させる」

「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!!!!」


図書館にシャロの悲鳴が響いた。



放課後。

俺はこの前訪れた砂浜に立ち寄っていた。


押しては引いていく波を見てから視線のずーっと先にある魔帝大陸を見すえた。


「あれが魔帝大陸ですよ。大昔。あそこからモンスターが大量に押し寄せてきたのです。血で血を洗うような戦いだったと記録されています」


説明してくれるシャロに頷く。


「で、また押し寄せてきたらその戦いが再度起きるから、それに備えているのがこの世界の学校だということか」

「はい」


それを聞いてから俺は右手を開いて魔帝大陸に向けた。


何度か魔法を使ってみて知っているけど、こんな事しなくてもいいんだけどさすがに距離がある。


だから魔法を発動させやすくするためにも右手を向けた。


なんとなく、こっちの方がイメージしやすい。


「な、何をなさってるんです?」


シャロの目を見て答える。


「魔帝大陸を消滅させる」

「………?ほ、本気で言ってるんですか?」

「俺が嘘をついたり冗談を言ったことあったかな?」


てっきり信じてくれているものだと思っていたけど、


「じょ、冗談じゃなかったんですか?さ、さすがに大陸の消滅なんて……」


そう言ってくるシャロの前で俺はとりあえずやってみることにした。


やってみないと何事も始まらないからね。


「フルバースト」


イメージするのはもちろん。


魔帝大陸を消滅させるような爆発を。


俺が呟いた瞬間。


魔帝大陸の上陸で。


ピカッ。


なにかが光った。

まるで夜空に浮かぶ星のような輝きだった。


「い、今なにか光りました、よね?」


シャロが聞いてきた。


それからすぐ、光は大きくなっていく。


「な、なんか大きくなっていません?あの光」


そのまま光はどんどん大きくなっていき、やがて大陸の高くなっている山(?)の部分に当たった。

そして山の先端が消えた。


「な、なんなんです?あの輝きは」


そして、そのままどんどん光は大きくなり。


「……んな……」


やがて大陸全てが光に包まれた。

その瞬間だった。


​──────ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!



そんな音が鳴って。


ザァァァアァァァァアア!!!!!!


津波が起こった。

魔帝大陸のある方から俺たちの立っているこっちにむかって。


「つ、津波ですよ?!津波?!レイン様?!」

「分かっている」


俺は次にこう呟いた。


「ウェーブ」


自分の足元からズアッと波を立ち上げた。


「な、波?!そんなもの作ってどうするつもりなんですか?」

「相殺する」


そう言って俺は自分で作った津波を前に進ませる。

数秒後、津波と津波がぶつかり合って。


シーーーーーーーン。


物音1つしない静かな海に戻った。


その様子を見てシャロはその場に座り込んだ。


「つ、津波が消えたましたわ」

「相殺したからな」


俺はそう言ってから魔帝大陸の方を見た。

巻き起こった津波と爆発でよく見えなかった魔帝大陸を。


さっきまで存在していた大陸は……


跡形もなく消えていた。


それを見て俺は口元を歪めてからシャロに目をやる。


「消えたな。魔帝大陸は」


あんぐり。

口を開けて俺を見てくるシャロ。


それから魔帝大陸のあった方に目をやって。

口を開いた。


「ほ、本当に消えちゃった……」


その言葉を聞いて俺はクルッと踵を返した。


「俺の用事はこれで済んだし帰ろっか」

「は、はい」


俺に声をかけられたら我に返ったように頷いて立ち上がったシャロ。


俺は帰り道思っていた。


(この後のストーリー展開はどうなるんだろうな)


ゲーム世界の世界観設定を完全に破壊したのだが、この後どういう風に世界は変わっていくんだろうか。


それを見るのが今から楽しみだ。


そうして帰っていると話しかけてくるシャロ。


「魔帝大陸を消し飛ばすなんて凄いです☆さすが私のレイン様ですね。婚約者として私は誇らしいです☆」


その言葉に言い返す。


なにか勘違いしてないか?こいつは。


「俺がいつお前の婚約者になったかな?シャロ?」

「え?私たち婚約してなかったんですか?」

「お前が勝手に言ってるだけだろ?俺は何も言ってないぞ?」


そう言ってやると更に顔がとろけたシャロ。


「はひぃ!私が勝手に言ってただけでした!お許しをレイン様」


子犬のように俺にすり寄ってくるシャロを見て思う。


(こいつキャラ崩壊がやばいな)


原作のこいつはこんなこと絶対言わなかったし言わないだろうから。


(すっげー変な感じだなぁこれ)


原作だとそんなに好きなキャラじゃなくて、むしろ嫌いな方のキャラだったけど。


「レイン様!レイン様!」


こうやって犬みたいに懐かれると反応に困るんだよなぁ。


まぁ、悪い気はしないけどさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学園ゲームの最強の無個性モブキャラに転生した俺は全てを力でねじ伏せ、傲慢で不遜に無双することにした。俺がひたすら活躍するために動くことにした。原作主人公は引っ込んどけ。 にこん @nicon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ