『私が生徒会長になった理由4』
「今時、こんなふうに『何とかかしら』なんて話し方するの、小説や漫画、アニメの中だけでしょ」
私が人気になった理由。
それは、話し方だった。
今時、こんな女言葉で喋る現代人はいない。
「私のおばあちゃんね、こういう風に喋るの。だから、それが移ちゃって直らないのよねぇ」
お嬢様学校において、この喋り方は特別だった。
気品ある淑女として。
ですわではなく、かしらで。
私は文字通り、この学園の
「ビジュアルの良さと、纏う雰囲気でなんか様になってて、みんな指摘出来なかったんだろーな」
「私も言われるまで、一切疑問に思いませんでした!」
田舎や、お嬢様学校という閉鎖された空間も関係してるとは思う。
他の学校だったら、絶対に指摘されたに違いない。
「それで、次は市子を除く私達が立候補してないのに当選した理由ね」
私は三人を手招きで呼び、パソコンの画面を見せた。
今回の生徒会選挙の投票率を。
「……もの凄く低いですね」
司くんの言う通り、今回の選挙の投票率は30%以下程度だった。
中等部と違い、高等部の投票は任意だ。
「絶対的な候補、
「それで、固定のファンを持つあたしたちに投票した奴らの割合が相対的にデカくなって、他の人の投票率の悪さも相待って、当選しちまったのか」
そう、私達の投票数が多かったというより、全体の投票数が少なかった。
今回の生徒会選挙は、政治的な投票をする人よりも、アイドル的な人気投票をする人の割合が多くなってしまった。
本来なら、アイドル的な人気投票をする人の割合が数パーセントな所、全体の投票率が30%以下だったため––––つまり、全体の母数が下がったことにより、相対的に私達の票が多くなってしまった。
その結果、立候補していない私たちが当選してしまった。
司くんは心配そうな表情を浮かべ、
「そんなのいいんですかね?」
と私に聞いてきた。
「別にいいんじゃない? 投票しないのも意思表示だから」
票を入れたい人がいないから、投票しない。
名前も知らない人に票を入れるよりかは、マシと考えた人が多かったのかもしれない。
「あとは、私たちの仕事ぶりで示すしかないでしょうね」
「それなら、雲母坂がちゃんとやってくれてっから問題ねーな」
「あります」
問題が起きないように、私が一人で沢山働いてるのは問題でしょ。
でもまあ、それも今年限りの話だ。
「今年度は仕方ないから頑張ってやるけど、来年度は絶対にやらないわ」
「いや、立候補してないのに生徒会長になっちまったんだから、来年も立候補してないのになる可能性あるぞ」
井斉先輩の言い分も分かるが、それは対策出来る。
「私も
実際、それをした糺ノ森先輩には票が入らなかった。
「まあ、それでも当選しちゃったら仕方ないからやるけど」
多くの生徒に望まれるなら、致し方ない。
「それなら、断ればいいのでは?」
司くんの提案はもっともだが、私にはそれが出来ない理由がある。
「そうしたいんだけど––––私ってほら、特待生でしょ? 私の学費とか寮費とか食費とかって学園側から出てるから、断りずらいのよねぇ」
そして、そのお金は生徒の学費から出ている。なので、その生徒達から生徒会長になってと望まれるならやるしかない。
「そりゃあ、ちっと真面目過ぎると思うぜ」
「真面目だから、特待生なんですよ」
井斉先輩は、「そりゃそうか」と笑った。
「とにかく、来年は出ないわ」
「では、来年は私が生徒会長ですね!」
そう言って市子は、大きな胸をドーンと張ってみせた。
全く。
「あなたが生徒会長になれるわけないでしょ、誰も投票しないわ」
しかし、井斉先輩が「いやそうでもないぜ?」と不穏なことを言う。
「何故ですか?」
「いやだって前年度生徒会だったメンバーは、次の生徒会にも結構な頻度で当選するぞ?」
あ、これはまずい。
「つまり、私が生徒会長になれる確率も高いってことですね!」
「いや待って! 委員長! 委員長の方が票が多くなるに決まってる!」
「相生先輩は立候補するんですか?」
「させる!」
じゃないと、市子が生徒会長になるという最悪な未来が訪れてしまう。
「でもよぉ、委員長の子が若王子に絶対勝てるっていう保証はないぜ?」
「ぐっ……」
それはそうだ。いくら委員長が優秀と言っても、市子に確実に勝てる保証はない。
「ま、若王子を生徒会長にしたくないなら、来年度もお前がやるしかないな」
「そうですね、会長さんなら今年の働きやこれまでの人気も相まって、来年度も最有力候補になると思います」
……市子を生徒会長にしない為には、私が。私が再び生徒会長になるしかない。
「………………………………来年もやるわ」
こうして、来年度も私の生徒会入り、並びに生徒会長就任が決まってしまったのであった。
ワタアメミステリー 赤眼鏡の小説家先生 @ero_shosetukasensei
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