第56話

 待ち合わせ時間ちょうどに、エレナさんがギルドから出て来る。


相変わらず自然に腕を組んでくる彼女に、申し訳なさそうに口を開く。


「済みません、今日はもう1人連れがいるんです。

エレナさんにも紹介したい相手なので、その人も夕食をご一緒させて貰って構わないでしょうか?」


「連れ?

・・女の人?」


「はい。

新しく採用した俺の部下になります」


「部下?

パーティーメンバーではなくて?」


「はい、部下です。

秘書や事務、家事なんかをメインにして貰うつもりです」


「・・良いわ。

是非会ってみたい」


「有り難うございます」


マーサさんの店に行くと、既にサリーが席を取っている。


もしエレナさんに相席を断られたら、別のテーブルに着く手筈てはずになっていたが、そのまま彼女の下に足を運ぶ。


「エレナさん、彼女はサリー・ダルシア。

縁あって、昨日から共に行動しています。

サリー、こちらがエレナさん。

冒険者ギルドの受付で働く、元騎士団員だ」


「初めまして。

サリー・ダルシアです」


「エレナと申します」


俺達が席に着くと、マーサさん自ら注文を取りに来てくれて、『良い心掛けだよ』と一人で感心したように去っていく。


「修君、説明不足よ。

彼女、貴族の方よね?」


俺の隣に座ったエレナさんに、テーブルの下で軽く手を抓られる。


「済みません。

それらのお話については、ここではちょっと・・。

それで、食事の後に彼女を公衆浴場の個室に連れて行かねばなりませんので、今日の訓練を少し遅らせてはいただけないでしょうか?」


「・・私も一緒に入るわ。

どうせ入浴しながら行うのだし、その方が効率的でしょ?」


「え?

・・それはつまり、3人で訓練をするということでしょうか?」


「ええ。

3人で手を繋ぎ合わせれば良いだけだから、問題ないわ。

サリーさんもそれで宜しいですか?」


「はい。

私は構いません」


その後は、取り留めの無い会話に終始して、食事を終えると3人で公衆浴場に向かった。



 「ん・・んんっ」


「ああっ」


公衆浴場の個室に、女性2人の喘ぎ声が響く。


俺の左右の手を片方ずつシェアした彼女達は、3人でするからと、いつもより強めに流した俺の魔力を体内で循環させて、頻繁に身体を震わせている。


特に、初めてこの訓練を行うサリーの喘ぎが凄い。


エレナさんよりサリーの方が、現時点では魔力がかなり強いが、性感を刺激されることに慣れていない彼女は、その快楽に抗う術を知らない。


1時間程して、快楽に耐え切れなくなったエレナさんが、サリーより先に手を振り解いて俺に抱き付いてくる。


激しく唇を貪られ、体を擦り付けられる。


そうしながら、ビクンビクンと身体が跳ねるエレナさんを見て、サリーが呆然としている。


それが済んで再び訓練を続けると、今度はサリーが痙攣し始める。


どうして良いか分らないという、泣き顔に近い表情を俺に向けた彼女に、静かにうなずいてやる。


せきを切ったように抱き付いて来たサリーに、欲望のままに唇を重ねられる。


粘度の濃い彼女の唾液と舌が乱暴に口内に割り入って来て、めちゃくちゃにかき回され、彼女の匂いが口の中一杯に広がった。


そんな時間を2時間ばかり過ごして、訓練を終えて身体を洗う時には、お互いに気まずいのか、女性2人は終始無言だった。



 浴場を出て、エレナさんを家まで送る。


ドアの前で、俺と組んでいた腕を解いた彼女は、遠慮して少し後ろを付いて来たサリーに微笑む。


「お互いにあんな姿を晒しちゃった後だし、もう遠慮なんて要りませんよね?

これから宜しくお願いします」


「こちらこそ宜しくね。

貴族ではあったけど、多分もう廃嫡されてるだろうから、今は平民と同じよ」


「次回、また改めて彼女のことを説明します。

今日は予定を変えていただき有り難うございました」


「ん。

おやすみ」


エレナさんにキスされる。


宿まで歩く間、今度はサリーが腕を組んできた。



 前回と同じ高級宿を一室取って部屋に入ると直ぐ、サリーが衣服を脱ぎながら、訓練の続きを提案してくる。


「修様に土魔法をお教えします」


「有難いけど大丈夫?」


「この部屋にも小さいながら浴室が付いておりますので。

2人で入るには難しいですが、訓練後の汗を流す程度なら問題ありません」


「じゃあ訓練は俺のベッドを使ってやろう。

俺は今晩、寝ないで探索に出るから」


「お休みにならないのですか?」


「どうやら俺は特異体質らしくて、数日なら全く眠らなくても平気なんだ」


まさか、この世界ではずっと眠らなくても大丈夫だとは言えない。


「まあ、羨ましい。

それなら何人女性を侍らせようと問題ありませんね。

一晩中相手をすることが可能ですから」


いや、睡眠は必要なくても、精力が持つかは分らないから。


彼女に合わせ、浴室でもないのに全裸になって訓練を開始する。


「土魔法の『造作』をお流し致します」


相手に直接魔法を教える際のやり方は主に2つ。


魔法を使えない者に魔力を感じて貰うためや、相手の魔力量を増大させるために、単に自分の魔力を相手に流し込むだけのものが1つ。


もう1つは、特定の魔法を覚えて貰うために、覚えさせたい魔法を相手に流し込むもの。


ただこちらは、教える方の魔力が相手より高過ぎると、思わぬ事故に繋がる。


だから、高度な魔法ではまずやらないし、この方法では習得できない魔法も多い。


簡単な魔法でも、事故を恐れて同意しない人も少なからずいる。


教える方が未熟だと、例えば火魔法を教えている最中に、相手が燃えてしまうこともあったからだ。


修とサリーの場合、修の魔力量がサリーを圧倒しているので、彼女は安心して魔法の教授が行える。


修と訓練する女性達が、通常では有り得ないくらいに激しく悶えるのも、彼の流し込む魔力の濃度が濃過ぎることに由来する。


当人は加減しているつもりでも、実際に流し込む量は僅かでも、その濃度がかなり高いため、受け入れる方は大変なのだ。


もっとも、気持ちが良過ぎるせいもあり、女性達から苦情が寄せられることはないのだが。


ベッドの上で対面に座ったサリーが、長い両足を俺の腰に巻き付けて密着し、更に両手を握り合いながら魔法を流してくる。


途中から、唇を重ね、舌を絡めてきた。


通常の何倍もの接触と、彼女が本気で流し込む『造作』のお陰で、俺はたった3時間でそれを覚えた。


そのことが分ったサリーは、汗だくの身体で俺を思い切り抱き締める。


「おめでとうございます」


「ありがとう。

無理をさせたみたいで御免ね」


「いいえ。

とても素敵な時間でした」


微笑む彼女と暫くそのままの時間を過ごし、それから、交互に浴室で汗を流した。

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