第9話 訪問

日曜日の朝、正確には昨日から母は家の掃除やら何かと忙しそうにしている。


「健助の彼女さんが挨拶に来るなんてイベントもっと先の事だと思っていたわよ」

「いや~楽しみだね。どんな子なんだろうね」

「あなたは外出しててね」

「えぇーなんで?」

「初めては女性同士の方がいいでしょ。一対二だと気遣わせちゃうじゃない」

「そうか?問題ないんじゃないか?」

「いーえ!問題あるわよ」


結局、父は負けて花川さん親子が来る前に出掛けていった。



ピンポーン


花川さんと花川さんに似た綺麗なお母さんがいた。

「こんにちは。この度は娘が無理を言い、高価なポーションをいただきまして大変申し訳ありません。おかげさまで体調が戻り元気になりました。ありがとうございました。ささやかで申し訳ありませんがこちら受け取って下さい。」

「わざわざありがとうございます。ここではなんですから上がっていってください。」


花川さんから貰ったお菓子と用意していたお菓子、それと飲みやすいFランクポーションがテーブルに出された。


「あの、これって」

「この子が作った低ランクのポーションです。口にあえばいいですけど」

「いただいてよろしいのですか?低ランクと言っても普通のお茶とは比べ物にはなりませんけど」

「気にせず飲んでください。まだお疲れもあるかもしれませんし」

「逆に気を使わせてしまい申し訳ありません。いただきます」「いただきます」


「おいしい。健助さんは優秀な錬金術師なんですね」

「ポーション初めて飲みました。全然苦くないです」

「今はおいしいですけど、始めた頃はそれはもう不味くて不味くて」


母が花川さんと部屋で遊んでなと促され、遊ぶものはないけど親同士が話してるいる場所に居続けるのもキツイから花川さんを僕の部屋に招いた。


なんかごめんね。親のテンション高くて。

「良いお母さんだと思うよ」

ここが僕の部屋。物多くて散らかってるけどどうぞ。

「おじゃまします。ここでポーション作ってるんだね。これ何か聞いてもいいかな?」

いいよ。これは……


製法を言ったとしても花川さんは言いふらす人ではないと思っている。たとえ漏れたら漏れたらで、いつかは安定した製法を公開する人が出てくるはずだから、それが早まっただけ。


「コーヒー作るみたいだね」

僕の作り方はそうかもね

「私にもできるかな?やってもいい?」

できると思うよ。ただ熟練度が近いうちは失敗というか低品質しか出来ないと思うよ。売るならギリギリ赤字にはならないレベルだし、飲んだら赤字だから熟練度上がるまでは結構辛いと思うけど。

「そっかー。そんな甘くないね。ジョブチェンすると今のジョブ熟練度下がっちゃうしなー」

BCランクは毎週は無理だけどDEランクなら渡せるよ?

「本当?」

うん、お母さん。心配なんだよね?

「ありがとう。まだBランクのお礼もできてないのに」

いや、そんな気にしないで。そんなつもりで言ったわけじゃないから

「今度ちゃんとあげるから。あげたあともいっぱいしよう。彼氏彼女だしね!」

あ、ありがとう

「まだ何もしてないよ」


そう言って彼女は笑った。


「大浦くん、隣座って」


隣。肩が触れ合わない距離。彼女が僕の手を握り、肩を押し付け合うような距離にくる。


「彼氏彼女だからさ。名前で呼んだ方がいいよね。私も大浦君のことけーすけって呼ぶから、私のことはミキって読んで」


みき

「けーすけ」


見つめ合い名前を呼び合って、照れくさくて、でも視線は外せなくて、気づいたら目を閉じていて唇が触れ合った。


ゆっくり離れる距離。目を開けて10センチ先の彼女。


「はずかったからキスしちゃった」

僕も


「もっかいしとこ?」


親に呼ばれるまでキスは繰り返された。

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