/24カルセオラリア 援助



〔ひつじがいっぴき うさぎがにひき からすがさんひき…〕


新しく街に落ちてきた子供は、たいそう心配な子供であった。谷の底にとって見慣れた子供たちが好奇心旺盛の楽観主義だったり、天真爛漫な子供だったりしたせいもあっただろう。いつも何かに怯えたような表情と、ふっくらとした頬には似合わない色濃く染み付いたクマ。ふらふらとした頼りない足取りとぼんやりとした態度はあからさまに眠たそうなのに、眠るのを怖がっている様子は痛々しさすらあった。

口惜ししうにするのは街の安息のためにといるドクターだ。ドクターは表面化した傷には強いが精神における傷には弱いので。


はてさて困った。いっとう気をさいていたのはやはりというか兄役で、あの手この手で眠れるようにと尽力するとあんまりにも夜に好かれてしまっているらしい少年の根本治療には程遠い(兄役には夜間、毎日ではないが国に上がっての“おしごと”もあったうえ、そもそも彼自身静寂のうちでなければ眠れないというデバフもあったので)


すると今度はまた新しく、子供が落ちてきたのだからもう一体全体国はどういうつもりなのか。舌足らずな少年に濁った目なんてさせるものじゃあないというのに。


不幸中の幸いだったといえばこの子供達がすっかりと仲睦まじくやれたことだろうか。勿論その立役者は街で生まれた子供である少女_____最近は何やらロップという名前を愛称としてつかっている子供だ。天真爛漫でいちばん見てくれからは幼さがあるだろうが、ロップは人をよく見た。小動物みたいに人の心にするりと寄り添ってきて、いたいところは慰めるように見て見ぬ振りができる。だからまるで種類の違うように見える3人は気がつけばすっかり仲良くなった。

ロップにヒツジにカラスなんて、秘密基地みたいなあだ名を自分から自称し始めた時にはなんとも街が和やかな空気に包まれた物だ。


その頃あたりだろうか。みるみるうちに…とまでは言わずとも、カラスの目下のクマが少しばかり薄まってびくびくと怯えた様子が収まったのは。時折不安がる仕草を取ろうものならすかさず両脇から擦り寄った2人が当たり前にと手を繋ぐ様から予想はついた。

兄役は喜びと同時になんだかちょっぴり兄離れされたような寂しさを覚えてしまって、ドクターは自分の力不足に嘆いたりもしたけれど、それは蛇足。


いまやカラスと呼ばれる少年にとっての現実は恐ろしく、不安と悲しみがあって、それでも目が覚めたいと願うほど暖かなものがある場所だった。




だって怖い夢も、目が冴えるほど万能感に溢れる恐ろしい夜も、孤独ではない。夜更かしなんて背徳的!

怖いと泣けば抱きしめてくれる、手を握ってくれる、ふにゃふにゃと笑ってくれる、ああ、ああ、こんな夜でなければもう生きてはいけない。


そんなまひるをわたしにちょうだい

呼びかける女の声は聞こえないふりをした。

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