第117話

 「改めまして、今後とも宜しくお願い致します」


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氏名 ビアンカ・グル(23)


パーソナルデータ 力K 体力K 精神I 器用J 敏捷K 魔法耐性I


スキル 事務管理J 人材育成I


魔法 生活魔法K 風魔法J 


ジョブ 無職


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「宜しくお願いします。

家族への多大な配慮、心から感謝致します」


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氏名 ビビアン・グル(19)


パーソナルデータ 力I 体力I 精神J 器用K 敏捷I 魔法耐性J


スキル 長剣I 事務処理J


魔法 生活魔法K 氷魔法K


ジョブ 無職


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「俺は侵略者だぞ?

家族を追放し、お前達を平民に落とした当人でもある。

憎いはずだろうに、何故そこまで丁寧な言葉を使える?

仕事さえきちんとすれば、言葉遣いくらいで罰を与える気はないから安心しろ」


言葉を発しながら深々とお辞儀をしてくる姉妹に、苦笑しながらそう伝える。


「私はあなたに感謝こそすれ、憎んでなどおりません。

普通なら、敗者は皆殺しか、凌辱後に奴隷に落とされます。

なのにあなたは、家族の誰も手にかけなかった。

十分な物資を持たせて、護衛まで付けてくれました。

本当に感謝しています」


ビアンカがそう言って微笑む。


「君は人が良過ぎる」


「私達の身体も要求せず、部下として町の行政に携わせていただけるなんて、占領された時には思いもしませんでした。

・・確かに、失われたものはあります。

でも、そんなに悲観するような状況ではありません」


ビビアンもそう口にして笑う。


「・・見かけによらず、随分とたくましいようだ。

これなら直ぐに話ができそうだな。

ここでは何だから、屋敷の中でしよう」



 「先ずは君達2人の待遇から。

領主補佐官として、俺の指示通りに働いて貰う。

給与は月に金貨2枚ずつ。

住む場所はこの屋敷で構わない。

・・ここまでは良いか?」


応接室に入ると、残っていたメイドがお茶とお菓子を運んで来てくれる。


それを口にしながら、早速話を進めた。


「はい。

有り難うございます」


「分りました。

でも、金貨2枚なんて凄いですね。

もっと少ないかと思ってました」


「この町は人口が多いからな。

その分、かなりの仕事量になる」


「う、・・頑張ります」


「仕事の内容だが、当面はやる事が限られている。

貴族制と奴隷制の廃止を伝え、それに不満がある者は、この町から出て行かせる。

貴族は君達しか残ってないから問題ないが、奴隷制の廃止は抵抗が大きいはずだ。

しかし、これは徹底させる。

反抗すれば、その者は死罪だ」


「「・・・」」


「それから、税率は15パーセントに落とす。

この町の騎士団は、身分をそのままに、衛兵として使う。

帝国との戦争にも参加させるつもりはない。

数も俺が3分の2に減らしたから、ヒーラーを別の部署に配属させればちょうど良いだろう。

その分、軍事費を削減できるし、15パーセントでも余裕なはずだ」


「ですが、奴隷を所有する富裕層が町を出て行けば、その分の税収が大きく減るのではないですか?」


「稼ぐ奴が変わるだけで、稼ぐ場所は同じな訳だから、1人から大きく取るか、複数から少しずつ取るかの違いでしかない。

それに、この町では商売を独占できていたとしても、他の町に移ればそうはいかない。

その町の既存勢力を相手にしながら、また1から販売網や顧客を作らねばならないんだ。

頭の良い奴なら、奴隷を解放してでもこの町に残るはずだ」


「成程」


「町から出て行った奴の家屋は、領主である俺の所有となる。

勝手に空き家に移り住まないよう、衛兵となる騎士達に徹底管理させる。

その上で、希望者にはそうした空き家を販売し、利益を上げる」


「・・解放された奴隷達が町に溢れた場合、その者達はどうされるのですか?」


「若い女性の希望者には、ダセに建設中の娼館で働いて貰う。

俺とその部下が管理するから、適正な賃金と快適な住居を保証し、老後も別の職に就かせるなどして最後まで面倒を見る。

男性なら、カコ村に移住して貰っても良い。

現在、あの村は幾つもの改革の最中で、とにかく人手が欲しい。

人口をもう100人程増やしても良いくらいだ。

ゼオへ行く途中の村々にも改革の手を入れ、そこに住んで貰うのも手だ」


「文官はどうしますか?

現在の人員をそのまま使います?」


「後でそいつらを一箇所に集め、俺が集団面接をする。

それに合格した者だけを継続雇用し、不合格者は即刻クビだ」


「この屋敷のメイド達は・・?」


「この後全員を見て、以下同じ」


「・・あの、あなたのお名前をお聴きしても宜しいですか?」


「まだ言ってなかったか?

西園寺修だ」


「西園寺様へのご連絡はどうしたら宜しいですか?

あなたはここに留まられる訳ではないですよね?」


そうなんだよな。


手を出さないとアルビンに約束した以上、彼女達に『念話』を仕込むことができない。


暫くは、毎日顔を出す他ないか。


「この屋敷に俺専用の部屋を1つ作る。

暫くはそこに毎日顔を出すから、何かあればその時に相談してくれ」


「え?

毎日ですか?

どうやってここまで?」


「それは秘密だ」


「私の部屋の隣が空いてますよ?

ベッドしかありませんが、そこで如何です?」


ビビアンが楽しそうにそう尋ねてくる。


「ある程度の広さがあれば何処でも良い。

トイレの側でなければな」


「フフフッ、使用人の部屋じゃないんですから、ちゃんと離れていますよ。

じゃあ私の隣で決定ということで」


「・・何でそんなに嬉しそうなの?」


ビアンカが疑わしそうに妹を見る。


「別に。

ただ、時々剣の稽古をつけて貰えたらなと思って」


「あなたじゃ相手にならないでしょ。

2000の軍隊に勝つようなお方なのよ?」


「勿論、手加減はしていただくわよ。

指導して貰うだけなんだから」


「全く、騎士でもないのに剣なんか振り回して。

怪我をしてからじゃ遅いのよ?」


「大丈夫。

西園寺様は回復魔法まで使えるのだし」


「暇な時なら構わないが、実は、俺からも君達2人に頼みがある。

・・風魔法と氷魔法を伝授して欲しい」


「「!!!」」


「・・西園寺様、『鑑定』をお持ちなんですか?」


「ああ」


「不器用なのがバレちゃった」


「でも、魔力循環ではなく魔法の伝授となると、最低でもあれをやらないと・・」


例の、恋人繋ぎで両手を繋ぐやつだ。


「駄目だろうか?」


「私は全く問題ないよ」


ビビアンが即答してくれる。


「私も嫌ではありませんが、その、まだ男性経験がありませんので、過剰に反応してしまう恐れが・・」


「お姉ちゃんのエッチ」


「何ですって!」


この姉妹、仲は良いが、性格は大分違うな。


「もし我慢できなくなったら、西園寺様に慰めて貰えばいいじゃない。

彼、5人も奥さんがいるらしいから、きっと相当上手だよ?」


「ビビアン!」


「えへへ。

冗談だよ。

御免なさい」


そんな遣り取りを経て、俺はどうにか魔法を教えて貰えるようになった。

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