この物語に出会えたことをとても嬉しく思う。
著者にお礼を言いたい。
そして出会わせてくれたカクヨム様と、東京創元社の選考員の方々にも感謝する。
『普通と違う』彼らのことを、未知の存在に思えていた。
きっと自分は作中に出てくる『普通の人』の一人で、知らず知らずに彼らを傷付けていたのだろう。そして彼らを知ろうとすることもなかった。
彼らの日常は、実はとんでもない不可解なミステリーに満ちていたのだ。
思い出したことがある。
私には養護施設職員をしている友人がいるのだが、
いつも「こんな給料じゃやってられん」と文句を言っている。
実際、彼はそれなりに名の知れた大学を出て相応のキャリアを積んでいるはずで、
場所が場所ならきっと貰えるものも増えるだろう。
いつだったか、私が「だったら転職すればいいじゃん」と言うと、彼は笑顔で返したのだ。
「でもさ、あの子たちっていつも予想外で面白いんだよなー」
彼の言っていることがどんなことを指していたのか私には分からなかった。
でもきっと、彼は「あの子たち」の個性のひとつひとつを愛していたのだろうと思う。
『知らないもの』として遠ざけていた私と違って。
この作品では、登場人物の個性が瑞々しく描かれていて、みんながとても愛しく思える。
生徒のみならず、奔走する先生たちも戸惑う両親もふくめて、全員に立体感を感じるのだ。
大袈裟かも知れないが、私は蒙を啓かれた気分だった。
この物語が書籍となって私の本棚に並ぶ日を、今から楽しみにしている。
そうしてもちろん、彼らのこれからの物語も。