第10話
今度こそ、薬草採取のために大森林の中に足を踏み入れる。
ログインしてから既に27時間以上が経過したが、未だに眠くならない。
俺は元々、それ程睡眠を必要としない
『マッピング』を進めるべく、前回とは違う方向に進路を取る。
自動発動する『鑑定』は、敵に出会った時など、俺が注意深く対象を見ようとしなければ発動を抑えられることも分った。
事実、ギルドの受付嬢や食事処の女性には発動したが、街をぼーっと眺めていた時は、道行く人々に対して全く発動しなかった。
見る物全てに発動していたのでは気が休まらないから、これは凄く有難い。
今の所、調べたい物全ての情報が得られている。
因みにCランクの『マッピング』は、作成された地図上に、人と魔物の位置が其々白と赤で表示され、動物は青、それともう1つ、金色で示された物がある。
これが何を意味するのかは、その場所に行って、注意深く探してみて初めて理解した。
お金や貴金属などのお宝だったのだ。
大方、ここで亡くなった人の所持品だったのだろう。
銀貨と準金貨数枚が、朽ちた遺骨の側に落ちていた。
お目当ての薬草は、最初は中々見つからなかったが、生えている場所の特徴を覚えることで、かなり効率良く採取できるようになってきた。
見つけても質の悪い物は採らず、『鑑定』でSやA、せいぜいBまでの物しか採取しなかった。
こういうのは信用問題だからな。
依頼者だって、薬草なら何でも良いという訳にはいくまい。
段々と楽しくなってきて、どんどんと先に進んでいる内に、何時しか更に10時間が経過していた。
勿論、その間も魔物との戦いは度々あった。
ゴブリンとオークは今日だけで150体は倒したし、リザードマンやポイズンスネークといった新顔にも数度遭遇した。
だがその何れもLランク以下の魔物で、剣の練習相手にちょうど良かったが、今目の前に居るこいつはJランクの魔物だった。
『名称:グレートボア
ランク:J
素材価値:肉が高く売れる』
3メートルを超える体躯と、口からはみ出る鋭い牙。
体当たりをまともに受けたら、今の俺では危ないかもしれなかった。
長剣を
そして空手の構えに入る。
それを合図に相手が突進してきたので、かわすと同時に正拳突きの要領で、脇腹に思い切り短剣を突き入れる。
手首に負担が掛かるが、ここは我慢だ。
怯んだ相手を、今度はこちらから攻める。
突き、蹴り、そして短剣による攻撃のラッシュ。
常に相手の側面に回りながら、渾身の力で殴り、蹴る。
足の関節を砕いた後は、一方的な攻撃だった。
倒した後で、少し悩む。
これ、どうやって
魚を捌いたことは何度もあるが、さすがに獣の経験はない。
結局、【アイテムボックス】に入るかどうかを確かめて、大丈夫そうなのでそのまま入れることにした。
スキル欄に、短剣Kの表示が加わっている。
1度でも使えばスキルが追加されるのだろうか?
森に入って20時間が経過した。
もう2日くらい一睡もしていない訳だが、まだ眠くならない。
しかも俺、このゲーム世界で1度も排泄行為をしていない。
トイレに行きたくなったら一旦ログアウトすれば良いやと軽く考えていたが、これらの問題はもっと真剣に考えた方が良いみたいだ。
【アイテムボックス】に入っている薬草の数字が700を超えた頃、また新手の魔物に遭遇する。
『名称:ハイゴブリン
ランク:L
素材価値:なし(希に貴金属を持っていることあり)』
ゴブリンよりも一回り以上大きく、身なりも多少まともで、人間から奪いでもしたのか、破れたズボンを
その手には、やはり人から入手したらしい剣を持っていた。
俺と目が合っても、ゴブリンのように直ぐ襲って来ない。
じっとこちらを観察している。
俺が長剣を構えて戦闘態勢に入ろうとすると、突然突っ込んで来た。
剣速がやや速く、中学の部活で剣道をやっている人くらいのスピードがある。
動体視力に非常に優れた俺には何てことないが、素人では対応できないだろう。
先ずは速度に慣れるために、何度も相手の剣を受け止める。
長剣スキルがKの俺には、少しでも練習が必要だ。
20回くらい攻撃を受け続けると、敵わないと思ったのか逃げようとしたので、背面から首を
手近の大きな葉で剣を
中には銀貨と準銀貨、準金貨に混じって、金貨が2枚入っている。
「おっ、随分持ってるな」
見つけた死体から取ったのか、人を襲って奪ったのかは知らないが、その人達の冥福を祈りながら、有難く
もしかしてとステータス画面を開くと、長剣スキルがJに上がっていた。
「やっと1つ上がったか。
でもまだまだ先は長いな」
苦笑いすると、また薬草探索を再開した。
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