第72話

 目が覚めた時、隣で眠るサリーの姿を見て、『やっちまった』と反省する。


彼女と関係を持ったことについての言葉ではない。


その行為の酷さに対してである。


俺が放つ大量の精液に含まれる高濃度の魔力に耐え切れず、何度も意識を飛ばしたサリーに対し、俺はその都度回復魔法を行使して半ば強制的に彼女の意識を取り戻させ、嬌声を上げるどころか声すら発することのできない相手を執拗に攻め続けた。


途中までは必死に俺にしがみ付き、異常とも言える快楽に耐えようとしていた彼女も、終盤には陸に身体を動かすこともできずに、力なく、ただ俺の為すがままにされていた。


両手両足の指の数では足りないくらいの回数をこなして、やっと理性を取り戻した俺は、痙攣けいれんを繰り返しながらぐったりと横たわるサリーの姿に物凄い罪悪感を感じ、彼女を抱き抱えると、浴室に急行した。


幸い他の誰にも会うことなく辿り着き、体液で汚れたサリーの身体を丁寧に洗い、自分はさっと汗を流して、再び自室に彼女を連れ帰る。


ベッドのシーツを替え、サリーを優しく横たえると、俺もその横に並んで彼女の様子を眺めていた。


その呼吸が次第に落ち着いてきて、表情が穏やかなものになると、安心感からか、俺もこの世界では感じたことのない眠気に襲われ、つい寝てしまった。


時間的には大した事なかったが、換気のために薄く開けた2階の窓から昇ったばかりの朝日が差し込み、外の空気が入り込んで来ると、徐々に頭が冴えてくる。


どうやってサリーに謝ろう。


先ず考えたのはそれだった。


幾ら同意を得ていたとはいえ、さすがにやり過ぎた。


これまで我慢に我慢を重ねていた俺の性欲が爆発し、暴走してしまったとはいえ、限度というものはある。


今回が初めてだったサリーの身体をもっといたわるべきだった。


思考に沈む俺の頬を、誰かの手が優しく撫でてくる。


頭だけを動かしてそちらを向くと、サリーが穏やかに微笑んでいる。


「とても素敵でした。

まるで全身を作り変えられているような状態の中、私の子宮を荒々しく叩き続ける快楽の塊で辛うじて意識を保ちながら、何度も直に子宮内に浴びせられる魔力の源によって、それさえも強引に奪われていく感覚。

・・病みつきになりそうです」


「身体は大丈夫か?

何処かおかしな所はないか?」


「何の問題もありません。

体中に魔力がみなぎっているお陰で、寧ろ凄く体調が良いです」


念のため、彼女のステータスを覗いてみる。


・・精神と魔法耐性が其々1ランクずつ上がっていて、Fになっていた。


「・・ただ、修様は今後、あまりお一人だけを相手にされない方が良いですね。

その相手が持ちません。

なるべく一度に複数の女性とお楽しみください」


「さっき確認したら、君の精神と魔法耐性が其々Fになっていた。

精神は俺と同格、魔法耐性は君の方が1つ上になった訳だし、大丈夫なんじゃないか?」


「やはり上がっていましたか。

それだけ修様の魔力が濃かったということですね。

・・精神や魔法耐性が、その人の魔力全てを表わす訳ではありません。

人によっては、その人の総魔力量の、ほんの一部に過ぎない可能性もあります。

これらの値は、単に今、その人が自在に操れる魔力量を表示しているという説もあります。

私が修様に例の方法で魔法をお教えする時、全力を出しても安心していられるのは、あなたの総魔力量が桁違いに高いことを知っているからです。

魔力循環の訓練を通して流れ込んで来る修様の魔力は、その濃度において類を見ない程の濃さだと感じます。

私ですらそう思うのですから、ミーナさんやエミリーさんが少しでも耐えられる事の方が驚きです。

彼女達の身体は、余程あなたと相性が良いのでしょうね」


「身体の相性?」


「肉体の相性と魔力の相性は比例します。

だからそれが合う相手と性行為をすれば、通常の倍近い快楽を得られますし、魔法の訓練においても、その習得速度に大きな差が出るのです。

先ず確実に、私達の相性も最高ですよ」


「・・だからあんなに気持ちが良かったんだな」


「ご満足いただけました?」


「それは勿論。

我を忘れるくらいに夢中になってしまった」


「もう1度しますか?」


「え?

・・身体、大丈夫なのか?」


「はい。

もう準備ができております」


俺の太股に、彼女が濡れた股間をそっと押し当ててくる。


「・・でも、そろそろ皆が起き出してくる頃合いだし」


「激しい動きをしなければ大丈夫ですよ。

私が上になりますから、修様は私を抱き締めてください」


覆い被さってきたサリーが、ゆっくりと唇を重ねてくる。


上と下で繋がりながら、俺は彼女の柔らかさだけを感じていた。



 サリーが浴室で湯を浴びている頃、俺はエレナさんの出勤に合わせて見送りに出る。


「修君もそろそろEランクになって貰いたいですね。

薬草採取以外の、討伐系や護衛依頼なんかを受けてくれると助かります」


前回も結構な数の薬草を納めたはずだが、さすがにそればかりではEには届かないみたいだった。


上位ランクになると、指名依頼などの戦闘系のものが増えてくるから、『薬草採取しか経験がないので戦えません』なんて言う冒険者を生み出す訳にはいかないのだろう。


「頑張ります」


「・・サリーさんを抱いたでしょう?」


おもむろに顔を寄せてきた彼女が、耳許みみもとで囁いてくる。


「!!!」


「女の匂いがするわよ?

修君の童貞まで取られちゃったけど、次に私を抱いてくれるのなら我慢してあげる」


「・・・」


「今夜、部屋に行きますね?」


「・・分りました」


「楽しみだわ。

・・行ってきます」


俺にキスをした彼女が出勤していく。


暫くは忙しくなりそうな予感がした。

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