/17ポトス 長い幸



〔思い立ったが吉日 思いついたが運の尽き〕


「そう、だなぁ。見た目はやっぱり、人に近いほうがいいかな。なんだか、機械そのものだと無骨に思えちゃうから。でも別にそれはさ、人になって欲しいとかそういうんじゃなくて…やりやすさを考えるなら目は大きくてアーモンド形のレンズっぽいのがいいよね。それから看護師服はマストだよね。キャップには十字マーク。色々と詰め込んですぐに緊急事態にも対応できるように変形機能は必須かな。………ところでなんで急にそんなこと聞いてきたの?」


なんだってできる生き物はいない。なんだってできるように見えるだけ。あらゆる事に精通しているように見えたって万能ではない。

_____ア、科学者に関して、万能と錯覚したことはあれどなんだってできると思ったことは実はない。人間に対しての無関心さからくる道徳と倫理とかのポンコツ具合はよく知っている。あと効率性を求めるあまり(これは科学の国の人間特有かもしれないが)芸術的センスが疎いところも。SF風と思えばサイバーちっくでカッコよくシャープかもしれないけど。


そもそも唯我独尊を地でいきただ自分の好奇心のためだけに生きているような男が急に意見を求めてきたのだ。疑問に思って問いかけるなどではなく、どういうのがいい?と。意見を!


「だって君、効率と利便性と同じくらいの位置付けで見た目を判断材料にいれるじゃないか。」

「君が気にしなさすぎなのもあると思うよ?」

「おんなじ性能のものなら見た目が気に入ったものばかりリピートするし」

「そのほうが気分上がるし…」

「だからだけど」

「は?」

ついうっかりとつっけんどんにと返してしまうと、子供のように口をム、とさせた科学者があおいろの瞳をぎゅうと窄めてわかりやすく拗ねた顔をした。


「科学の国はあらゆる利便を尽くして、文明によって発達した国だ。」

「うん?うん…」

「足が欠けようとも目が抉れようと胃に穴が開こうと大抵なんとかなる術がある。」

「あー、ね。」

「ただそれらの技術は凡庸的に、全国民に平等に普及されてるわけじゃない。」

「まぁそうじゃなきゃ医者っていう職業は無くなってるだろうね。」

「だからなんだけど。」

「はぇ」


『動く病院、機械仕掛けのナイチンゲール、あらゆる医療の技術と知恵を詰めたアンドロイドを作る場合どういう見た目だったら好ましい?』


科学者のあおいろの瞳は確かに膨らんだ女の腹へと向けられていた。


「……私のため?」

「僕のためだけど。」

「でも私のためでもあるじゃん。」

「…まぁ君のためにもなればいいかな」


「………私のこと大好きだったりする?もしかして。」

「嫌いだと思ってたの」

「まさか。……まさかぁ。」

女の顔が喜色に染まって、頬が赤らんだ。もう耐えきれないと抱きついてしまうと、意外にもそのまま抱きしめ返されたのだから顔が緩んで仕方ない。


「これからもよろしくね、あなた」

「…はいどーぞ」

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