あの子と僕

女子のメンタルは弱い。けど立ち直るのも早い。

 そんなことを思ったのは、昨日あれだけ泣いていたあの子が翌日には元気になって学校に普通に来ていたからだった。人の心配をよそに「今日の給食揚げパンだって」と無邪気に目を輝かせているのを見て、周りの人たちはどっと笑い出す。なんやかんや楽しそうな様子を見て、昨日のことは引きずってないんだ、とこっそり息をついた。


実は昨日みたいな、情緒不安定な時期が何度かあったのでこっそり気にかけてはいたのだ。急に呼び出しては何をいうかと思えば泣き出す...正直迷惑だと感じざるを得なかった。


「ね!」


気づくと眼の前にはあの子の顔があった。机の前にしゃがみこんで、じっと僕の目を見ている。あの子の瞳の中には、歪んだ僕ときれいな茶色がゆらゆらと揺れていた。

 何を自慢したいのだろうか、とても嬉々とした表情をしている。気まずくて視線を少しずらすと、上下する眉の下に小さなほくろを見つけた。近づかないと見えないくらい、とても小さいなぁと思った。


「...何か?」


今度はしっかりと目を見て尋ねる。すると周りがだんだん静かになっていく感じがした。

一瞬の緊張した空気が流れたあと、あの子はふわっとした笑みをうかべたかと思えば、頬を叩き、今までにないくらい真剣な表情をして言った。


「これから私に付き合ってほしい」


次の瞬間にはもう、僕の体は。一層激しくなった教室の中で、あの子が腕をグイグイと引っ張って教室の外へと僕を連れ出していく。突然の状況に驚いていた僕は、されるがままの状態で「え、ちょっと、な」しか言えなかった。僕はうつむきながらもズルズルと連れて行かれてしまったのだった。

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後の祭り ひじま @hijima316

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