ファーストキス

8月25日

今までの思い出を振り返り、園芸部の部室で待っている私と部長。

ドアが開けられると、顧問の加藤が入ってきた。

「あれ、月島はまだ来てねえのか」

ピロリンとラインがなる。

私は携帯を見ると、彼からラインが来ていた。

「月島君、もうすぐ学校だそうです」

部長が和やかに話す。

「奈津さんが託した願いを、加藤先生が作って、僕や月島君、奈歩ちゃんが入部したことで形になってる。」

部長の言葉に私は頷く

「繋げていきたいです」

お姉ちゃんの願いをー...

加藤先生は優しい笑みを浮かべた。

「そうだな」



するとー...

再びドアを開かれる。

「ごめん。遅れた」

月島君が部室に入ってきた。



涙を流したのだろうか。その顔は瞼を張らしている。

だけど、表情は晴れやかで安堵した。


「さあ、始めようか。奈歩ちゃんの誕生日会」

部長がにっこりと笑った。

◇◇◇


部長は向日葵の刺繍が入ったハンカチをくれた。先生は生徒個人のプレゼントは禁止されていたので、部室用に写真立てをもった。

「朝顔の咲いてる場所で写真を撮りましょうか?」

月島君の意見に同意した。

「園芸日誌も書いていきたいね」


3人で話してる様子を見て加藤は思う。

(奈津..お前が願った優しい居場所、確かにできたぜ)


◇◇◇


夏休みの学校

お昼過ぎも生徒たちは賑やかに活動してる。

加恋は文芸部、美玖はバトミントン部

それぞれ精力的に活動していた。


帰りにサッカー部の部員に頼んで、加藤先生も入れて、4人で朝顔の前で写真を撮影する。

「ありがとう。」

部長がお礼を言った。


「それじゃ帰ろうか。」

「うん。先生、部長。また」

奈歩と瑠偉は二人で帰る約束をしている。


「気をつけて帰れよ」

「また部活で」


2人を見送ったあと。

「牧野、失恋相談のってやるよ」

「はぁ?僕は奈歩ちゃんのことは大切な友人で妹のような存在ですから!」

顔を赤くする牧野に。

「へいへい」

加藤はそう言って頭をワシャワシャとかきむしる。


◇◇◇


「夏休みの学校、普段と変わらないね。お盆休みを抜かせば誰かしらいるから孤独じゃない」

月島君は穏やかに話す。

「そうだね」

彼の言葉に私は頷く。


何か言いたそうな顔をしてる月島君に、私は尋ねる。

「どうかした?」

「香取さん、俺のこと名前で呼んでくれる?」

「え?」


何でも弟のことを舜君呼びしていたことに、多少思う部分があったらしい。

子どものような張り合いに、私はクスと笑う。

「いいよ。瑠偉君」

私も自然に下の名前で呼べた。

ポッと瑠偉が頬を染めた。


歩いてる路上に夏を代表する向日葵が咲きこぼれている。

「うわあ、綺麗。瑠偉君。ここ穴場スポットだね」

目を輝かせる私に彼は唇を重ねた。

「!」


そっと唇を離す瑠偉

私は頬が熱くなった。

「奈歩、誕生日おめでとう」

彼も私を下の名前で呼ぶ。


2人は手を絡ませながら歩く。


この関係を大事にゆっくり。ゆっくり進んでいこう。

今日、香取奈歩16歳の誕生日ー...

好きな人とのファーストキス

夏休みの学校の思い出の一つだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夏休みの学校 Rie🌸 @gintae

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ