第38話

 その場所には、装備一式が展示されていた。


それ程広くもない部屋に、岩石のような物で全体を覆われた兜や鎧、籠手やブーツなどが、1つ1つ丁寧に、専用の台座の上に置かれている。


その形から兜や鎧だと判別できるだけで、其々が実際にどんな装備なのかまでは分らない。


装備類の直ぐ側まで来ると、メールが届いた。


『 おめでとうございます。

あなたはこれらの装備を使用できる可能性を入手しました。

今後、ステータス画面に鎧ランクが表示されます。

其々の鎧ランクは最高でS、最低がBです。

ランクは使用を続けることで上がっていきます。

但し、今の状態ではまだ装備を使用できません。

真にご自分の物とするには、これらの装備品に所有者だと認められる必要があります。

その方法はお教えできませんが、あなたが進む道の中に、きっと答えがあるはずです。 』


・・まあ、そうだよな。


これで入手できたら、今まで見せられてきた映像に意味があるとは思えない。


ステータス画面を開く。


______________________________________


氏名 西園寺 修(16)


パーソナルデータ 力E 体力E 精神G 器用F 敏捷E 魔法耐性G


スキル 長剣I 体術D 盾J 『鑑定』B 『マッピング』C


魔法 火魔法J 回復魔法J


ジョブ 冒険者


鎧ランク ガイア(物理)B


【魔物図鑑】


【アイテムボックス】


蘇生可能数 0


ログイン経過時間 ○○〇時○○分○○秒


【ログアウト】


______________________________________


鎧ランクの横に記載された『ガイア』の文字は、まだ使用できないことを示すかのように、白っぽくくすんでいる。


他に何もないことを確認すると、これまで通って来た道を戻り始めた。



 帰りは敵に遭遇することもなく、入り口まですんなり戻れた。


外に出ると、迷宮へと転移する魔法陣が消え、地図上からも『護りの迷宮』を示す印が消滅した。


ここに来るために設置した転移魔法陣の一方を削除し、そこから数時間、未踏の場所へと進んで探索をする。


ステータスがかなり上がったお陰で、もうこの辺りの魔物は相手にならない。


長剣を用いて100近い魔物を狩ると、適当な場所に転移魔法陣を設置して町に戻った。



 何だかミーナに会いたくなって、ニエの村まで走る。


今後のことを考えれば、彼女の村付近にも、転移魔法陣を設置したい。


そのためには、対価となるスキルを1つ覚える必要がある。


ミーナが持っていた『農業』を、彼女から教えて貰おうと考えた。


午前中に村に着き、彼女の家に向かうと、ミーナの祖母であるタナさんだけが家に居て、他は畑に出ていると告げられる。


タナさんに、『この村に空いている土地はありますか?』と尋ねたところ、『既に耕作されている以外の荒れ地は、誰の物でもないよ』と教えられたので、自分の農地を持つことに決めた。


「ミーナのことを真剣に考えてくれて嬉しいよ。

耕作を始めたら登記簿に記載するから、その場所を教えておくれ」


「分りました。

もし使っていない農具があれば、1つ買い取りたいのですが・・」


「孫の夫になるあんたから、金など取る気はないよ。

これを持って行きな」


別の部屋から鍬を1つ持って来て、俺に渡してくれた。


「有り難うございます」


それを持って村の門を出ると、付近の荒れ地を探す。


門から1キロくらい離れた場所に、広い荒れ地を見つける。


村の土地として記載するには、それなりに隣の農地と隣接している必要があるとタナさんに言われたが、念のため、50メートルくらい離して耕し始めた。


岩や石を取り除くことから始めて、序でに邪魔になる木を数本斧で切り倒す。


除去した物は【アイテムボックス】内に入れ、後で何処かに捨てるつもりだ。


ステータスが高いため、他の人の何倍も速く作業が進んだはずだが、それだけで3時間以上が経過し、結構な汗をかいた。


「修さん」


一休みしていた時、ミーナに声をかけられる。


昼食を取りに家に戻った際、タナさんから話を聴いたようだ。


「お昼ご飯を持って来ました。

宜しかったら如何ですか?」


「有り難う。

じゃあお言葉に甘えて・・」


俺がそう言うと、彼女は地面にシートを敷き、木製の器に入った弁当とおしぼりを差し出してくれる。


「お口に合えば良いのですが・・」


蓋を開けると、何かの肉と3種類の野菜の煮物が詰まっている。


パンと水筒も渡してくれた。


「豪勢だね」


「この間頂いたハイオークの肉がまだ残っていましたから。

お陰様で、あれから2日間、ご馳走三昧でした」


「実は君にお願いがあるんだ。

俺に農業の基本を教えてくれないか?」


「・・それって、私と一緒にこの村で暮らしてくださるという意味ですか?」


「御免、そういう意味じゃない。

スキルとして覚えたいんだ。

そのスキルを、ある事の代償に使いたいから」


「スキルを代償に?」


「うん。

今はまだ詳しく教えられないんだけど、もう少ししたらきちんと説明する。

とりあえずKランクになれば良いんだけど、駄目かな?」


「修さん、大分汗をかきましたよね?

この後、例の場所に付き合ってくださるなら、頑張ってお教えします」


にっこり笑って、そう言われる。


「例のって、あの河原の穴場のこと?」


「ええ、そうです」


「もう少し作業がしたいから、2時間後くらいでも良い?」


「それで結構です。

フフッ、嬉しい。

では次回からご指導致しますね。

・・それにしても、大分広い農地を作ってますね。

3000坪以上ありそう」


「村の役に立つかなと思って」


「有り難うございます。

では2時間後にお迎えに来ますね?」


「分った」

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