ワインレッド

 昨日の悪夢をしばらく忘れられそうにない。いつものベッドで横になっているだけなのに気持ちが落ち着かない。

 頭痛は別に意外でもない。気分が怠いのは空腹のせいだろう。

 記憶が正しければ私はまだ夕食を摂っていない。それなら急ぎ食堂へ……いや、今夜は特別に教会関係者みんなで宴会をする約束だったか。

 言い出した私が遅れを取ってはいけないと、毛布を剥がして起き上がるつもりのあった私の視界は、灯りが点いているわけでもないのにやたら明るい。夜の暗闇とは反対に絶妙な日当たり加減。

 長く眠った分だけ体に力が入らず、動き出すのも億劫に思えてくる。首を窓の方に傾けると、もう朝になっていた。

 ……窓枠に腰を下ろすワインレッドは、まだぼやけて見える。

 善くないやつだが、どうにも意欲が湧かない。プライベート空間とは私が勝手に思い込んでいただけで、ここは落とし穴の一歩手前だ。これまでの経験から、また理不尽な何かが待ち受けている気になり、むしろ毛布に包まっている方が正解ではないかと開き直れるほど。

 メヘルブの神を殺した。この街から呪いの掟を取り除いた。そして、彼女たちを一先ずだが救ってみせた。

 これだけのことをやってもまだ歓喜に浸れないのは、私のこれまでが苦難の連続だったからに他ならない。成功した後ほどポジティブよりネガティブが勝る。

 全て夢だったのではないかと邪推が始まった。私にこれほど平穏な時間はあり得ない……と。むしろ夢に見たあのイカれた世界こそが私の本来在るべき場所で、次の瞬間にもあの地獄へ弾き返されてしまうのではないか。

 許してほしい。これまでがそういう日々だったから、そういう風に考えてしまうことを。民衆に変化を望んでおきながら、私もまた、変われない側面を持っている。

 既に退散したはずの頼れる傭兵が言っていた。私はまず自分を救うべきだと。

 彼は私が彼のことを神に等しい値で尊敬していることを見抜き注意してくれたが、あれだけかっこいい真似をされたら誰でも勘違いするに決まっている。

 ヤエさんが彼に恋愛感情を抱いていたとしても何ら不思議はない。私では彼に遠く及ばないだろう。これから幾度となく彼女の足を引っ張り、機嫌を損ねてしまう自分の姿が容易に想像できる……。

「起きたか、カイル」

 そんな彼の助言に私は半分だけ従い、半分断った。

 自らの性分と環境を受け入れたからこそこの結果に至ったわけだが、最後は捨て身だった。私は自分を認めることができただけで、まだ救えてはいないのだと思う。

 大切な誰かのために尽くす。それが私の原理の源であり、救いに違いない。こんな私を彼は認めてくれるだろうか?

「おーい」

 過去への関心が薄い性格も直らない。済んだ話で、彼はもういないのだからこれ以上は蛇足だ。

 どうせ死んだ方がマシだったような悲運が待ち受けているんだろう?メヘルブだろうと外界だろうと、上手くいった後には下手な展開が待ち受けているものじゃないか。

 メヘルブを導いていく。こちらへ寄る彼女や、みんなと共により良い明日を目指していく。私の理想を阻むものたちと衝突しながら。

 奪還は成功した。次は保持が求められる。果たしてそれは、私に出来ることなのだろうか?

 この赤いシスターにしたってそうだ。やる気ゼロの私に溜め息を吐く彼女に共存を願い、とりあえずは折れてもらったわけだが、私の熱意が一体どれだけ彼女に届いたのだろう。

 彼女を失望させたくない。生き永らえることの尊さを共に見出していきたい。

 ……その気持ちに嘘はないが、命懸けでも命を失くさずに済んだ結果がこれなら、保身に努めてもなお私か彼女が命を落とす分岐もあるのではないか?

 私はいい。怖ろしいのは大切な誰かを失うことだ。私にとってそれ以上の悪夢はきっとない。

 その一員、鋭い目つきでガン飛ばしてくる女性へ無意識に手を伸ばした。いつ失うか分からなくて怖いから、今のうちに温もりを確かめたかった。

 しかしそれは拒まれ、女性はベッドを横切っていった。

 繋がりを絶たれたのだ。先に断絶したのは私だから恨むのは情けない。

 それでも寂しいものは寂しい。何だ、やっぱりここは悪夢の中……。

「長い」

「……すみません」

 モーニングコールにしては残忍とも取れる。重たい首は窓の方を向いたまま中々向きを変えられない。反対にあるベッド脇の椅子で何かをやっているのを確かめる気力もなく、こういう時は彼女が導いてくれるはずだと厚意を待つことにした。

 突如、私の視界が赤一色に覆われた。紅蓮の記憶がフラッシュバックして目を見開くと、それは私の気に入っているワインレッドだと分かった。

「飲もう」

「寝起きで?朝から?」

「別にいいだろ。今日は休みなんだし。中にはやる気のある奴もいるけど」

 横になったまま眼前のワインボトルを受け取り、ここでようやく上半身を起こした。

 私と彼女の手にボトルが一本ずつ。椅子にはもう一本残っている。汗ばむ私と違い、穢れのない白い手で栓を外す彼女の顔を見つめた。

「おはようございます、マイア」

「ああ、おはよう」

 他の誰でもない、誰の傀儡でもない等身大のマイアがそこにいた。

 外した栓を椅子に並べ、お互いのボトルを弾いて同時に口へ運んだ。

 寝起き一番、空きっ腹だろうと構わなかった。私の最優先は彼女なのだから、これ以上の幸せはない。

 ただし、頭痛は免れなかった。一口目で既に飲み干す自信がなくなったが、弱気を悟られぬよう自分が寝ている間の出来事を確認することにした。

 マイアにはもう、下らない術などないというのに……。

「大前提ですけど、あの後の朝ですよね?これって」

 大真面目に間抜けな質問をする。そも、確認より先にまず謝るのが筋だろうに、マイアは二口目を含んでから同じく真面目に答えてくれた。

「そうだ。倒れた時のことは覚えているか?」

「確か私は結構危ない地点に頭から突っ込んだは……ッ!?」

 目撃者と共にここに至るまでの経緯を辿ろうとした時、頭部に更なる激痛を感じた。

 触れて確かめると、額に包帯が巻かれていた。妙な頭痛の原因はこれだったのだ。左頬にもガーゼが貼られている。

 弾無しロシアンルーレットを切り抜けて神を打倒。その後、聖堂に集まった民衆に講釈を垂れておきながら、最後の最後で私らしく醜態を晒してしまったわけだ。

 理解が追いつくと、途端に顔が燃えるように熱くなる。ヤケ酒さえ躊躇うほどの生き恥ではないか……。

「それなりの一大事だったが、笑ってた奴も結構いたなぁ」

「貴女のことですね。最悪のスタートですよ、これ……」

「そうでもないさ。お前をここへ運ぶために手を貸してくれた奴もいたわけだからな。あんな空気になったのは久々だった」

 私が寝ている間に一部の民衆が変化の兆しを見せたらしい。油断するには早いが、あの演説だけでも変わる者が多少なりいると思っていたから驚きはない。

 マイアが愉快気な様子から、冷笑だけというわけでもないだろうし……。

「その助けてくれた者たちとは、元から協力的な方でしたか?」

「半々だな。初めて手伝ってくれた奴もいたよ」

「そうですか。それは何より」

 頭痛が鎮まり、気分は良い。勢いで多量のアルコールを口に運んだところ、やはり頭痛が悪化した。加えてまたマイアが神妙になっているので、間の悪さを悔いて酔えそうにない。

「あれだけ堂々と説教すれば効果は見込める。良い方も悪い方もな。些細な言動で他人の情動は操れるんだ。言っただろ、味方になる奴がいれば……」

 マイアは私の慢心を戒めるように語りを止めた。意図は明確なため、頷いて彼女の言葉を引き継いだ。

「今まで協力的だった者が敵に回ってしまった可能性もある。もう既に……。そして、露骨な迷惑行為でない限り、私は私の敵対者を見逃さなければならない」

「多様性?」

「いえ、器量の話です。居心地と充足を履き違えてはなりません。それに、私はこの街の人間がいくら敵に回ろうと構いませんよ」

「ほう……?」

 もう読心術のないマイアだから今の反応は懐かしい。私が次に発する言葉をある程度まで読めているのに、口を挟まず言わせてくれる。彼女の変わらない部分もまた、望むところだった。

「これからは教会関係者だけでなく、街の人々と接する機会を増やします。直接、対等な位で腹を割って話し合えばいいのです。その上で私を認めさせればいい」

「へぇ……民衆嫌いのお前が成長したもんだ。しかし、連中にお前の熱意が届くかな?」

「いつか必ず分かり合える時が来るはず。確信はないですが、だからこそ、あると信じて邁進できるのです。それに、今はまだ個人を知っていく段階ですから、悲観するには早過ぎる。……戦争を防ぐために政治を布く。そのために命や尊厳でなく、魂を懸けて競う。貴女でも何とかなったのなら、もう怖いものはありません」

 説教台にて皆に本心を打ち明けながら、私はまだ自己を紹介し切れていないと痛感していた。

 私が皆を醜悪だと思っていたのだから、皆が私をそのように思っていたとしてもおかしくない。今の私に手を差し伸べてくれる者がいたとしても、私はまだ甘い。今際の際まで精進を怠ってはならない。

 それは生者の使命であり、人の営みの中にいることを許された者だけに与えられる特権なのだから。

「お前の独裁はもう終わった。これからのお前は特筆した才能を持たない駆け出しの政治家も同然だ。何より生後五日目というのはハンデ過ぎる。そんなお前がメヘルブを最善の未来へ導いていけるのかな?」

 マイアの調子も戻ってきた。誰よりも傍で私を試す心構えの彼女に呆れられないよう、不敵に口角を上げて意志を表す。

「出来るはずです。人生には結果がありません。それならより困難な道を進む方が賢いと思うのです」

 もう卑屈になることもない。ネガティブに陥るには新しいメヘルブは眩し過ぎる。

 私の回答に納得したのか、マイアはゆっくりと目蓋を閉じると、一度深く頷いてから半分残ったワインボトルを椅子に置いた。

「民主主義の終わりかぁ。これからは嫌でも働かされるわけだ」

「理不尽な掟に縛られては主義も何もありませんよ。これからです。みんなも、マイアも」

「やる気に溢れているようだが、謙虚とも取れるな。お前はメヘルブの救世主なんだぞ?何なら我こそが新たな神だと驕ることも出来ただろうに」

「碌なことにならないでしょう、絶対……。それに、私はメヘルブという一世界を救っただけで、この街に生きる人類を救ったわけではありません。だから指導者として名乗りを上げたのです。『神』の意味を知らない人々に、そのおまじないの本当の意味を伝えていくために」

「……そうか」

 マイアはリビングへ通じる扉を開けた。休日とはいえ彼女にも用事が沢山あるはずだ。私が皆に会いに行きたいように、彼女がいま会いたい人、マイアに会いたい人がそれぞれ待っているのだろう。

 だから止めなかった。……しかし、マイアは黙って見送る私の反応に機嫌を損ね、「ちょっと待ってろ」と棘のある声で言って消えた。

 ベッドで膝を伸ばして座ったまま、奪還した女性と語らい、ワインを堪能する。……性に合わない。ここに来たばかりの頃は不安や浮足立つ気持ちから可能な限りの贅沢を欲していたが、今では怠惰に落ちぶれる予感がして愉しめない。

 とりあえず起きなくては。ワインは……勝利の美酒として開けた分はいただくが、飲み切ったらすぐに活動を開始しよう。

 関係者以外立ち入り禁止となる今日の教会。クウラさんは満喫している頃のはずだが、テオとロールにとっては退屈だろうから、様子を見にまずは食堂へ向かおうか。

 ……それに、ただ悪神から解放された最初の日を記念して聖堂を無人にしたわけではないのだから。

 ワインを飲み干して行動に移る……というところ、本当にちょっとの時間でマイアが戻ってきたのでつい吹き出しそうになった。性格以前に、優雅に酒を嗜む能力が私には不足していた。

「これ、一応新品な」

 マイアが持ってきたのは私が纏う衣類の一式だった。キャソックとクラジーマン、ズボンにストラ。……その上にはハサミが乗っかっていた。

「どうしてハサミを?」

「うん?まあ、気持ちの切り替えかな」

 意味が分からないまま、畳んでまとめられた新品の衣類が毛布の上に放られた。

 あまりにも遅いが、今の私は昨日と同じクラジーマンとズボンを着用している。ワインと汗の臭いが混ざっている。

「これさ、いる?」

「正直いらないですね」

 マイアが手に取ったのはストラだった。

 肩に掛ける碧色の長帯。たとえ聖職者でなくなってもこれまでと同じ格好で過ごすつもりだが、その中でストラには左程用がない。欲しいという者がいれば、倉庫にいくらでも備えがあると教えてもいい。

「じゃあ、こうする」

 ベッドを揺らして私の隣に座ったマイアは、あろうことかハサミでストラを縦に切り抜いていった。

 成人男性の親指程度の横幅で長帯を直線切り。意外に器用だというのは、知っていても意外に思えた。

「これでよし」

「……内職?」

「ちげぇよ。ほい」

 マイアが紐同然のそれを私に渡してきた。まだ意味が分からないまま反射的に受け取ると、マイアはハサミを椅子に置いてからはっきりとこちらに背を向けて座り直し、水平のうなじを自慢するようにセミロングの髪をかき上げた。

「結べ。クウラとか、あの白い男みたいな感じで」

「……なるほど」

 正座の姿勢でマイアの背後に膝を置き、オーダー通りポニーテールを作ってからストラの切れ端で結ぶ。

 クウラさんはゴムで留めていたはずだが、こちらは柔らかいストラ。上手く固めることが難しく、何度もやり直す羽目になった。

「残念でした。はい、最初から」

「クウラさん……には妙な誤解をされそうなので、ユアンに教わればよかった」

 上手くかっこつけられない私をマイアが愉快に嘲笑う。

 ただ、怒られることはなかった。私としては同年齢の女性の髪をベタベタ触ることに尋常じゃない罪悪感を覚えるが、マイアの方は嫌じゃないのだろうか?

 リトライを繰り返すとコツが分かってきた。もっと強引に髪を縛っても怒られないことに気付き、遠慮せずキツく縛って蝶々結びで仕上げた。

 完成を伝えると、マイアが結び目を触って出来を確かめた。私としては均整の取れた見映えの良いポニーテールを作れたつもりだが……感想やいかに!?

「うーん、ちょっと緩い気がするけど、まあこんなもんか」

「……崩れたらシスターの誰かに直してもらってください」

 初めの『困難』は思いもよらぬ内容で苦戦を強いられたが、最低限の妥協をいただけた。

 いつもは彼女の首筋など覗えないから新鮮だ。口は悪いがやはり美人なのだと、後ろ姿だけで思い知らされる。

 私としてはこれだけでもう十分な報酬を得られたつもりで、慣れないことに挑んだ甲斐があったと満足しているのに……。

「マイア、私も起きますから、マイアも降りて――」

 ……結果などないと自分で言ったくせに、昨日の勝負が忘れられない。加えてもう読心術などないのだから、とうにマイアを追い越したつもりでいた私は呆気なく不意打ちをお見舞いされた。


 ――隙だらけの唇が、ワインレッドに染め上げられてしまった。


 十秒間の接吻後、互いの唇が離れた。なおも互いの顔を近づけて。

 紅潮も驚愕もなかった。……いや、多分あとから来るが、一先ずは堪えられた。

 マイアと至近距離で見つめ合うと、瞬きさえ出来なかったからだ。

 ……私が何か言わない限りずっと時が止まったままな気がする。

 それにもう限界……。根性でマイアより後に顔を離したが、今回の勝負は私の完敗だった。

「だから、ズルいって」

「悔しいなら、今度はお前が私の心を読んでみな」

 したり顔のマイアが囁き、微笑み、勝ち誇る。今、ようやく目を覚ました気がする。

 動悸……平常。目……泳いでない。まだ大丈夫だ。彼女が退室するまで何とか堪えろ。

「じゃあ、私は部屋で待ってるから、お前は聖堂に行ってこいよ。それが狙いで休みにしたんだろ?あいつもちゃんと待ってるから、男見せろ」

「……はい?」

 声のボリュームを上げて動揺するところだが、ここも耐えた。これからやることは決まっていて、その後もマイアの試練が続くのであれば、取り乱すにはまだ早いからだ。

「マイアはなぜ待っているのです?」

「お前のリビングを掃除するためだよ。暴れた跡はどうにもならんが、他にも紅茶とか血の跡で大変なことになってんだぞ。忘れたのか?それくらいなら珍しくやる気のマイアさんが綺麗にしてやるって言ってんだ」

「えっ、本当に珍しいですね。大丈夫ですか?貴女、本当にあのマイア?」

「まだ悪夢の中にいるつもりか?ダラダラやってないで早く行け。あっ、用が済んだら掃除用具を持ってきてくれな」

 マイアが先に寝室から出ようとする直前、懸命に、それでも丁寧に彼女の名を呼んだ。

 マイアは振り返らずに立ち止まった。私の言葉を待っている。

 そんな彼女にしょうもないことを聞いてみる。きっと、今しか聞けないことだから。

「これからの事はこれからでいいでしょう。だから、その前に一つ教えてください」

「……何を?」

 新しく始まる今日という日、微睡みのような休日だからこそ、貴女に教えてほしいことがある。

「これまでの私は、貴女にとってどうでしたか?」

 一日はまだ始まったばかりだというのに、もう酔ってしまったのかもしれない。

 マイアが僅かにこちらを向く。表情が覗けないくらいの微動で。

 それから髪をクシャクシャと掻いた。せっかく結んだのに崩れてしまいそうだ。

 ……そんな努力の結晶さえどうでもよくなってしまう衝撃に遭う。

「初回から九回表までは私がリードしていた」

 ほんの少し、マイアなりの勇気で私と向き合おうとしたようだが、直前で引き返してしまった。

 しかし、マイアには悪いが……。

「……けど、九回裏にひっくり返された」

 ほんの一瞬、彼女の頬がワインよりも魅惑的なレッドに染まっていたのを見逃すはずがなかった。

「何の例えですか?」

「勉強しろってことだ。……愚かなカイル」

 扉を閉める手は優しく、いつものマイアじゃなかった。

 すぐに着替えて私も寝室を出ようとしたが、そう易々と事が運ぶはずはない。

 私なんて顔中真っ赤になっていることだろう。両手で爆発寸前の爆弾を覆い、仰向けで倒れた。

 こんな報酬が待っているのなら地獄やホラーも悪くない。嫌なこともたまにはやってみるものだ。

 とはいえ、これでは聖堂で待っているシスターに顔向けができない。酔いを醒ましてからの方がいいと思い、着替えも後回しにして開けっ放しの窓の前に立つ。

 新しい人生が始まる。一体どんなカラーで私の世界が彩られていくのか。未来への期待は絶えることがない。

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