第93話

 「届けてきたぞ」


夕方に差し掛かる頃、依頼主の屋敷に出向く。


「は?

・・もうですか!?」


「ああ。

これがサインと代金だ」


ヤギンが半信半疑でそれを受け取る。


「・・確かに。

一体どんな方法を使ったのですか?」


「秘密だ」


「どうか私共と専属契約を結んではいただけませんか!?

報酬は常に3倍出します!」


修と契約することができれば、これまでは不可能に近かった、生物なまものの取引ができる。


他にも、鮮度が重視される果物などを、ほぼ取れ立ての状態で市場に卸せる。


更には、輸送で被害が出ることも考えられない。


毎回、面倒な護衛集めもせずに済む。


彼には、修が金のなる木にしか見えない。


「断る。

グラン商会からも誘いを受けたが、忙しいからと断った」


「では、時々で構いませんから、指名依頼の際だけでも受けていただけないでしょうか!?

勿論、報酬は商会既定の3倍払います!」


「・・俺の都合が良ければな」


「有り難うございます!

こちらが、今回の報酬になります。

お確かめください」


「・・確かに。

では、失礼する」


ヤギン自ら、門まで見送ってくれた。



 ギルドに行って、依頼の達成を報告する。


「相変わらずでたらめね。

もう彼は修君しか指名しないでしょうね。

おめでとう。

Eランクに昇格しました」


「有り難うございます」


「夕食はお祝いね」


小声でそう言うと、エレナさんはにっこりと微笑んだ。



 マーサさんの店で開かれた俺の昇格祝いでは、1番高いワインを4本も空けて、皆が祝ってくれた。


その後の訓練でも、1人1人がお祝いのキスをしてくる。


キス自体はいつものことだが、その質が違う。


何と言うか、物凄く濃厚だった。


ほろ酔い気分の皆が自室で眠りに就く中、サリーだけが最後まで俺の側に居る。


俺が自室に移動すると、彼女も黙って付いて来る。


「何か用事?」


「私にお話があるのではないですか?」


「話?」


「・・今日、エレナさんが非常にご機嫌でした。

修様の昇格祝い前、出勤当初から、笑みが零れておりました。

何か理由があるはずです」


「彼女に特別なスキルを授けたんだ。

ここに住む全員に渡すつもりだから、サリーにも後で・・」


「今お願いします」


「・・今でないと駄目?

今日の訓練は皆激しかったし」


「何のご予定もないのなら、今お願いします」


彼女がバスローブを脱ぐ。


「・・分りました」


どうせ直ぐに習得して貰うつもりだったから別に構わないけど、浴室での訓練時を思うと、少し不安になる。


もし失敗したら、また1からやり直しだからなあ。


この家でのサリーは、性行為でもラスボスなのだ。



 照明を加減した室内に、サリーの断続的な喘ぎが響く。


最初は下になって俺を四股ししで抱き締めていた彼女は、何度か果てた後、己の不利を悟って身体を反転させた。


上体を起こし、馬乗りになって攻めに転じようとした彼女だが、俺からの突き上げに敢え無く撃沈し、直ぐに倒れ込んでくる。


そこで透かさず彼女の背と尻に手を回し、拘束して激しく攻める。


いつもより魔力を強めに流してるから、サリーと雖も意識を保とうと必死に食らいついてくる。


いや、締め付けてくる。


何故1度も放出してくれないのかと目で訴えながら、濃厚なキスで唾液を送り込んでくる。


情欲の高ぶりを抑えるため、目を閉じて応戦した俺だが、それに不満を持った彼女は、両腕を俺の首に回し、更に舌を使って口内をかき回してくる。


サリーのほつれた髪が顔をくすぐり、彼女の汗を上体に塗り込められ、その唾液で喉を潤し、繋がった下半身で魔力循環を繰り返す。


これまでで最も激しい戦いを制すため、俺はサリーに送り込む魔力の濃度をもう一段階濃くした上、両手で彼女の尻を摑んで、俺の物をその子宮口に思い切り突き刺した。


「んー!!」


口が塞がっていたサリーは、声にならない絶叫を上げ、意識を飛ばして痙攣しながら、何度も絶頂を繰り返す。


その回数をしっかりと数えながら、合計で12回になった所で引き抜いた。



 目を覚ました後も、暫くサリーは無言だった。


外れていた繋がりを元に戻しただけで、一言も喋ろうとはしない。


その美しい顔は枕に押し付けられ、明後日あさっての方を向いている。


『馬鹿。

馬鹿馬鹿』


そうとは知らず、彼女から『念話』が流れてくる。


『どうして出してくれなかったの?

私だけあんなに乱れて、恥ずかしいじゃない』


普段なら聴けないような台詞が漏れてくる。


『済まない。

スキルを習得させるために必要だったんだ』


「え?」


枕から頭を上げたサリーが、まじまじと俺を見る。


その拍子に彼女の豊かな胸が擦れて、少しくすぐったい。


『『念話』というスキルで、離れた場所でもお互いに頭の中で会話ができる。

今のようにな』


「予め言ってくだされば良かったのに」


「言えなかったんだよ。

手加減されないことも、入手条件の1つだったんだ」


「ではエレナさんも?」


「ああ。

既に取得している」


「転移もそうですけど、このスキルのことも、絶対に皆に口外させないでください。

もし他国に漏れたら、あなたを巡って戦争が始まりますよ」


「分っている」


「・・それにしても、やはり修様はおかしいです。

女神様から異常に愛されている。

ハーレム王国を作れというご神託はないのですか?」


クスクス笑っているから、最後のが冗談なのは分るが、何故か俺の物を締め付けてくる。


『何で(締め付けるの)?』


『私の子宮が寂しいと言ってます。

修様の精で満たされたいと』


『今日はもう疲れたでしょ?』


『回復魔法を掛けました』


見つめ合い、脳内だけで会話する。


『1回で良い?』


慰謝料いしゃりょう込みで2回お願いします』


『何の慰謝料?』


『私の恥ずかしい姿を見られました』


『いつものことでしょ』


『3回にしますよ?』


彼女の笑みが怖い。


『謝罪するので、2回でお願いします』


『では浴室に行きましょう。

このベッドはもうシーツを取り替えませんと‥』


起き上がったサリーが、部屋の換気を促すために、窓を少し開けた。

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