第12話

 「・・これらを何処で入手されましたか?」


1つ1つを丁寧に調べながら、その後で俺の顔をじっと見てくる。

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氏名 エレナ(19)


パーソナルデータ 力J 体力J 精神H 器用I 敏捷J 魔法耐性H


スキル 短剣J 事務処理G


魔法 火魔法H 生活魔法I


ジョブ 冒険者ギルドの受付


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彼女が俺をあまりにもじっと見つめるから、俺の方も自然とそうなって、前回も見たそのデータが表示されてしまう。


「オルトナ大森林で薬草採取をしていた時、偶々ハイゴブリンの集落を見つけまして、そこの建物の中に・・」


「ハイゴブリンの集落ですか!?

・・修君お一人で戦闘を?」


俺の名前を覚えてくれている。


「はい」


「よくご無事でしたね。

ハイゴブリンの集落ともなると、本来なら騎士団の管轄ですよ」


「あまり数が居なかったので、何とかなりました」


「非常に申し訳ないのですが、これが出て来た以上、騎士団に報告しない訳にはいかなくなりまして。

向こうから人が来るまで、ここの待合室でお待ちいただけますか?」


アクセサリーの中から1つの指輪をつまんで、そう告げてくる。


「・・分りました」


ごねても無駄だろうし、大人しく彼女の指示に従った。



 「待たせて済まなかったね。

私はこの町の第3騎士団長であるアメリアだ。

早速で悪いが、指輪の件について少し話を聴きたい」


待合室で、お茶とお菓子を出されて待たされること約1時間。


やって来た人は、まだ若い女性だった。


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氏名 アメリア・ハーティ(25)


パーソナルデータ 力I 体力I 精神G 器用H 敏捷H 魔法耐性G


スキル 長剣I 盾J 事務処理I


魔法 火魔法G 水魔法H 風魔法G 生活魔法I


ジョブ ゼルフィード第3騎士団長


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魔法を4つも使える。


しかもGが2つ。


「どんな事でしょう?

そちらの参考になるようなものはあまりないと思いますが・・」


「失礼致します」


事務員さんが彼女用のお茶とお菓子を持って来て、直ぐに退出していく。


「先ずはあの指輪を拾った場所についてだ。

オルトナ大森林のどの辺りだい?」


「薬草を探しながら適当に歩いていたので正確には分りませんが、入り口から歩いて約30時間くらいの所です」


『マッピング』で地図が残っているので、本当は正確な場所が分るのだが、目の前の彼女が何を考えているのか分らないから、今はそうとぼけておく。


「君はまだGランクの冒険者だと伝え聴いている。

それなのに、たった1人で大森林の中を30時間も探索したと?」


「Gランクなのは登録してまだ日が浅いからで、実力もそうだとは限らないと思います」


「それはその通りだ。

・・ハイゴブリンの集落を1つ潰したそうだね。

因みに、何体くらいの相手をしたんだい?」


「大体ですが、27、8くらいかと」


「これは驚いたな。

君、魔法が使えるのかい?」


「いえ、全く」


「益々驚かされるね。

もしかして、何処かの貴族出身なのかな?」


「只の平民です」


「・・・。

ねえ君、この町の騎士団に入らないかい?

それなりに給料や待遇は良いよ?」


「有難いお言葉ではありますが、お断り致します」


「騎士団に入れば、もしかしたら貴族になれるかもしれないよ?

その容姿で貴族なら、女性は選り取り見取りだよ?」


「爵位に興味はありません。

・・女性にも、今の所は」


「取り付く島もないね。

まだ若いのに、そんなに無欲でどうするんだい?

何か欲しい物はないのかい?」


「あの、指輪の件については、もう終わりですか?」


「・・あの指輪はね、うちの元団員の物なんだよ。

オルトナ大森林で魔物の討伐任務に就いていたんだけど、その途中で強い魔物にやられてしまってね。

彼は火魔法しかまともに使えなかったんだ。

あんな森の中で火魔法をぶっ放せば、たちまち大火事になる。

だから本来、彼は任務から外れる予定だったんだけど、ちょうどその時、予定していた団員の親に不幸があってさ。

優しかった彼は、その代役を引き受けてしまったんだよ」


まるで遠くを見るような目をした後、おもむろにお茶に手を伸ばす彼女。


「剣なんて、まだ素人より幾分増しな程度でしかなかったのにさ、若いからつい、無理をしてしまったんだね」


「・・・」


「遺体はかなり損傷が激しかったけど、何とか回収できたんだ。

けれど形見となるあの指輪だけは見つからなかった。

・・有り難う。

かたきを討ってくれて、本当に有り難う」


恐らく貴族であるアメリアさんが、そう言いながら俺に頭を下げている。


「・・頭を上げてください。

偶然の結果とはいえ、お役に立てたのなら嬉しいです」


「今回の件について、騎士団から報酬を出そうと思う。

お金の他に、何か希望はあるかい?」


「あの戦いではこちらにも得るものが多かったので、お金は要りません。

ただ、もし可能なら、俺に魔法を教えていただけませんか?」


「魔法を?

・・君は何の魔法も使えないのだよね?」


意外なことを言われた、そんな顔でアメリアさんがこちらを見る。


「今はそうですが、訓練すれば習得できるかなと思いまして」


「魔法の資質はほとんどが先天的なもので、それがないと、どんなに訓練しても駄目だと言われている。

その歳で何も使えないとなると、努力しても無駄骨になる可能性が高いが、それでも良いかい?」


「はい。

是非お願いします」


「分った。

ただ、私は忙しくて教えてやれないから、別の人材を紹介してやる。

その者にはこちらから伝えておくから」


「有り難うございます」


その後、大森林の今の状況について少しだけ話をしてから、アメリアさんは仕事に戻って行った。

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