第112話

 村人の1人が俺を見るなり村長を連れて来て、その村長が、冒険者である俺に依頼があるという。


俺が自分から冒険者だと明かした訳でもないのに、恰好かっこうから判断したのか。


冒険者のランクは世界共通だとエレナさんから聴いたことがあるが、ギルドを通さない依頼は評価に繋がらないし、最初は断ろうとした。


だが、こちらの都合を無視して話を始めた村長曰く、『近くの森に盗賊が巣くってるから、是非退治して欲しい』とのこと。


俺が怪しいと感じたのはその報酬で、大した村でもないのに金貨5枚出すと言う。


胡散臭さを感じた俺は、前金で半分貰い、サリーに『念話』で夕食に行けないと告げて、その森へ。


予感は当たり、村人のような恰好をしてはいるが、どう見ても只の平民には見えない連中が、二十数人そこに居た。


統制の取れた動きで、まるで騎士のように無言で攻撃してくる。


でも、さすがに相手が悪かった。


俺相手では、戦闘と呼べるものにすらならない。


赤く映らない奴も数人居たので、そいつらだけは殺さず、手足の片方を砕いて放置した。


装備を回収し、死体をレッドスライムに処理させ、村に戻る。


村長達は俺が生きていることに驚いたが、レッドスライムが吐き出した指輪を見せると納得し、素直に後金を支払った。


まだ生きている奴が居ると教えてやったら、慌てて村人数人を向かわせていた。



 村を出て10キロばかり進んだ場所に転移魔法陣を設置し、家に帰る。


訓練の始まりを待っていた妻達を連れ、浴室に。


それが終わるとエレナさんを部屋に呼んで、『回復魔法』を仕込むため、3時間程抱いた。


『それ駄目ーっ』とか『そこは駄目なのー』とか言いながら、喜んで激しく悶える彼女を見ながら、俺は憧れのお姉さんを抱くようなイメージで腰を振る。


初めて出会ったギルドでの会話。


彼女の自宅で火魔法を教えて貰った時。


一緒に入浴し、キスをされたあの時間。


そんな、まだ昔とも呼べないような数々の光景を思い出しながら、美しく喘ぐエレナさんに覆い被さる。


この人はもう俺の妻だ。


俺だけのものだ。


必死に四肢を絡めてくる彼女自身が、俺の物を締め付けて放さないその内部が、身体全体でそう告げている。


結婚したとはいえ、まだ10代の俺達。


向こうの世界なら、先輩の彼女を激しく攻める後輩彼氏にでも見えるだろうか?


『修君』


エレナさんには、ずっとそう呼んで貰おう。



 就寝のために皆が自室に入った後、夜の探索へ。


ドラゴンゾンビは今日も『毒耐性の書』を落とさず、『照明』を加減した森の中で、太い樹の幹に両手をついて腰を突き出すウンディーネ相手に、着衣のまま腰を振る。


それが済むと、狩った魔物をレッドスライムに処理させながら、どんどん先へと進む。


ゼルフィード側の入り口からここまで、一体どれだけの距離を進んで来ただろう?


縦横に進んだとはいえ、数千キロどころでは済まないのは確かだ。


【アイテムボックス】に入っている食用や素材用の魔物は既に5桁に迫る勢いで、他の場所のを含んでいるとしても、売れば幾らになるか見当もつかない。


金色の点を見つけても、そこにあるのは遺骨や装備ではなく、宝箱のことがほとんどになってきた。


その分、実入りは良いのだが、少し味気ない。


そんな事を考えていた時、『マッピング』上に新たなマークが出現した。


ダンジョンとは異なる形のそれは、もしかして迷宮?


急いでその場所に行くと、入り口からして違う。


自然的な外装に隠された、実に機能的な内部。


無機質な、先の見えない広い空間に、所々魔物が蠢いている。


『名称:ゴーレム

ランク:H

ドロップ:土の魔石』


緩慢な動きではあるが、装甲は堅そうだと思って拳を突き入れると、意外ともろい。


魔石を落として消えて行く。


『名称:ロックタートル

ランク:H

ドロップ:土の魔石』


蹴り一発で消滅したが、何も落とさない。


ドロップは確定ではないようだ。


『名称:ストーンソルジャー

ランク:G

ドロップ:土の魔石』


埴輪に似た、石の剣を使う魔物と相対する。


石のくせに動きが滑らかで、剣速がそれなりにある。


拳で頭を砕くと、魔石を落として消滅した。


1階層はこの3種類だけのようで、後はひたすら数をこなす。


約300体を倒し、魔石23個を獲得して、2階層への階段を降りる。


『名称:ロックバード

ランク:H

ドロップ:土の魔石』


ムカつくことに、今の俺にはこいつに有効な先制攻撃をする手段がない。


『ファイアボール』を当ててみたが、属性が関係するのか、Jランクでは大してダメージを与えられなかった。


仕方なく、相手が攻撃してくるのを待ち、カウンターで倒していく。


『名称:アイアンゴーレム

ランク:F

ドロップ:土の魔石』


その名の通り、鉄でできたゴーレムな訳だが、勿論俺の拳や蹴りで砕ける。


ドラゴンゾンビの身体なんて、朽ちかけなのに、この倍近い硬さがあるのだ。


『名称:鉄の乙女

ランク:G

ドロップ:土の魔石』


女性の顔の下に鉄製の棺のような物を付けた魔物で、攻撃する際は、その棺を開いて相手を中に閉じ込め、内部の鋭い鉄の棘で串刺しにしようとする。


ただ、顔の部分は比較的脆いので、そこを狙うと効果的だ。


ハンマーのような物で、力任せに棺自体を壊すのもありだ。


俺は前者を採った。


生きている存在ならともかく、魔力で動く機械のような相手にまで、気を遣う必要はない。


とはいえ、あまり気分の良いものではないから、積極的に相手にすることはしなかった。


2階層はこの3種類で、約200体を倒して魔石36個を得た。


3階層の階段を降りると、広いフロアの所々に個室が存在する。


勿論、その周辺にも魔物が居る。


『名称:ゴルゴン

ランク:F

ドロップ:土の魔石(高濃度)』


髪が蛇で、下半身も蛇な女性型の魔物。


その眼から石化魔法を放ってくるが、魔法耐性がF以上なら石化しない。


俺はぎりぎり大丈夫だった。


彼女の攻撃はこれと鋭い爪だけなので、石化さえしなければ簡単に倒せる。


寧ろカモだった。


『名称:コカトリス

ランク:F

ドロップ:土の魔石(高濃度)』


鶏を巨大化したようなこの魔物も、ゴルゴンと同じで、魔法耐性が高ければ問題ない。


ただ、目からの石化攻撃の他に、毒性を持つくちばしと爪が厄介かもしれない。


俺には『毒耐性』があったので、それすら問題なく、こいつもカモの部類に入った。


周囲の掃除を完了してから、個室のドアを1つ1つ開けていく。


宝箱が置いてあった。


蓋を開けると、『土の魔石(高濃度)』が30個入っている。


次の個室にも、やはり同様の宝箱。


そして3つ目の個室で、魔物に遭遇した。


『名称:大地の乙女

ランク:E

ドロップ:土の魔石(超高濃度)』


全身土色をした、人間の女性のようなフォルム。


両手に長剣と盾を持ち、その攻撃はかなり鋭い。


倒せはするが、俺でも油断できない相手だった。


2度目からは『ガイア』を装着し、万全を期して個室の扉を開け続ける。


宝箱は4割くらいで、残りの6割が大地の乙女だった。


全部で100ある個室を全て開け終えると、俺の全能力が1つずつ上がっていた。

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