第71話
皆との入浴後、サリーを俺の部屋に呼んで、彼女にカコ村の件を相談する。
「・・成程。
やはり随分と不満が溜まっていたのですね」
「気付いていたのか?」
「それは勿論。
彼女達は表向きには従順を装っていましたけれど、その目を見れば分ります。
あんな暮らししかできない中で、皇子や側近達の要求は度が過ぎていましたし、何かをして貰っても、お礼も述べずに文句ばかり言っていましたから」
「もしかして、帝国の貴族には嫌な奴が多いの?」
「それはそうですよ。
世襲制の最たるものは、汚職と偏見でしょうから。
能力がないのにその地位に留まるためには、周囲にお金をばら
上に居座って変化のない暮らしをしている者は、何時の間にか物事や人種に対して固定観念を持つようになり、その本質を見極めようとはしなくなります。
自分の地位を脅かす者、自分に
帝国だけでなく、何処の貴族も大半はそんなものでしょう。
例外があるとすれば、そんな事をする必要のない貧乏国くらいかと」
「サリーも大分溜まっていたんだね」
「フフフッ、だからこそ、あの時のあなたが輝いて見えたのですわ」
「・・因みに、サリーは今の俺に対して不満などない?
もしあるなら、早急に改善するから遠慮なく言ってくれ」
「1つだけあります」
彼女がソファーからスッと立ち上がり、対面に位置する俺の直ぐ側まで来て、膝の上に
「そろそろ抱いて欲しいです」
息の掛かるほど間近で、濡れた瞳が俺を見つめる。
「何時までもお預け状態なんて酷いですわ」
「いや、そんなに直ぐに皆に手を出したら、まるでそのために一緒に住んだみたいで嫌だろうし・・」
「そんな事を考える
皆あなたに抱かれたがっています」
「それにもう1つ問題が。
(この世界の)避妊はどうなっているのかな?」
「避妊ですか?」
「ああ。
そんなに簡単に子供を作ったら大変だろ?
貴族みたいにメイドに面倒を見させる訳にはいかないし。
ミーナやエミリーには育ててくれる人がいるけど、サリーやエレナさんにはいない訳だしさ。
今君に妊娠されて、子育てに専念されると、俺の行動にも影響が出かねないから」
俺だって男だから、エロ本くらいは読む。
恥ずかしいから書店で購入することはしないが、ネット上で買える電子書籍を幾つか読んでいる。
その中には、女性達が避妊に
一体彼女達は、産んだ後どうするつもりなんだろうと。
行為中の女性達はまだ高校生の少女とかが大半だから、妊娠すれば退学を余儀なくされるだろうし、そもそも親に何て説明するのだろうか。
自分だけで育てられる時間や知識も、経済力もない状態での出産なんて、助けてくれる人がいなければ、大概は子供を不幸にする。
数十ページで完結する商業用の描写だから、そんな事をいちいち考えずに描かれるのだろうが、それは読者である男達の身勝手な行為を助長するだけだ。
新聞紙上で、付き合っていた男に妊娠が分った途端に捨てられ、途方に暮れる女性の記事を度々目にするようになってきたのはそういうことだろう。
そして気付かないのかもしれないが、当該女性の人生をも制限しかねない。
そういう作品に出てくる少女達は、彼女達が女子高生という肩書だから、制服に身を包んでいるからこそ付加価値があり、性行為の過激な描写が存在しなければ、その立場から外れた途端、一気に輝きを失う。
漫画やアニメにおいて、ヒロイン達の職業や状況に
何時だったか、ファミレスで
彼女達は見るからに低能そうだったから、被害に遭った女性は相手にしなかった。
そう思っていたら、その女性は女子高生達が店を出ると、ボソッと呟いたのだ。
『あなた達も
薄ら笑いをしながら吐いたその
その女性の外見は決して悪くはなかった。
恐らく、高校時代はそれなりに持てただろう。
だが、女子高生というブランドから外れ、子育てで活躍の場まで失われた時、その女性に残されたものは、あの呟きに凝縮された何かだけだったのだろう。
勘違いしないで欲しいが、俺は別に子育てを否定したりはしていない。
愛する人との子供が欲しいと言うのは理解できるし、俺自身が両親に愛されて育ったから、たとえ何かが欠けていたとしても、幸せな家庭も多く存在するのは知っている。
ただ単に、TPOをよく選んで行わないと、子育ては女性だけの役目ではないと理解している相手を選ばないと、負担を被るのは常に女性側だと言いたいだけだ。
その時、その立場でしか経験できない事は沢山あるのだから。
「・・もしかしてご存知ないのですか?
避妊薬なら神殿で売られておりますよ?」
「え、あるの!?
でも何で神殿?」
「女神様からの贈り物だからです。
娼館で働く女性や戦地に滞在する女性兵が、望まぬ妊娠をしないようにとのお心遣いから、私達女性に対して
神殿はそのレシピを基に製造し、購入を希望する者に対して100ゴールドで販売しております。
女神様のご厚意を汚さないよう、この値段は、利益なしのほぼ原価だとも言われていますね」
う~ん。
「因みに、これが現物です」
サリーが小さな小瓶を『アイテムボックス』から取り出して、俺に見せてくれる。
「・・用意してたんだ?」
「はい。
いつでもお相手できるように」
「・・・」
迷っている時、視界の端にメールが現れ、それが自動的に開かれる。
『 特別ボーナス
女性からの据え膳に飛びつかない、理性的なあなたの背中を後押しします。
スキル『どっちにするの?』を付与致します。
このスキルは、女性と避妊をせずに性行為をした際、相手の女性に通常通り子供を産ませる可能性を与えるか、あなたが所持するレアスキル以外の内から、ランダムで同じ物を相手に生じさせる可能性を与えるかを選択できます。
例えば、選択肢を『子供』に設定すれば子供が生まれ、『スキル』に設定していれば、何度行為を繰り返しても子供は生まれず、スキルのみが生じます。
行為の結果、女性側にスキルが発生しても、あなたご自身のスキルには何の影響もありませんのでご安心ください。
あなたの明るい家族計画のために、どうぞ有意義にお使いください。 』
またとんでもない物をくれたな。
透かさずステータス画面を確認する。
新たに付与された『どっちにするの?』のレアスキルをクリックすると、『子供』と『スキル』の選択肢が現れ、現在相手側に与えることの可能なスキルが点滅する。
今だと、『長剣』、『体術』、『盾』しかない。
サリーを相手にした場合、俺から彼女に与えられるのは『体術』のみだ。
取り敢えず『スキル』の方に設定して画面を消し、先程から俺の返事を待っているサリーに改めて問う。
「・・本当に良いの?
俺、初めてだから、手加減できないと思うけど」
「嬉しいです。
修様の初めてを、私にください。
あなたに永遠の愛を誓いますから」
その夜、俺達2人は2匹の獣になった。
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