第11話 第30回大賞受賞作「魔女に首輪は付けられない」

 今回は第30回電撃大賞受賞作品「魔女に首輪は付けられない」を取り上げたいと思います。


 今日(2024年2月9日)に発売された最新の電撃小説大賞作品になります。

 魔法がある世界を舞台に殺人事件を解明するために捜査官と罪人の魔女が手を組んで事件を解決していくバディ物。

 後書きで著者が述べているように「羊たちの沈黙」のハンニバルとクラリスから強い影響を受けていて、能力はあるが囚われている犯罪者の協力を得て、捜査官は反発しつつも犯罪者に影響を受けていってしまうという、ある意味ではお約束の展開も盛り込みつつストーリーは進んでいきます。


 この作品の光るところはキャラクターの良さで、後半あるキャラクターの独白場面ではかなりグッときましたし、イラストとの相性も良く見惚れるほどでした。

 反面、ヒロインたちの反社会性も際立っていて、メインヒロインが主人公の前任者を自殺に追い込んでいて大して悪びれていない、という点に関しては「それ、どうなん?」と思わなくもありませんでした。


 また、「魔女」とか「魔法」とかの時点で中世風異世界ファンタジーかな?と思いきや現代社会(に酷似した世界)に魔法というモノを持ち込んだ作風になっていたのも興味深い点でした。

 普通にスマホらしきもの(「端末」と呼ばれてました)があるし、ホワイトボードに水性ペンまで出てきていて、これが今のライトノベルの「異世界」なのかと思うと考えてしまいました。

 キャラクターの掘り下げもいいけど、この世界観の方をもう少し掘り下げて欲しかった気もします。

 あと、メインヒロインの経歴から考えるともっとダークな感じでも良かったかなーという気もします。

 ただ、メインヒロインの掘り下げがそこまでではないんで、続巻で「実はそこまで悪いヤツじゃなかった。前任者の自殺の件も事情があった」みたいなオチになる可能性もないわけではないんで保留としときます。


 読後感としては90年代のシリーズものの第1巻という印象が強いです。

 最後のエピローグなんかは特に。

 しかし、そこに陰鬱な影がないことがこの時代の特徴でしょうか?

 中盤〜後半の展開(特にあるキャラクター)は好きなんでオススメしときます。


 最後にちょっとどうでもいいことに気になってしまった点。

 主人公は「血塗れのローグ」という二つ名で呼ばれているのですが、これのルビがずっと「血塗ちぬれ」で個人的に「血塗ちまみれ」じゃないのか?という点が終始引っ掛かっていました。

 まあ「血塗られた歴史」ともいうし、よくわからない、というのが正直なところです。

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