第52話

 「初めましてと言った方が宜しいですわよね」


俺が作成した妨害線の大岩に腰掛けるようにして、1人の女性が俺を待っていた。


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氏名 サリー・ダルシア(20)


パーソナルデータ 力J 体力J 精神G 器用H 敏捷I 魔法耐性G


スキル 長剣J 短剣I 盾J 事務管理G 『アイテムボックス』I


魔法 火魔法I 水魔法I 風魔法I 土魔法G 生活魔法I


ジョブ 帝国領ダルシア伯爵家長女


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凄いな。


『アイテムボックス』持ちは初めて見た。


それに、かなりの美女だ。


長身だし、プラチナブロンドの髪は頭上で丁寧に束ねられ、青い瞳は澄んでいて、肌は適度に白い。


その声には、男性の心に響くような艶がある。


「約2時間前、俺に攻撃魔法を連発してきたけどね」


「それは私の本意ではありませんわ。

立場上、形式的には馬鹿皇子を護らないといけませんでしたので」


「死んだとはいえ、自国の皇子に随分と遠慮がないな」


「能もないのにプライドだけが高い人間は嫌いなのです。

それに、もう自国という訳ではありませんし」


「?」


「私を買ってくださらない?」


「は?」


「ですから、私をあなたの奴隷にしてください。

但し、仕えるのはあなただけです。

奴隷契約の際、その事だけははっきりと明記していただきます」


「・・何で?

見たところ、上位貴族のご令嬢のようだけど」


「もう帰る場所がないからです。

馬鹿皇子を死なせた以上、側近だった私達に待っているのは、良くて実家の領地没収か降爵、最悪だと一族の斬首です。

まあ、少なくとも私は無事では済みませんね」


「他国に逃げれば良いだろ?

『アイテムボックス』を持っているくらいだし、お金だって多少はあるでしょ?

それに君、凄く強いじゃないか」


「フフッ、『鑑定』持ちなんですね。

あの戦闘能力にレアスキル持ち、そしてその容姿。

私がお仕えするのに相応しいです」


「こちらの質問に答えていないけど?」


「相手が帝国では、余程遠くに逃げないと安心できません。

リンドル王国のように強国で、敵対でもしていない限り、見つかれば引き渡されてしまいます。

一生逃げ続けるのは面倒ですし。

その点、あなたの下に居れば安心です。

リンドルの貴族で、しかも相当な権力をお持ちであろうあなたの所有物になれば、帝国も手を出せませんから」


「俺、貴族じゃないよ?

しかも家無し。

今はゼルフィードの町に居るけど、それだって、何時まで居るか分らないし」


「はあ!?

貴族でない!?

家無し!?

あなたが!?」


物凄く驚いている。


「うん」


「ならばどうして私達と戦ったのですか!?」


「大事な人の村が略奪に遭いそうだったから」


「それだけですの!?」


「ああ」


「・・・」


「それに、リンドル王国自体はどうか分らないけど、少なくともゼルフィードの町では奴隷所持が禁止されているからね。

君をそうするのは無理だ」


「ではあなたの女にしてください。

妻でなくても構いません。

容姿にはかなり自信があります。

勿論、処女ですよ」


この世界の女性って、皆こうなのか?


積極的過ぎるだろ。


「将来的にはどうなるか分らないけど、現時点で3人も恋人がいるからさ。

・・そういうの、嫌でしょ?」


「全く。

寧ろ少ないくらいですわ。

帝国の皇帝には、側室を含めて10人の妃がおりますわよ」


う、羨ましくなんかないぞ。


改めて彼女をよく見る。


確かに容姿は好みだし、胸だって凄く大きい。


今は青く映って見えるし、有能だから様々な状況で活躍してくれるだろう。


「う~ん。

・・じゃあさ、俺の部下か従業員みたいな感じでどうかな?

人手は欲しいし、その内家も借りるつもりだったから、できればその管理も任せたい。

あ、でも貴族のご令嬢だと家事はしたことないか。

食事は外食で良いし、洗濯も奥の手があるんだけど、掃除は大変だよね?」


「その条件でなら部下の方が良いです。

夜のご奉仕込みでお引き受け致します」


「俺はさ、気持ちの籠っていない性行為を望まない。

だからそれはしなくて良いよ。

他の面できちんと働いてくれさえすればね」


「私がその気になれば、受け入れてくれるのですか?」


「それは・・まあ、可能性が高いね。

俺も男だしさ。

今直ぐには無理だけど」


「あなたの部下になりたいです」


真剣な瞳でそう言われる。


「分った。

これから宜しくね。

因みに、給料は月にどれくらい欲しい?」


「住居と食事を保証していただければ、王国金貨1枚で結構です。

蓄えはそれなりにありますから。

もう社交界に出ることもありませんしね」


能力を考えれば、安過ぎるくらいだね。

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