第12話 第30回大賞受賞作「竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る」

 今回は第30回電撃小説大賞受賞作品「竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る」を取り上げたいと思います。

 刊行日は2024年2月24日にメディアワークス文庫から、今年の作品ですね。


 まず最初に言っておきたいのは、読んでいる貴方がこの作品について全く知識がない状態であるならば、すぐにブラウザを閉じて作品を読み進めることをオススメします。

 まっさらな状態で、何も考えずに作品世界に飛び込んでいく。それがこの作品を一番楽しめる読み方だと思います。


 最初は世界観・物語ジャンルがまったくわからない状態でスタートし、「明治の終わり頃」「主人公は親が死んだことでなんか受け継いだ若い女性」という限定的なことだけが読者に情報として与えられます。

 そこでいきなり木登りをする主人公というほのぼのお転婆、それを取り囲む美形男性キャラクターが6人でてきます。

 私は「はあー、女が主人のハーレム物か…。対象読者じゃねえなあ」と内心ため息をつくわけです。

「新人賞受賞作品」という括り作品を選んで読んでいると、こういうこともままあります。

 ところが開始30ページくらいで美形男性キャラクターたちが謎のオカルト的存在「おかととき」に無惨な拷問を受ける凄惨な描写が描かれるんです。

 心の中の髭男爵が「事情が変わった」と言い出しました。


 ほのぼのオープニングから一転してコズミックホラーですよ。


 驚くとともにグイグイと作品世界に引き込まれていきます。

 主人公たちがいる場所はなんだ?

 時に訪れてくる「おかととき」ってなによ?

 なんで拷問されてるの?

 この陰々滅々としたストーリーに納得する結末なんてあるのか?


 どんどん退場していくキャラクターに先鋭化していくストーリー、ジェットコースターに乗っているような疾走感がありました。

 あれ? この感じだとストーリーはクライマックスなんだけど、まだ残りの紙幅はけっこうあるぞ? という疑問と共に。

 そしてストーリーの行き詰まりと疑問が頂点に達した時、物語は文字通り爆発します。

 そこから先の「物語のたたみ方」も実に見事。


 この作品の読書体験はなかなかに得難い物でした。

 ジャンルで選んでフィクションを読む、作家で選んでフィクションを読む、では絶対に辿り着けない驚きと喜びと言いましょうか。

 新人賞作品というジャンルで読書をしていたからこそ巡り会える(極めて稀な)体験でした。

 ストーリーについてあまり語ることはできませんが、

 

 とにかく、オススメしときます。

 



 



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電撃小説大賞作品を淡々と読む。 @golgol2018

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