/4 ポットマム 高潔
〔それは気高くけがれのない命令だった
ならば、我らの懇願は穢れていたのか〕
百年以上と続いた戦争のきっかけは最早今を生きる若者達には知らぬこと。
生まれた時からそうだった、敵は敵だと教わっていた、たったそれだけ。たったそれだけで戦争は百年以上続いていた。
それだけでも、それだけではなかった。
側から見ればみっともない泥の掛け合い、無意味なやり取り、やめればいいのにと嘯くようなこの世で最もくだらない悲劇量産システム。
どっちが悪いかなんて百年以上と屍たちを積み上げた彼らにとっては最早どっちでもいいこと。どっちかが引けばいいじゃないか、なんて、引けば押されて賊軍官軍。結局勝ちたいなんて言うよりも負けたくないって言うだけのオハナシ。
誰も彼も好きで“そう”しているわけじゃない。
銃撃で目を覚ます朝、血を流す花火が落ちた昼、警報で眠れなかった夜。
昨日はあったカフェが瓦礫の下敷きになっていた。今日会うはずの友達の家が炭になっていた。明日行きたかった病院が真っ赤に染まったのをテレビで見た。
そんなことばかりで心が痛むのがわからなくなって、その癖に疲弊はするばかりの非日常を日常として慣れたくはなかった。
ある日、流星が降った。
突然に現れた流星が落ちてきた。
流星はこの世のものとは思えなほど美しく奇怪な形をしていた。
「みんななかよくしましょうね!」
気高く汚れなどいっさいありえない流星はツギハギに縫い合わされた平和を齎した。
そんな高潔な事を想って実践できないのが人間なのだということを、あの美しい化け物は知らないのだ。
其の結果が蠱毒染みたものであっても、終わらぬ戦場の成れの果てとはたしてどちらが良かったのだろうか。
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