第108話:セイなる夜を超えて
「ごめんね、アカネ」
湯舟の中。
アカネに背を預け、後ろからアカネに抱かれた雪人が、改めて、詫び。
「ん……済んだ事だし、結果オーライだし、ノープレブレム」
……プ
「……ありがと」
「それにしても……」
夫を後ろから抱きしめ、夫の肩に頭を乗せて、夫の耳元で。
「ユキちゃんでわたしから、なんて……」
「その方が安全かな、って。ボクがまた暴走しないように、ね?」
「今度は暴走しても、いいんだよ?」
「いやいや、いやいや」
「さっきもユキちゃんで暴走してたけど?」
「うっ……」
乱暴な事は出来ればしたくない、してはいけない、だから。
「あぁ……旦那様が完全に女装に目覚めてしまったとわ……」
「うぅ……」
「まぁ、カワイイから、許すっ」
ぎゅぅっ、と、その夫を抱きしめて。
「ぎゃー、そこぉ、だめぇ……」
「にゃはは、本番の前哨戦じゃぁ、このっこのっ」
「やめてーだめーそこ、そこ、だめぇ」
とかやってると。
「ちょっと、そこのバカ夫婦、何やってんの? さっさと上がりなさいな」
脱衣所から、妻の母の、お叱りの声。
「はぁい」
「……バカふうふ……ふっ」
そのバカ夫婦がお風呂からあがり、母たちがお風呂に入っている間に、お着換え。
雪人がユキちゃんにチェンジして、リビングを『
「初めての、二人の共同作業だねっ」
「だ、だね!?」
違うでしょ、と突っ込みたいところを我慢して、妻のテンションを立てる、夫。
そうこうしていると母たちもお風呂を終えて。
「あら? 二人ともスカートなのね……衣装合わせた方がいいわね……雪枝さん、着替えましょ」
「はぁい、私はぁ、ユキちゃんと同じような
「ええ、私はアカネに合わせるわ」
できるだけ、
着々と。
『
「さぁ、
『本番』が、
段取り、手順。
最初の部分は、すでに慣れた手続きが故、滞りもなく。
途中までは、昨夜と、ほぼ同じ部分もあり、こちらも滞りなく。
厳かに、穏やかに、和やかに。
母と母。
娘と、娘のような、息子。
二組のカップルが。
二組の夫婦が。
「さて……」
「ここからがぁ、正真正銘ぇ、ホントのぉ、本番、よぉ……」
母と母が、雪枝と美里が、手本を見せる。
横たわる雪枝の上、美里が。
「いい? アカネ……ゆっくり、ゆっくり自分のペースで、ね?」
横たわるユキの上のアカネに向かい合い、
「ユキちゃんもぉ、こんな風にぃ、
美里の下の雪枝も、向い合う娘のような息子に
母たちを横目に。
母たちを真似て。
初めての時を。
ある意味、これが、初めての、最初の、夫婦の、
「だ、大丈夫? アカネ……」
「ん……意外と、大丈夫、っぽい……」
「無理、しないで、ね?」
無事に、
「ここからがぁ、正真正銘ぇ、ホントのぉ、本番、よぉっ!」
雪枝の意味不明な宣言に。
「本番、何個あるのっ!」
「本番、多いなっ!」
仲良く
それでも。
厳かに、穏やかに、和やかに、でも、熱く、激しく。
無事に。
『
「んふふぅ……雪人、アカネちゃん……今夜はぁ、寝かせない、わよぉ?」
またもの雪枝の意味不明な宣言。
「寝かせてっ!?」
「寝るよっ!?」
と、また仲良く突っ込む夫婦、だが。
「あ、や、あと一回ぐらいは、いいかなぁ……なんて?」
「そ、そうだね……もう一回ぐらいなら、いいかなぁ?」
仲良く、訂正する、夫婦。
「んふふ、ですって、雪枝さん……じゃぁ、今度は雪枝さんの方から……ね?」
「りょぉかぁい、ユキぃ、こぉするのよぉ」
娘夫婦の仲良き事に、幸あり、幸あれと。
母婦々も、奮い立ち、ハッスルし。
『
やがて。
百合の母達の乞うた願いは遂げられ。
仲睦まじい両親の隣で可愛い孫をあやす二人の祖母の姿は可憐でさえ、あった。
<百合の母達が子等に乞い願う・ピュア>
<了>
百合の母達が子等に乞い願う・ピュア なるるん @nrrn
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