第28話
エレナさんとの訓練後、オルトナ大森林の地図を拡張すべく、夜の町を歩いて門を出る。
ここからまた、行ったことのある場所まで移動しなくてはならないと思うと、少し憂鬱になる。
ランク上げ自体は楽しいし、素材やお金を集めるのも収集意欲をそそられるから苦ではないのだが、
「もっと楽に移動できればなあ」
つい愚痴を
その時、目の前にメールが現れた。
運営さんが聞いてでもいたのかと、一瞬びくっとしたが、取り敢えずそれを突く。
『 転移魔法陣設置のお知らせ
習得したスキルを1つ消却するごとに、1
この魔法陣は何度も設置し直すことが可能ですので、探索地を変える際はその都度設置し直してください。
勿論、幾つものスキルを消却させることで、その数だけ魔法陣を設置できますから、面倒だと思う場合はそうするのも手ではありますが、あまりお勧め致しません。
1度消却したスキルは再度習得可能ですが、2度目以降の習得には、前回の倍の時間が必要になります。
知識としては得ているのですが、スキルを得ると上乗せされるバフが掛かっていません。
なお、設置した魔法陣は、あなたにしか見えませんし、使えません。
例外は、あなたと一緒に行動し、あなたが認めた人物のみ、1回ごとにその人数分の料金を支払うことで使用が可能になります。
その料金は、【アイテムボックス】内から自動で引き落とされ、金額は1人につき1000ゴールドです。 』
・・運営さん、有り難うございます。
門から少し離れた場所、他からは見え
・・やはり短剣かな。
Kランクだし、今後必要になれば、またその時に覚えれば良い。
短剣のスキルを消却し、この場所に転移魔法陣を作成した。
「これで良し。
あとはできるだけ急いで前回行った場所を越えよう」
『マッピング』を起動させながら、森の中を走り出した。
迂回してやたらに地図領域を広げようとはせず、ほぼ直線距離を走ってきたので、これくらいの時間で済んだ。
ここまでで倒した魔物は、ハイゴブリンの7体だけ。
あとは雑魚ばかりなので見逃した。
ラノベでは、魔物は倒しても直ぐに湧くように書かれていた物が多かったが、この世界ではそうでもなさそうだ。
自然繁殖なら、それこそ数か月や年単位だろうしな。
奥に進めば進むほど、弱い魔物はいなくなる。
この辺りにはもう、Kランク以上の魔物しか見当たらない。
『名称:ハイオーク
ランク:I
素材価値:肉が高く売れる(希に金品を持っている)』
早速2体のカモに出会う。
剣を終い、素手で相手をする。
肉が売れるから、無闇に傷を付けたくない。
ここでの俺の拳や蹴りは、当然の如く、リアルの数倍の威力がある。
1撃で彼らの骨をへし折り、内臓を破裂させる。
仕留めたら、鮮度を保つために直ぐに【アイテムボックス】に入れる。
『名称:エルダーゴブリン
ランク:J
素材価値:なし(希に金品を持っている)』
ん?
初めての相手だ。
しかも4体で徒党を組んでいる。
長剣と盾、兜を装備し、囲まれないように戦う。
途中で蹴りが出るのはご
4体ともお金は持っていなかったが、其々武器を装備していたのでそれらを貰う。
移動途中で地図上に金色の点を見つければ、最優先でその場所へ。
中には10万ゴールドを超える金額になる物もあり、見つけること自体が楽しくて仕方がない。
休むことなく突き進み、森に入って50時間以上が経過した頃、またメールが届いた。
『 特殊イベント
『護りの迷宮』をクリアし、最奥に眠る鎧を入手せよ。
このイベントはあなた専用です。
何度でも挑戦できますが、クリアした後は2度と入ることができません。
クリア後は、ステータス画面の鎧欄に、それを証明する記述が入ります。
報酬はそこに眠る鎧です。 』
・・迷宮か。
大分ゲームらしくなってきたな。
でも、ダンジョンと迷宮とでは、一体何が違うのだろう?
魔物が湧き出る空間を、今は適当にどちらかの名称で呼んではいるが、厳密にはきっと何らかの区別があるはずなのだ。
『マッピング』を確認すると、まだ先、本来なら何も表示されないはずの場所に、迷宮を
「ちょうど良い。
暫くは、そこと町を往復するかな」
地図を頼りに移動を開始し、約15時間後にその場所に辿り着く。
途中でエルダーゴブリンの集落を1つ潰したので、思ったより時間が掛かってしまった。
お宝がある可能性を考えると、無視できなかったのだ。
そして、その期待は裏切られなかった。
数十枚の身分証の他に、50万ゴールドを超えるお金が手に入ったのだ。
中古の武器も数十入手し、ほくほくしながら転移魔法陣を設置する。
「ゲームって、こんなに楽しいものだったんだなあ」
この時の俺は、愚かにもそんなことを口に出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます